事例と解説 整備業のための補助金活用講座 第9回 事例:ADAS搭載車両の整備体制の構築

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MSRweb編集部
事例と解説 整備業のための補助金活用講座 第9回 事例:ADAS搭載車両の整備体制の構築

 今回は、地域密着型の自動車整備業を営むA社が、先進運転支援システム(ADAS)対応を見据えた設備投資により、整備体制の高度化と業務効率化を実現した事例をご紹介します。

 A社は東北エリアで、自動車整備・車検・鈑金塗装・新車中古車販売・保険代理・レンタカーなどを
展開する中堅企業です。半世紀前に創業して以来、「誠実な仕事」を信条に、地域に根ざした経営を続けてきました。

 震災で全壊した社屋を再建し、現在は市内中心部に最新設備を備えた工場を構えています。社員は全員有資格者で、平均勤続年数は30年。高い技術力と連携力で、ワンストップ対応を強みとしています。

 売上高構成は車両販売が6割、整備・鈑金塗装が3割超を占めていますが、業界構造の変化により、特にADAS車両への対応が課題となっていました。2024年10月から義務化されることが決まっていたOBD車検では、カメラやセンサーの正確な調整=エイミング作業が不可欠となります。

 A社では簡易機材で対応してきましたが、精度や作業時間に限界があり、外注依存が続いていました。
納期の遅れや外注コストの上昇は、顧客満足や利益を圧迫するリスクを孕んでいました。

 こうした背景を踏まえ、A社は事業再構築補助金を活用して体制強化に着手。最新型アライメントテスターと専用リフトを導入し、車体中心線や足回りのズレを高精度で測定することで、エイミング作業の標準化と精度向上を実現しました。

 加えて、リフトによる車体水平保持と組み合わせることで、整備士の作業負荷を軽減しつつ、再現性のある施工環境を整えました。作業時間は従来の90分から30分程度に短縮され、段取りの効率化によって生産性も大幅に向上しています。

 今回の投資額は約1,300万円。これまで外注していたエイミング作業を内製化することで、1台当たり約1.5万円の役務工賃を社内収益に転換でき、5年間で約380万円の売上高増加が見込まれています。また、月間の入庫台数は120台から140台への増加を目指しており、全体の売り上げ・利益向上にも大きく寄与する見込みです。

 こうした再構築は、短期的な効果にとどまらず、長期的には次世代車対応工場としての地位確立にもつながる布石と言えます。

 さらに、設備はすべて福島県内の地元企業から調達し、社員も地域から新たに1人を雇用する計画。熟練工による教育体制の下、若手人材の育成にも取り組んでおり、技術の継承と体制の強化を両立させています。

 EV対応の充電設備や、リサイクルパーツの再利用など、環境に配慮した整備方針も継続しており、持続可能な経営の実現に向けた取り組みが全社的に進められています。

 A社のように、業界変化をいち早くとらえ、補助金を効果的に活用しながら成長投資を実行する中小企業の姿勢は、今後のアフターマーケット業界における新たな競争優位のモデルケースとして注目されるでしょう。

 次回も自動車アフター業界の事業者の次の一手をご紹介します。

※MSR2025年12月号掲載

(筆者プロフィール)
山田健一 株式会社フォーバル
国内大手EC会社にてマーケティングを担当。その後、大手M&Aアドバイザリー会社にて上場企業の経営戦略立案やM&Aアドバイザーとして数多くのM&Aを実行支援。2016年に(株)フォーバルの事業承継支援事業立ち上げに参画。自動車アフターマーケットでの後継者問題の解決、補助金支援に力を入れている。