- PICKUP01 The Future of Emotional Mo 01 bility -心を動かす移動の未来-
- PICKUP02 先端技術を搭載した最新工具を出品し、未来の整備作業を提案
- PICKUP03 自動車の安全性を支える“光”の新技術
- PICKUP04 純正同等の配光でランプ交換を後押し
- PICKUP05 アクティブトレッド・センシングコア技術が生み出す体験価値
- PICKUP06 徹底した煤対策でディーゼル車の運行をサポート
- PICKUP07 技術から次世代車の効率運用に貢献
- PICKUP08 水素の電力活用はすぐそこまで来ている
- PICKUP09 燃料電池車とは異なるアプローチの水素エンジン
- PICKUP10 セラミックス技術が次世代車を下支え
- PICKUP11 ヒトとモノの移動を支え続けるブリヂストン
- PICKUP12 これからの車両に不可欠なバッテリーの熱管理に貢献
- PICKUP13 持続可能な社会に向けたヨコハマの挑戦
先だって、2 年ぶりにジャパンモビリティショー2025が開催。盛況のうちに閉幕した。前回同様に、締切の関係で残念ながらタイムリーな情報をお伝えできない本誌だが、速報は姉妹誌BSRや他の媒体にお任せすることにする。
代わりに、今回のテーマである、そう遠くない未来「2035 年」にインスピレーションを得て、近々の未来(どうかすれば1 年後や明日!?)に我々自動車整備業界にかかわってくるであろう気になる展示物の数々を深堀りする。
加えて、100 年に一度の大変革期を迎えた自動車の変革について、その一端・可能性をどう感じたか、本誌記者の考察を2つのテーマについて披露する。

PICKUP01 The Future of Emotional Mo 01 bility -心を動かす移動の未来-
■ アイシン
「A’s GARAGE」と称して電動化、知能化に関する製品など同社ならではの幅広い製品をガレージに見立たブースで展示。
新型RAV4に採用された新型回生協調ブレーキシステム(従来型が持つ前後輪独立制御による高機能を有しながらも制御ユニットをギアポンプからシリンダーへ構造変更することで生産性を向上)や、加速用と発電用のモーターを搭載し、高い走行性能と燃費性能を併せ持つ第5世代の小容量FF2モーターハイブリッドトランスミッションといった身近な技術を披露。
加えて、BEVに必要な駆動・電力変換・熱マネジメントの主要コンポーネントを1つに集約することでエネルギー&スペース効率を大幅に向上させる、機能統合電動ユニット(Xin1)は、これからを感じさせる出品物だ。同様のコンセプトによる統合ユニットはBYDが実用化しており、この統合ユニットがBEVにおけるスタンダードになる可能性は高い。
PICKUP02 先端技術を搭載した最新工具を出品し、未来の整備作業を提案
■ 京都機械工具
タイヤの脱輪を未然に防ぎ、安全・安心な交換作業をデジタル技術で実現する「e-整備TIRE」を参考出品。タブレットなどの端末でナンバープレートを撮影して車両の目標トルク値を呼び出し、ホイールナットの締め付け作業を可視化することで、それに基づいた正確な作業記録をクラウドでデータ管理が可能。同様に、ペアリングしたタイヤデプスゲージでタイヤの溝を測定すると結果がイラスト表示されるため、顧客にタイヤの状態を分かりやすく説明できる。整備DXの推進を訴え、未来の整備作業を来場者に提案した。
このほか、生産ラインなどで使用する共有工具の持ち出しや返却を管理し、紛失を防ぐRFIDタグ内蔵のデジタル工具「ネプロスID」を出品。また、来年4月20日まで開催する「2026SKセール」の告知や、創業75周年を記念して限定75セットのみ販売する「75周年記念限定工具セット」、好評を博している電動工具「9.5sq.コードレスラチェットレンチセット」も展示した。
