トヨタ・モビリティ基金は2026年7月18日、交通事故ゼロの実現に向けた議論と活動を進める取り組みとして、長野県茅野市で「第4回タテシナ会議」を開催した。
本会議は「タテシナの原点 ―思いを行動につなげる ―」をテーマに設定し、約80名の関係者が参加した。交通事故ゼロの実現に向けて「人の行動変容」と「インフラ協調」の2つの観点から課題と今後の方向性について討議が行われた。
会議の概要と参加組織
「タテシナ会議」は、交通安全祈願のために1970年に建立された蓼科山聖光寺を原点とし、「事故ゼロを目指して何ができるか」を業界の垣根を越えて考え、行動につなげる場として2019年より開催されている。
第4回となる今回の会議概要および参加組織の詳細は以下の通りである。
- 日時:2026年7月18日(土)9:00〜10:30
- 開催地:長野県茅野市
- テーマ:「タテシナの原点 ― 思いを行動につなげる ―」(ファシリテート:岡崎五朗氏)
- 参加者:各企業・組織代表者 約80名
参加組織として、トヨタ自動車、トヨタグループ17社および関係企業、トヨタ自動車販売店協会代表者、日本自動車工業会、スズキ、SUBARU、マツダ、ホンダ、あいおいニッセイ同和損害保険、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、ブリヂストンサイクル、パナソニックサイクルテック、KDDI、京セラ、東京科学大学などが名を連ねた。
会議の冒頭では、愛知トヨタEAST/WEST取締役会長の山口真史氏が聖光寺の起源と販売店における交通安全活動を紹介した。参加者全体で目標は事故の「削減」ではなく「ゼロ」であることを再確認し、利他の心を具体的な行動につなげる方向性を共有した。
行動変容に向けた取り組みと課題
会議の第1セクションでは「人の行動変容に向けた取り組みと課題」をテーマに、モータージャーナリストで同基金理事の岡崎五朗氏が分科会での取り組みと課題について報告した。
昨年の同会議で注力分野として挙げられた、交通事故リスクが高い7歳児と高齢ドライバーを対象とした報告および課題の詳細は以下の通りである。
児童向けの実証と課題:
- 報告:道路上の危険の疑似体験ツールや親子学習アプリの開発・実証、小学校での出張授業、7歳児の交通事故に対する認知度を高める取り組みを実施し、一定の評価や効果を確認した。
- 課題:家庭、学校、地域それぞれで「児童が無理なく継続的に交通安全を学ぶ機会」が必要とされる点、および社会の誰もが自分事として「児童を守る」社会の仕組みの構築が挙げられた。
高齢ドライバー向けの実証と課題:
- 報告:ドライブレコーダーの映像を活用した運転診断や、地域コミュニティ等のグループでの振り返り、運転と健康を結び付けた実証を実施した。グループでの振り返りや健康づくりとの組み合わせが診断への納得感を高める効果を確認した。
- 課題:「運転評価=運転可否判断」ではなく生活維持や向上のための仕組みとして捉える社会的理解の醸成、および免許返納ありきではない安全に長く運転を続けるための伴走型の仕組みの検討が示された。
インフラ協調による交通安全策
第2セクションでは不測の事故を防ぐ「インフラ協調による交通安全」をテーマに議論が行われた。
トヨタ自動車副社長で同基金理事の中嶋裕樹氏は、自動車メーカーの技術開発による安全性向上に触れつつ、自動運転技術が発展しても死角からの飛び出しなどクルマ単体では物理的に防ぐことが難しい事故があると指摘した。クルマの安全性能向上への取り組みを継続すると同時に、スマートポールを活用したインフラ協調技術の有用性を提示した。
会場からは、スマートフォンや自転車搭載型デバイス等の活用を通じ、歩行者や自転車利用者へ危険を知らせて安全な行動を促す技術の可能性が示された一方、感情を持つ人間ならではの行動変容の難しさについても言及された。
さらに、インフラ、クルマ、スマートフォン等のデバイスから取得したデータをAIで分析し、人の行動予測による事故の未然防止や危険行動要因の解明につなげる発展性について意見が交わされた。
技術の社会実装に向けた課題整理と今後の推進内容は以下の通りである。
- 解決すべき課題:通信規格の策定、インフラの整備主体や費用分担のあり方、データ共有のあり方。
- 各分野の連携:高速通信を支える仕組み、自転車や歩行者側の安全デバイス、保険会社の事故データを活用した安全性評価など、各分野の技術や知見を持ち寄る。
- 実証の推進:地域の販売店等と協力して実証を進め、事故ゼロに向けたインフラ協調による三位一体の対策をスピード感を持って進める。

