何が起きたか:「マジでヤバすぎるわ」と投稿された1枚の写真
2026年10月10日、中古車販売のBUDDICA(バディカ)から納車を受けたばかりの購入者が、X(旧Twitter)に怒りと困惑をぶつけた。
数日前から納車を楽しみにしていたという購入者は、妻と2人でBUDDICAに車を受け取りに行き、その帰り道でこの事態に気づいた。高速道路のガソリンスタンドのスタッフに指摘されたという。SNSに拡散した投稿は瞬く間に業界内外で議論を呼び起こした。
BUDDICAの代表・中野優作氏は翌11日、Xにて「著しい偏摩耗とワイヤーの露出が確認された」と認め、代車提供・第三者点検・該当店舗の販売一時停止・全在庫車両チェックを速やかに発表した。対応の迅速さを評価する声がある一方で、「なぜそれが起きたのか」という本質的な問いには、まだ答えが出ていない。
「マジでヤバすぎるわ」BUDDICA中古車、納車直後にタイヤワイヤー露出で謝罪対応
https://bsrweb.jp/article/577339
どれだけ危険か、高速道路で起きたら「即死案件」
ネット上では業界関係者とみられるアカウントから、次のような指摘が出た。
「高速でバーストなら即死亡案件やな。」
これは誇張ではない。ワイヤーが露出したタイヤで走行を続けると、次の3つの重大リスクが現実になる。
① バースト(タイヤ破裂)
構造的強度を失ったタイヤは、走行中に突然破裂しうる。高速道路での時速100km走行中にバーストが起きた場合、ハンドル制御を失い、ガードレールや対向車線へ逸脱する可能性がある。乗員だけでなく他の道路利用者も巻き込む。
② グリップ喪失
タイヤのトレッドは雨天時に水を排除して路面を掴む役割を持つ。摩耗が極限まで進んだタイヤは、雨の日に水上を滑る「ハイドロプレーニング現象」を引き起こしやすくなる。ブレーキを踏んでも止まらないという状況だ。
③ 予告なく訪れる崩壊
通常の摩耗であれば、少しずつ溝が浅くなるため気づく機会がある。しかし偏摩耗によるワイヤー露出は、外観から「まだ大丈夫」に見えながら内側が限界を超えているという非対称性がある。突然の崩壊に備える余裕がない。高速道路のガソリンスタンドスタッフもよく気づいたものだ。
ブリヂストンも公式サイトで明言している。「ワイヤーが露出している状態は、走行を続けることのできない極めて危険な状態」だと。
なぜ偏摩耗はここまで進むのか——タイヤだけの問題ではない
今回の問題を技術的に整理すると、「偏摩耗がなぜワイヤー露出まで進んだのか」という疑問が浮かぶ。
偏摩耗の主な原因として挙げられるのは以下だ。
| 原因 | メカニズム |
|---|---|
| ホイールアライメントのずれ | タイヤが地面に接する角度がズレると、特定の部位だけに荷重が集中して削れる |
| 空気圧の不適切な管理 | 低すぎると外側、高すぎると中央が偏って摩耗する |
| サスペンション・足回りの変形 | 事故歴のある車両は足回りのジオメトリが崩れていることがある |
| 前オーナーの運転習慣 | 急コーナリング、縁石乗り上げなどの繰り返しによる蓄積 |
今回、タイヤ外側のワイヤーが露出をしていたため、前オーナーが空気圧管理を怠り、空気圧が低すぎる状態で長期間走行していた可能性が高い。
「なぜ気づかなかったのか」——プロが見逃せない理由を考える
今回の議論で最も核心的な問いはここだ。
「高速道路のガソリンスタンドのスタッフが指摘できたのに、中古車販売の専門家集団がなぜ見落としたのか。」
業界関係者と思われるSNSユーザーは断言した。
「納車前点検整備するのにタイヤは必ず外すし確認するから、見落としなんて絶対ないのよ普通は。」
この言葉が示す通り、整備のプロがリフトアップして全輪を確認すれば、タイヤ内側のワイヤー露出を見落とすことは構造的に考えにくい。では何が起きていたのか。考えられる仮説は複数ある。
仮説① 納車前点検が実施されていなかった
最もシンプルで、最も重い結論。点検を実施したとする記録や写真が存在しないか、形式的なものにとどまっていた可能性。
仮説② 点検は実施されたが確認粒度が不十分だった
タイヤの外側溝のみを目視確認し、リフトアップしての内側確認が省略されていた可能性。特に「内側の偏摩耗」は、外から見ただけでは発見が難しいケースがある。
仮説③ 整備情報が販売担当者に伝達されなかった
提携工場が「要交換」と記録していたが、その情報が販売フローの中で埋もれた可能性。整備担当と営業担当の情報断絶という、組織的な課題だ。
仮説④ 車検後・納車直前の状態変化
中野氏の発表によれば、当該車両は「提携工場での整備・点検」「運輸支局等での車検」をパスしていたとされる。もし車検時にはギリギリ合格レベルだったタイヤが、その後の移動・保管中に急激に悪化したとすれば……しかしワイヤーが露出するほどの摩耗が「数日で進む」とは考えにくい。原因究明を待つ必要があるが、最もありえにくい仮説だ。
「業界の闇を語っていた側」が起こした問題——言行不一致という批判
BUDDICAは、中野優作氏がYouTubeやSNSで中古車業界の問題点を積極的に発信してきたことで知名度を上げた会社だ。「業界を変える」という姿勢が消費者から支持を集めてきた。
そのブランドイメージがあるだけに、今回の批判は二重に刺さった。
「中古車業界の闇を語るとか他の中古車屋を叩いてるし、だから嫌われるんだよ。真面目に仕事してる中古車屋ならさすがにワイヤー出てるタイヤで納車せんぞ。」
「業界の透明性を訴えていた会社が、もっとも基本的な安全確認で躓いた」という構図は、単なるミスを超えた問いを投げかける。信頼ブランドを構築することと、現場オペレーションの品質を維持することの間に、埋まっていない溝があったのではないか。
問われているのは何か——業界全体へ問いを戻す
中野優作氏の迅速な謝罪と販売停止措置は、危機管理の観点から一定の評価を受けている。しかし、評価できるのはあくまでも「発覚後の対応」であり、「なぜ発覚前に止められなかったのか」という問いは別物だ。
SNS上のあるユーザーが投じた言葉が、この問題の核心を突いている。
「一家死んでたかもしれないんだぞ?ミスなんてレベルじゃ無くてロクに納車前点検なんてしてないって事なんだわ。」
タイヤは、車が唯一地面と接する部品だ。4つのタイヤのそれぞれ接地面積は「手のひら1枚分」程度に過ぎない。その小さな接点に、乗員の生死がかかっている。
今回の問題を「有名中古車会社の炎上案件」として消費することは簡単だ。しかし本当に問われているのは、「安全を担保する仕組みが、商業上の効率と同列に扱われていないか」という、業界構造への問いだ。
第三者による原因究明の結果が公表されたとき、私たちはその内容を「謝罪の誠意」だけで評価してはならない。仕組みのどこが壊れていたか、それがどう修正されるか——その答えこそが、次に中古車を買う人の安全につながる。