PICKUP03 自動車の安全性を支える“光”の新技術
■ 小糸製作所
創業110年を迎える同社。「光」にまつわる技術をライティング、センシング、コミュニケーションのを3つに分けてブリーフィングした。特にライティングの分野では、まず2026年に市場投入を決定した高精細ADBをデモンストレーション。16,000分割のLEDライト(従来ADBは12分割)の個別制御により対向車や前走車に対するハイビームの消灯範囲を最小化、歩行者や道路標識に対して減光するするなど精密な制御を可能とする。
また寒冷地におけるランプへの氷雪の付着による視認性低下の問題を解決するため、ランプ表面を温めて氷雪を溶かす融雪ランプを開発・提供しているが、トラック向けリヤランプに続き、車両デザインを損なわない薄型の融雪ヘッドランプを世界初展示。
そしてデンソー、J-QuAD DYNAMICSと協業開発の、従来AFSシステムを進化させ、ドライバーの視線に追従するヘッドランプシステムを公開するなど自動車の安全性を支える新技術が目白押しだった。
PICKUP04 純正同等の配光でランプ交換を後押し
自動車ランプのLED化が進む中、年間20万個以上の販売実績を持つ同社は車検制度への適合性を重視した補修用ランプを開発。純正HID車両は減少傾向にあるものの、HID内部のキセノンガスが経年劣化により抜けることで光量が低下し、車検に不合格となる問題が発生している。同社の補修用ランプは純正HIDよりも高い光量、長寿命、純正品同様の交換作業で取り付けが可能とランプ交換を大きく促進する。
また純正HIDの形状は大きく4種類(D4R、D2R、D2S、D4S)が主要な国産車に使用されているが、このRとSタイプで配光特性が異なるものの、補修用ランプでは兼用設計となっているものが市場に多い。そんな中、同社の「RIZINGαPro」をはじめとする製品は各タイプ専用に遮光板を設計開発。純正HID同様の配光を実現している。
さらにトラック市場向けには5パターン点灯切り替えが可能なテールランプを開発しており、次回の「ジャパントラックショー」にも出展予定だ。
PICKUP05 アクティブトレッド・センシングコア技術が生み出す体験価値
長期経営戦略「R.I.S.E. 2035(ライズ ニーゼロサンゴ)」をビジュアル化し、外部環境に反応しゴム自ら性質が変化する新技術アクティブトレッドと、タイヤの空気圧、摩耗状態、荷重や滑りやすさをはじめとする路面状態を検知するセンシングコアを掛け合わせた次世代タイヤの未来像を紹介した。
具体的には、自動運転車の走行予定ルートの路面環境に対して、センシングコアで得た情報を活かし、シンクロウェザーで事前にタイヤを最適な特性や形状に変化させ、アクティブセーフティーな走行の実現を目指すというもの。
たとえば、200メートル先の路面が凍結していることをセンシングコアが検知し、その情報をもとにタイヤのゴム特性を氷上特化に調整するといったシナリオが想定されている。これらの先進技術を軸に、自動運転車が走行する次世代モビリティ社会の安全・安心の実現を目指していく。
また、新たな天然ゴム資源として「ロシアタンポポ」を利用したサステナブルタイヤなども
展示した。
PICKUP06 徹底した煤対策でディーゼル車の運行をサポート
■次の灯
トラックやバスなどディーゼル車のDPF内の煤を内部で燃焼させるには600℃近い高温が必要となるが、都市部で運行する車両は短距離間の走行・停止によりDPF内部の煤が不完全燃焼となり内部に蓄積してしまう問題がある。
その問題に同社は燃料添加剤「煤殺し」シリーズそれぞれの特性で解決を提案。大型車向けの「煤殺し 赤」は煤の燃焼を促す酸化セリウムを高濃度で配合して、DPFが詰まりにくい環境を作る。そしてエンジンのトルク・パワーを回復させる大型車向け洗浄剤「煤殺し 青」はインジェクターの燃料噴射の正常化を促し、燃料室内の汚れを除去。そしてこの2製品の特性を併せ持つ「煤殺し 紫」は大型車から乗用車まで広く対応している。
