大型法人、一般乗用車、そして熱心なカーマニアに寄り添う「三本の矢」を武器に、独自のポジションを確立
大型車から小型車、国産車から輸入車、さらには他社で断られるような希少車まで取り扱うカーテック神中は、あらゆる車種の整備・鈑金塗装に対応する設備と技術力を擁する総合自動車整備工場である。
その事業の根幹には、グループ会社のバスや法人顧客という安定した基盤、地域の一般客、そしてSNSを通じて全国から集まるコアな「車好き」という、3つの異なる顧客層を捉える独自の戦略が存在する。かつての「バス・トラックの整備工場」というイメージを刷新し、新たな顧客層の開拓に挑む同社の現在と未来を追った。
【工場概要】社長 :今井 雅之 住所 :神奈川県藤沢市本藤沢4-2-3 創業 :1942年 スタッフ数 :57人
トラック専門工場だけではない、イメージ刷新と個人客への注力
同社の取り扱い比率は、小型車が70%、大型車が30%を占める。大型車は主にグループ会社である神奈川中央交通の路線バスや、長年の取引がある法人顧客が主体だ。安定した基盤がある一方で、同社が今後の成長の柱として見据えるのは、個人客を中心とした小型車の取り扱い増加である。
その背景には、法人向け市場の特性がある。法人客は既存の取引関係が強固な場合が多く、新規参入が容易ではない。対照的に個人客は、ディーラーや専門店、カー用品店など選択肢が多く、新規開拓の可能性が大きい。この市場を獲得するため、同社は2019年の工場移転を機に大きなイメージチェンジを図った。
旧工場は、外から見るとトラックとバスしか入庫していないような印象を与えがちだった。そこで新工場は、一般客が気軽に入れるよう、ディーラーを思わせる清潔感のあるデザインを採用。
バス・トラックのような働く車は奥のスペースに配置し、入り口付近には乗用車を並べるなど、細やかな配慮を徹底した。この戦略は、清潔感を重視する顧客層や女性客からの信頼獲得にもつながっている。
「社員に誇りを持ってほしい」ES向上から始まる顧客獲得戦略
同社の特色ある取り組みとして、SNSの積極的な活用が挙げられる。その目的は、単なる顧客への情報発信にとどまらない。最大の動機は、従業員満足度(ES)の向上にあったという。「自分の働く会社が、ホームページも更新されず、SNSもやっていない。これでは若いエンジニアはやる気も誇りも持てないのではないか」という問題意識からスタートした。
社員が自社にプライドを持つことが、より良いサービス、すなわち顧客満足度(CS)につながる。この信念の下、SNSでは「オールペイント」や「下回り防錆塗装」といった特徴的な整備メニューや、日々の作業風景を発信。
その結果、遠方に住む顧客がSNSを見てわざわざ来店するケースも生まれている。大手中古車販売店の不正問題以降、整備工場に対する顧客の視線が厳しくなる中、作業の「見える化」は安心感にもつながり、コアなニーズを持つ顧客層の獲得と客単価の向上という好循環を生み出している。

んたち、インドネシア人材も工場を支える
技術力で応える「最後の砦」としての存在
SNSやホームページによる情報発信は、これまで接点のなかった顧客層を呼び込むきっかけとなった。ポルシェやマセラティといった高級輸入車、あるいは部品供給が難しくなった旧型の日産スカイラインGT-RやホンダNSXなど、ディーラーで整備を断られてしまったオーナーが、すがる思いで同社を訪れるケースが増えている。
同社には「全日本自動車整備技能競技大会」で優勝や上位入賞を果たした高い技術力を持つエンジニアが多数在籍しており、こうした難しい依頼にも果敢に挑戦する。情報が少ない外国車や、原付エンジンを積んだミニカーのような特殊車両の修理依頼も、「やってみよう」の精神で引き受ける。
それは時に、ビジネスの効率性とは相反するかもしれない。しかし、「最後の砦」として顧客の期待に応えることこそが、口コミを通じて揺るぎない信頼を築き、新たな顧客を呼び込む源泉となっている。価格競争に陥るのではなく、顧客一人ひとりに寄り添い、最適なメンテナンスを提案する姿勢が、同社の本質的な強みとなっている。



