歩みを止めない百年企業はM&Aに活路を見出す サンタックス[東京都千代田区] 

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MSRweb編集部
歩みを止めない百年企業はM&Aに活路を見出す サンタックス[東京都千代田区] 

 創業96年。都心に事業場を構えるサンタックスの歴史は、まさにモータリゼーションの歩みと軌を一にする。その長きにわたる企業活動の継続は、時流とその時代の要請を巧みに察知し、サービスを提供し続けてきたからに他ならない。その同社が今、四代目によって、次なるステージへのチャレンジを続けている。M&Aによる事業の拡張と成長。整備事業の新たな可能性が今、照らされようとしている。

【工場概要】社長 :田中 克昌  住所 : 東京都千代田区神田東松下町25 創業 : 1930年 従業員数 : 19人(うち整備士数 6人)

 1930(昭和5)年に田中自転車店として創業したサンタックスは今年で創業から96年を迎えた。東京の都心で、まさにモータリゼーションとともに歩んできた同社は戦時中に休業した時期もあったが、間もなく百年を迎える老舗の事業者である。

 2017年から代表取締役を務める田中克昌氏は同社四代目。創業者、田中正三氏は克昌社長の祖父であり、経営のバトンは脈々と受け継がれてきた。その歴史は時の流れとともに、様々な変化に対応してきた同社の足跡でもある。

田中克昌社長

 創業の地はロードサイドに店舗を構えたが、現在の本社工場は25階建てマンションビルの1階に入居している。2017年に移転し、それまでの3ストールから、4ストールの作業場に拡張するとともに、認証から指定工場となった。スタッフも増え、パートを含めて、現在は19人の体制。

検査ライン、門型2柱リフト、アーム型リフト、平ストールの4ストール

 一方、顧客層の変化も著しく、現在は法人ユーザーが中心で、入庫の9割がリース車両となった。また、一般のユーザーでは輸入車の入庫も少なくない。地域と時代を歩んだ1世紀。その時代の需要を察知し柔軟に取り込むことで成長し、今の同社を築いてきた。

 こうした中、同社はM&Aによる事業の拡張を進めている。2022年に東京都江戸川区の高橋自動車の株式を譲り受けたのを皮切りに、2024年には東京都小平市の武蔵野自動車にM&Aを行った。また、その後、横浜の車体整備工場、オートパシフィックヨコハマ、秋葉原の梶間商会も傘下に加え、グループ企業を形成した。

 田中克昌社長は「サンタックスの店舗だけでは伸び悩みを感じていた。1社体制では経営の効率化を図っても限られたキャパシティーでは限界がある。ただ、自動車整備事業はやり方次第で、まだまだ利益率を高めていく余地がある。廃業を選択する事業者が増える中、そうした会社経営を引き継ぎたいと考え、M&Aで企業を成長させていく方向性に舵を切った」と語る。

 はじめから仲介業者に頼らず、高橋自動車は自力で買収金額を算出、最初の面談から2日後に金額を提示し、M&Aを成立させた。

検査ラインに車検システムを導入し、効率化を推進

 高橋自動車は整備と鈑金塗装を行う事業者で、田中社長はDXによる経営効率化を進めれば、まだまだ利益が拡大すると考えた。

 まず最初に取り組んだのがペーパーレス化である。サンタックスでは、工場移転を機に、検査システムを導入し、指定整備記録簿などの自動印字、さらには入庫予約のDXなどで、作業の効率化を図ってきた。また、社員の勤怠管理、給与明細、各種申請などでペーパーレス化を導入、経営改善を推進してきたノウハウを高橋自動車でも展開した。また、グループ内のコミュニケーションにはMicrosoftのTeams(チームス)を活用している。

 「情報の共有とやりとりなどをデジタルツールで展開している。コミュニケーションの機会が増えたことで、現場に活気が出てきた」と田中社長。また、情報管理をDXするメリットについては経営効率だけが目的ではないという。

 田中社長は「スタッフによる情報格差をなくし、顧客に均一のサービスができるようにする効果も高い。高橋自動車は年齢が高いスタッフが多く、最初は覚えること、使いこなすのに苦労していたが、使っていくうちに電子化のメリットを感じるスタッフが多く、今ではなくてはならないものになった」という。

 高橋自動車で経験したこの成功体験は、武蔵野自動車やオートパシフィックヨコハマにも横展開された。

タイヤチェンジャーとバランサーを設備し、タイヤサービスを内製化

 田中社長が最も期待するのが、このバックオフィス機能の集約化である。ペーパーレス化やDXはまさにその象徴であり、会社間のプラットフォームの共通化でシナジーは最大化される。M&Aを行う目的のひとつは、その相乗効果である。

 現在、グループ会社内で「就業規則プロジェクト」を立ち上げ、就業規則や人事評価制度、そしてジョブ型人事制度の導入が行われている。とりわけ、ジョブ型人事制度は組織に新たな可能性を開いた。整備士から営業への異動、納引きの募集で入社した女性のメカニックへの転身など、適材適所の人事が行われ、組織の活性化につながった。

2004年に同社の整備士がEVコンバージョンした86レビン

 また、グループ内で整備士が行き来できるための取り組みも視野に入れている。会社側は人材のリスクを回避できるとともに、スタッフも新たなチャレンジの場があることで、やりがいにつながり、組織の閉塞感や停滞感を払拭する機会となっている。

 田中社長は「M&Aは経営だけでなく、社員の雰囲気、意識まで変えた」と語る。その結果、グループ内各社とも売上高、利益率ともに向上した。たとえば、高橋自動車の場合、M&A後の1年間でリース車の入庫は約1割増加。売上高は1.5倍にまで拡大している。

 「自動車整備にはまだまだ可能性がある」と語る田中社長。整備業界活性化の新たな可能性がここにある。

田中社長はYouTubeの「事業承継チャンネル」を開設し、情報を発信

Photo & Text 泉山大(プロジェクトD)