そして現在、整備工場向けに、車検時に投入することで車両停止のリスクを大きく削減するエンジン洗浄・DPF促進剤「煤殺し 車検クリーナー」の開発を進めており、工場のモニターを募集している。
PICKUP07 技術から次世代車の効率運用に貢献
■デンソー
インバーターは、バッテリーからの直流電流を交流電流に変換する。今回展示したこのインバーターは、電流変換を行うパワーカードにSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を採用。従来は、コアモジュールにパワーカードを縦に並べて配置していたが、それらを平置き、かつ両面冷却する構造へと進化させることでコアモジュールを30%小型化。さらに、電力損失も70%低減し、小型化と高効率化を両立したことで世界最高の出力密度を実現。車両全体の電力効率の向上に貢献できる。
他にも様々な新技術を披露したが、制御ソフトウェアを書き換え・更新することで機能向上が図れるSDV(Software Defined Vehicle)。それを効率よく機能させるためのZone ECUも披露。従来は機能ごとに制御ユニットが配置されていたものを、車の前後ないし左右といったある程度のゾーンにまとめて、それを一括で管理するために置くECU。これにより、電源供給や通信がシンプルになり、開発効率の向上や高機能化・省エネ化が加速する。
PICKUP08 水素の電力活用はすぐそこまで来ている
■豊田合成
先ごろ閉幕した大阪・関西万博においても、セブンカフェスムージー 西ゲート店のスムージーベンディングマシンの動力源として使われた、ポータブル水素カートリッジ。 水素をエネルギーとして活用と聞くと、真っ先に燃料電池車が頭に浮かぶが、その普及度合いからまだ縁遠く感じるのも事実で、こうした事例を聞くとより身近に感じられる。
いわゆる燃料電池自動車とはまた違ったアプローチとして、将来コンセプトカー「FLESBYHY-CONCEPT」も展示。ボデー外板にプラスチックやゴムのリサイクル材を採用したり、歩行者などに対する通知機能や衝突衝撃吸収機能などの特徴を持つが、こちらにも動力源として水素カートリッジを3本搭載。合計で60km走行が可能となっている。
同じく水素カートリッジの応用事例として、水素スクーターのコンセプトモデルも披露(写真)。座席の直下にカートリッジを搭載するという大胆なデザインながら、強度・安全性も問題はない。
PICKUP09 燃料電池車とは異なるアプローチの水素エンジン
2021年より開発を続けている水素エンジンを紹介。水素で自動車というと「燃料電池車と同じでは?」との考えを抱くだろう。水素エンジンは、水素と酸素を燃焼させた際に発生する水蒸気などで、シリンダー内の圧力を上昇させてピストンを動かし、動力を発生させる。
すなわち、ガソリンや軽油を水素に置き換えたエンジンであり、水素を電気分解して(水と)電気を生み出しモーターを動かす燃料電池車とは根本的に異なるのだ。
同社がガソリン/ディーゼルエンジンの開発・生産で培った内燃機関の技術が応用可能な、この水素エンジン。実用化に向けて、2025年9月よりAIRMAN製の水素専焼エンジンコンプレッサーでの実証を開始。今後はフォークリフトや発電機などへの搭載を視野に開発を進め、地球に優しいパワーユニットの実現と、持続可能な社会の構築に貢献したいとしている。
PICKUP10 セラミックス技術が次世代車を下支え
スパークプラグの印象が強い、日本特殊陶業。同社のコア技術は、もの作りに用いる材料そのもの(セラミックス)を自社開発する技術、またそれを成形する技術にある。この独自のセラミックス技術で、エンジン内部の過酷な環境に耐える性能や燃費向上を実現したのがスパークプラグというわけだ。
