自動車整備事業者が知るべき「取適法」のポイント

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長谷川 明憲
自動車整備事業者が知るべき「取適法」のポイント

2026年1月1日より、「下請法」が「取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)」へと改正され、施行された。
この改正は、ディーラーからの車体修理やリース会社からのメンテナンス請負などを行う自動車整備事業者にとって、極めて重要な意味を持つ。本記事では、価格転嫁を促進する新法のポイントと、整備事業者が今すぐ行うべき対策を分かりやすく解説する。

近年のエネルギーコストや原材料費、労務費の高騰を受け、中小企業が賃上げの原資を確保するための適正な「価格転嫁」が急務となっている

従来の商慣習を見直し、価格転嫁を阻害する行為を防ぐため、今年1月1日付けで法律名が「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」から「取適法」へと変更されることになった。

今回の改正により、主に以下の3点が変更・強化された。

「下請」という用語の廃止:発注者と受注者が対等であることを示すため、親事業者は「委託事業者」、下請事業者は「中小受託事業者」、下請代金は「製造委託等代金」へと改称された。

適用基準に「従業員数」を追加:従来の資本金基準(増資や減資による適用逃れなど)の抜け穴を防ぐため、新たに「常時使用する従業員数(300人以下または100人以下など)」の基準が追加された

手形払いの禁止:支払方法において、紙の手形だけでなく、電子記録債権やファクタリングを含む手形払いが禁止された

今回の法改正で最も注目すべきは、禁止事項の追加である。

コストが上昇しているにもかかわらず、委託事業者が価格協議に応じなかったり、十分な説明なしに一方的に低い代金(工賃など)を決定したりする行為が明確に禁止される。従来の「買いたたき」とは異なり、対等な価格交渉の場を設けないこと自体が、中小受託事業者の利益を不当に害するとして厳しく規制される

取適法は、整備業界における多岐にわたる取引に適用される

ディーラー等からの鈑金・修理委託:自動車販売業者が修理業者に作業を委託するケースは、同法が定める「修理委託」の対象として明記されている

リース会社からのメンテナンス請負:カーリース車両の車検や点検などの請負も、事業規模の要件を満たせば「修理委託」や「役務提供委託」として同様に規制対象となり得る

修理車両の陸送手配:修理完了後に他業者へ車両の運送を委託するケースも、新たに追加された「特定運送委託」の対象となる

改正により、事業所管省庁の権限が拡充された。自動車整備事業者にとっては、業界を管轄する国土交通省が新たに相談窓口(指導・助言、報復措置の禁止に関する申告先)として追加されたため、より実態に即した相談が行いやすくなる。

このたびの法改正は、修理委託における工賃(レーバーレート)や部品のレス率の固定化など、長年の業界の商慣習を見直す好機である。

取引先の洗い出し:ディーラーやリース会社などの取引先が「委託事業者」の定義に該当するかを確認する

既存の商慣習の精査:一方的な代金決定、無償の修理やり直し、支払遅延など、新法の禁止事項に抵触する恐れのある事案がないかをチェックする

価格交渉(協議)の準備:自社の適正な利益とスタッフの賃上げを実現するため、取引先へ条件見直しの協議を申し入れる準備を進める

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