AIは経営の「丸投げ先」ではなく 対話を通じて自社の価値を見出す新たな「頭脳」

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八木 正純
AIは経営の「丸投げ先」ではなく 対話を通じて自社の価値を見出す新たな「頭脳」

間嶋真正氏

AVARTH(アヴァルト) 代表取締役

整備専門学校を卒業後、自動車整備業界で現場経験を重ね、2012年にAVARTHを創業(2014年に法人)。現在も現場に立つ経営者として、整備・診断・車体整備の実務に向き合いながら、AI・教育・モノ作りを通じた業界向けソリューションの企画・展開を進める。現場から見える課題を起点に、自動車アフターマーケットの価値向上と未来作りに取り組んでいる。

 3月に開催されたIAAEで、整備工場、車体修理工場が活用できるAIシステムを発表したAVARTH。その開発の狙いと今後の展開について、自身も今なお現場に立つ間嶋真正社長に話を聞いた。※取材日:3月16日

今回開発されたAI サービスについて

 「マネジメントブレイン」と「ピットブレイン」という2つのサービスを開発した。これは経営層の頭脳と現場作業者の頭脳という「2つの頭脳」をイメージしたものだ。

 「マネジメントブレイン」は、経営者が自社の利益構造や工賃設定を見直すための支援ツールで、売り上げ伝票の分析だけでなく、販管費や投資、人材育成まで含めて「自社にとって適正な価格」を考える材料を提供する。また、日常業務を効率化するツールもそろえている。

 一方の「ピットブレイン」は、現場の課題解決に特化したサービスだ。たとえば、バッテリーテスターの数値だけでは判断できない寿命を予測したり、複雑化する一方のオイル規格やホイールの締め付け規定トルクを瞬時に確認できる。

AIS

直接AIを利用するのではなく、システムとして開発した狙いは?

 整備業界では、技術や設備、人材育成にしっかり投資していても、その価値を言語化したり、数字で説明したりすることが苦手な会社が少なくないと感じている。

 特に工賃については、「周囲がこのぐらいだから」という感覚で決められてしまうことも多く、本来は自社の経営状況や提供価値に基づいて考えるべきものだと思っている。

 一方、AIは経営判断を代行するものではなく、経験や勘に加えて、客観的な根拠を持って判断するための補助線のような存在であるべきと考えた。

 ただし、一般的なAIは使いこなす側に一定の知識が必要になる。だからこそAIS(AVARTH Intelligence Suite、両システムの総称)では、現場や経営者が自然に使えるように、できる限り難しい操作や専門用語を減らし、対話しやすい形に落とし込むことを重視した。

本システムを、ユーザーにどのように活用してほしいか?

 自社の価値を「なんとなく」ではなく、根拠を持って説明できるようになってほしい。

 価格交渉の場面でも、単に世の中の指針を持ち出すだけではなく、自社がどのような設備投資を行い、どのような人材育成をし、どのような品質を提供しているのかを、自分たちの数字で説明できることが重要だと思っている。

 今後は、単にツールを提供するだけでなく、システムをより深く活用してもらうためのサポートプランや、AI自体の学びの場も提供していきたい。

 AIは使い方次第で大きな力になる一方、扱いを誤れば危うさもある「諸刃の剣」となり得る。だからこそ、現場を知る私たちが間に入り、業界に合った形で実装をサポートすることで、そのリスクを最小限に抑え、事業の発展に貢献したいと考えている。

 仕組みの提供と並行して業界全体の学びを後押しし、ともにより良い未来へ変革していくことが、私たちの役割だと信じている。