さて、こうしたセラミックス技術の応用は製品のみならず、部材提供においても同様だ。たとえば、電動アクチュエーターなど回転軸を持つパーツには必ず軸受けが存在し、その回転を支えるのがベアリングだ。
特に近年は燃費・電費の問題から車両をいかに軽量化するかが開発のテーマでもあり、その一端、ベアリング球に対してより軽量化を図れるセラミクス球を提供するなどして、自動車業界に貢献している。一方で、スパークプラグは電動車の普及→ICE自動車の衰退とともに下火になると思われがちだが、水素エンジンの登場が期待される今、スパークプラグも復権への期待が高まっている。
PICKUP11 ヒトとモノの移動を支え続けるブリヂストン
幅広い現場で移動・運行を支えるタイヤ・ソリューションとして、次世代タイヤ「AirFree」や鉱山・航空をはじめとしたソリューション事業を紹介。また、ヒトとモノの移動を支える技術として、商品設計基盤技術「ENLITEN」(エンライトン)やサステナブルなグローバルモータースポーツ活動、使い終わったタイヤを新しいタイヤに生まれ変わらせる「EVERTIRE INITIATIVE」(エバータイヤイニシアチブ)についても紹介した。
特に「EVERTIRE INITIATIVE」は、従来「水平リサイクルが困難」とされてきたタイヤの常識を覆す、使用済みタイヤから新しいタイヤへの水平リサイクル技術となっている。
協力パートナーとの共創により、合成ゴムの再生、再生カーボンブラックの活用、高品質カーボンブラック製造、精密熱分解で得られた分解油の一部を高性能カーボングラファイトの原料として活用とするなど、これらの技術により回収された原材料すべてを活用したコンセプトタイヤの製造に成功した。
PICKUP12 これからの車両に不可欠なバッテリーの熱管理に貢献
■ミクニ
MsMV(Mikuni Smart Multi Valve)は、電気自動車のバッテリーを適温に保つために開発したモジュール。バッテリーの安全性を確保し、劣化を抑えて資産価値を守るほか、急速充電時間の短縮や航続距離の延長にも貢献する。
「熱エネルギーを自在にコントロール」をコンセプトに、様々なモビリティのバッテリー温度を目標温度範囲内に保つことを可能にした。8流路×5ポジションを1つのバルブで制御する特許申請中の技術を活用し、冷却水の「冷」、「熱」を混ぜて最適温度を供給する。
これによりバッテリーの安全性確保と劣化抑制、急速充電時間の短縮や航続距離の延長に貢献する。マルチバルブや電動ウォーターポンプ、熱交換器などをモジュール化し、状況に応じて冷却水の流路を切り替える仕組み。
開発にはMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)を導入し、車両全体の熱マネジメント最適化を検証した。今後はエアコン用冷媒との連携やさらなる新技術との統合を予定。
PICKUP13 持続可能な社会に向けたヨコハマの挑戦
■横浜ゴム
「持続可能な社会に向けたヨコハマの挑戦」をテーマに、レーシングタイヤから市販タイヤまで幅広い製品ラインアップでサステナブル素材の活用を紹介した。
ウルトラハイパフォーマンスタイヤ「ADVAN Sport V107」のコンセプトタイヤを初披露。同タイヤはウェットグリップ性能や低転がり抵抗性能をさらに高めつつ、軽量化や再生・リサイクル原料比率80%を実現している。
また、今年に発売されたばかりの新スタッドレスタイヤ「iceGUARD8」にも天然由来の素材が使用されており、同社のサステナブル戦略が幅広い製品カテゴリーに展開されていることをアピールした。
特に注目されるのが、タイヤで使用されるブタジエンゴムのバイオマス化への取り組みだ。トウモロコシやサトウキビのカスなどバイオマスから合成ゴムを製造する技術開発を日本ゼオン及び産業技術総合研究所と共同で進めており、今後の量産化展開と市場投入が期待される。












