バリューチェーンの構築、
生涯顧客化に向けて
車販に取り組むべし!
少子高齢化が進む日本国内すべての市場は、徐々に少なくなる顧客を巡る争奪戦への参加を余儀なくされる。
自動車アフターマーケットとて例外ではなく、バリューチェーンや生涯顧客化を旗印に、自動車に関することは1つの店舗で何でもできる形態=ワンストップ化を目指すことがトレンドとなって久しい。
要するに1人の顧客と長い付き合いを目指すことを意味しており、より長い付き合いを求めるのならば、その入り口である車両販売を押さえるのがカギと言える。
とはいえ、認証工場が0から車販に取り組もうとすれば、新車を扱う場合、仕入れルート確立のためにはカーメーカーもしくはカーディーラーとの交渉、あるいは仕入れ・販売チェーンへの登録・加盟が必要となる。
一方、中古車を扱う場合、古物商許可(特に自動車商)があれば、自社で中古車を販売することは可能となる。もっとも、他の古物に比べて、自動車は高価なだけに、許可に当たって中古車販売の審査は、より厳しい傾向にあり、必須でこそないものの管理者には自動車に関する専門知識(実務経験3年が目安)が求められることも付け加えておく。
中古車販売に取り組むべきメリット①
安定した需要
そもそも中古車販売に取り組むべきメリットはあるのか。表1・2は日本自動車販売協会連合会発表の新車・中古車の車種別・年別登録台数の直近5 年間の推移である。
ちょうどコロナ禍の始まった2020年からとなっているが、新車については半導体不足から来る納期遅れが顕著だったこともあり、2022年まで減少の一途をたどった。翌2023年にはコロナ禍前並みとまではいかないものの大幅に回復。しかし、その翌年(2024年)には再び2020年並みに逆戻りしている。
一方の中古車はというと、2020年から2022年までの減少傾向、翌2023年の回復基調までは新車同様の動きを見せているが、2024年はコロナ禍前とまではいかないもののさらに増加となった。
新車同様に大勢を引っ張るのは乗用車なのだが、新車乗用車が250万台を超えることもあるという推移に対し、中古乗用車は多少の増減こそあれども300万台以上を安定してキープしている。
特に、前述の新車の納期遅れ(今なお続くと聞く)によって、「中古車でも良いから車が必要」という層が一定数存在したことが、2023年以降の台数増加基調に影響を及ぼしたと見て良いだろう。


中古車販売に取り組むべきメリット②
優良中古車を自身で生み出せる
状態が良ければ良いほど高く売れるというのは、自動車に限らず自明の理である。状態の良い自動車とは、外観がきれいであることもさることながら、安全に走れる状態を維持していることも指している。
安全に走れる状態を維持する、すなわちこれ整備工場の本業に他ならない。つまり、本業に真摯に取り組むことこそ、自ら優良中古車を生み出すことと同義なのである。その優良中古車を(オーナーの承諾はもちろん得た上で)自ら販売することができれば……というわけである。
ADASの搭載が進んで整備も高度化する自動車ではあるものの、スキャンツールなどを使って電動車のバッテリー残量を計測する取り組みも進んでいる。
まだ全盛とまでは言わないが、EVがこれまで以上に普及した場合、車の価値=バッテリーの状態の良さととらえられると予測されており、良好状態の維持に努められる立場にいるのは、やはり整備工場なのである。
中古車販売に取り組むべきメリット③
顧客管理意識の醸成
前述の通り、整備工場の本業は優良中古車を生み出す行為だと言って良い。ではその優良中古車を売るべきタイミング、オーナーに声をかけるタイミングはいつなのだろうか。
それには顧客の動向をつぶさに観察することであり、すなわち顧客管理を徹底することなのである。最も基本的なこととして、車検や定期点検、保険の満期の案内をきっちりと行い入庫につなげる。
特にその車両がある程度年数を重ねた車検のタイミングはそのまま乗り続けるのか、はたまた乗り換えるのかという決断を迫られる。その時に乗り続けるならそれでよし。乗り換えを検討した場合でも、「ウチで車販も扱ってますよ」とアピールできれば、買い替えきっかけでの他社流出を防ぐことができる。
ここで新車が提案できなくとも、別の顧客が車を売りたがっていたという情報をそれまでに把握できていれば、そこで提案することだってできる。
こうした「車を売りたがっている顧客がいる」という情報、誰それ(の息子さん)が就職した、結婚した、子どもが生まれた、といったライフイベントにかかわる情報取得も含めた顧客管理が普段からできていることが、それぞれの掛け合わせで販売の機会を生むことにもなる。
鶏が先か卵が先かの議論になるが、「中古車販売に取り組むために」を口実にして、顧客管理意識を植え付けるというのも1つの手段だと言える。結果的に会社運営に役立つことには代わりないのだから。
中古車販売が新車販売に比べて遙かに低いハードルで始められるかというと、決してそうとは言い切れない。以降のページでは中古車販売の支援サービス、実際の取り組み事例を紹介する。御社取り組みのきっかけになれば幸いである。