「ディーラーより10万円安く直せる!」町工場の三代目が仕掛けた整備業界の常識を覆す革命 青木自動車販売整備[埼玉県加須市]

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泉山 大(プロジェクトD)
「ディーラーより10万円安く直せる!」町工場の三代目が仕掛けた整備業界の常識を覆す革命 青木自動車販売整備[埼玉県加須市]

 「愛車に長く乗ろう」をコンセプトに、町工場の強みである整備士の技術力に基づいた一般整備で新規顧客を獲得し続ける青木自動車販売整備。新規顧客の入庫は1週間で5件という驚異的な動員力を続けている。なぜ、同社は一般整備を最大の武器にしたのか。そしてその先に見据える町工場の再定義とは。輸入車ディーラー出身の三代目が放つ、専・兼業整備改革に刮目せよ!

【工場概要】代表取締役 :青木 孝之  住所 :埼玉県加須市船越 122 設立 :戦後すぐ(法人化は1994年) スタッフ :5人

コンセプト「愛車に長く乗ろう」
同社のコンセプト「愛車に長く乗ろう」。車齢や平均使用年数が伸びる現代社会において効果的なキャッチコピー

 戦後、祖父が開業した輪業店はモータリゼーションとともに着実に、そして確実に成長を遂げた。1994年に青木自動車販売整備として法人化。さらに2019年には輸入車ディーラーで全国トップセールス1位(入社5年未満カテゴリー)に輝いたことを機に退職した三代目の青木孝之氏が入社し、同社は新たな時代を迎える。

 今年1月に代表取締役に就任した青木社長は入社当時を振り返る。

青木孝之社長
平成生まれの若きリーダー、青木孝之社長。将来の整備業界を背負って立つ存在に!

 「新規顧客が少なく、先代社長の年齢とともに顧客の年齢層も上がっていて危機感を覚えた」という。そこで青木社長は労務改革とともに、新規顧客増加のための施策をスタートさせる。まずは車両販売に力を注いだ。

 サブディーラー権を取得できるレベルで新車を販売し、中古車販売にも力を入れた。ところが、新規顧客は想定よりも増加せず、中古車販売に関してはこれまで発生しなかったクレームが増えたことで、「コストが合わない」(青木社長)と判断し、新規顧客獲得策の軌道修正を行った。青木社長が改めて町工場の強みを冷静に洗い出したところ、「行きつくところはやはり整備だった」という。

 「輸入車ディーラー在籍時から、一般整備の技術力は町工場が最も高いにもかかわらず、その評価は低いという構造的課題を強く感じてきた」という青木社長。

 また、「ディーラーの入庫は予約が必須となり、そこであぶれてしまった顧客や料金的な面で折り合いがつかない顧客の受け皿になることが、町工場の強みであることを再認識した。そこに顧客が求めるサービスを提供すれば、さらに町工場のストロングポイントになりえると考えた」(青木社長)。

 その訴求ポイントがリビルトパーツを使った整備である。「一般整備は町工場の最大の強みだが、一般整備では、顧客にその価値は届きにくい。リビルトパーツを使えば修理費用が下がることを提示した」(青木社長)。

 ディーラーの料金例とリビルトパーツによる料金例を比較し、ホームページに掲載。徹底的に経済性を訴求することで、新規ユーザーを誘因した。その結果、新規顧客は瞬く間に増加した。

 2025年1月から11月までの新規顧客数は前年比64.6%増の135件。2025年6月には単月で31件もの新規顧客を獲得した。今年に入ってからも平均すると1日1件の割合で新規顧客が来店するという。

リビルト部品を「新古部品」と呼称
青木自動車販売整備のWebサイト。リビルト部品を「新古部品」と呼び、需要を喚起

 「価値が直感的に伝わるリビルトパーツをツールとして用いたことで、一般整備は最強の入り口に進化し、町工場の導線モデルとして確立できた」と青木社長。

 多くの専・兼業整備事業者は車販からLTV(ライフタイムバリュー)の構築を試みるが、同社の一般整備は、車販よりも強力に顧客との信頼関係の醸成につながる。そこには提案力の力学が働いているからに他ならない。

 導線モデルをスタートさせた当初、ディーラーで高額見積りを提示され、乗り換えを強く勧められたことに不信感を抱いた顧客が来店した。リビルトパーツの提案を行った結果、ディーラーと比べて10万円以上も安価に修理を完了できたことで、顧客から大いに喜ばれたという。

 「本当に助かった。すべてお願いしたい」との申し出があり、車検に加え、点検や相談など、あらゆる整備メニューを任せられる関係に発展したという。

 顧客との信頼関係構築は困りごとの解決である。顧客が抱いている不安や不満を満足に変えることで、町工場が持つ技術力は正当に評価されることにつながる。実際、同社では、技術が評価されることで整備士の誇りが高まり、「整備士が価値を提供する技術者に意識転換した」(青木社長)という。

キーパープロショップも展開
キーパープロショップも展開

 青木社長は将来的な構想として多店舗展開を展望する。

 「一般整備導線による入り口のマーケティングで新規顧客を増やし、会社を発展させ、その上で多店舗展開につなげていきたい」と青木社長。さらに「整備士の技術が正当に評価され、給与・待遇に反映される循環を広げていく」と構想を語る。

 青木社長は、この構想を「町工場の再定義」という言葉で表現する。同社では今年に入り、2人の整備士が入社した。自ら「働きたい」と願い出て、同社の門を叩いたという。整備士が誇りを持って活躍する整備工場こそが、町工場を再定義化する、1つの要素である。

 整備士の技術力を正面から伝える同社の導線モデルと「町工場の再定義」は整備業界を支える専・兼業整備事業者と整備士に大いなる勇気と自信を与えるだろう。その誇りはやがて、整備業界全体を変えていく原動力になるかもしれない。

整備作業場は全6ストール
整備作業場は平ストールと検査ラインを含めて全6ストール