いけぺろ社長、「若者は給料しか見てない」は間違いだった ― 3,000人の学生が給料より重視していた、たった一つの項目を公開

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古瀬 敏之
いけぺろ社長、「若者は給料しか見てない」は間違いだった ― 3,000人の学生が給料より重視していた、たった一つの項目を公開

 整備士の雇用支援を行う会社を経営する、いけぺろ社長こと、池田陽花さんが、自身のnoteで、「若者は給料しか見てない」は間違いだった ― 3,000人の学生が給料より重視していた、たった一つの項目という記事を公開した。

https://note.com/ikepero/n/na03473963d11?sub_rt=share_pw

 この記事は、自動車整備業界の採用活動において、経営者の多くが「結局、給料を上げるしかない」と考え、資本力で勝る大手ディーラーとの競争の中で、「給与で劣るうちは採用できない」という諦めを抱いている。この通説に対し、株式会社Dilectaが全国の整備系学校の学生約5,000名を対象に実施した「第2回 整備士学生意識調査」(2025年4月実施、有効回答3,099名)が、この長年の思い込みが間違いであったというデータを示した。調査結果は、学生が就職先を選ぶ際に給与以上に重視する項目があることを明らかにし、業界の採用戦略に新たな視点を提供している。

データが示す「給料より人間関係」という事実

 調査では、就職先を決める際の重視項目を19項目にわたり5段階で評価させた。その結果、最も高い平均スコアを獲得したのは「給与・報酬の良さ」ではなかった。トップに立ったのは「人間関係・チームワーク」であり、その差は僅かながらも明確な順位となって現れた。

1. 人間関係・チームワーク: 4.13

2. 給与・報酬の良さ: 4.08

3. 福利厚生: 4.08

4. 会社の安定性・将来性: 4.06

5. 労働条件(勤務時間・休暇): 4.05

 さらに、「5点満点(重要)」と評価した学生の数に注目すると、その傾向はより鮮明になる。「人間関係」を最重要視した学生は1,395名(47.5%)に上り、「給与」の1,357名(45.8%)を38名上回った。これは単なる誤差ではなく、学生たちが「誰と働くか」を強く意識している事実を示唆するデータである。

 この結果は、「給料が低いから採用できない」という経営者の思考停止に警鐘を鳴らすものだ。資本力で劣る中小整備工場であっても、戦い方次第では採用市場で勝機があるという希望を与えるものと言えるだろう。

学生は「職人気質」を警戒している

 中でも、いけぺろ社長ならではの視点として興味深いのは、学生が業界に対して抱くネガティブイメージとして、「職人気質で、話しかけづらい雰囲気がある」が23.0%(713名)に注目した点だ。いけぺろ社長が20代の時の実体験として、業界が長年かけて作り上げてきた「背中で教える」といった文化が、現代の若者にとっては強力な採用ブロックになっていたとしている。

 いけぺろ社長は、当時を振り返り「先輩に質問するには勇気がいるし、しょうもない質問をすれば舌打ちが返ってくる。仕事を覚えるのが遅かった私は、どんどん萎縮してしまい、先輩との仲もどんどん悪くなっていきました」とした。今、学生のデータを見て思うこととして、あの「職人気質」のイメージは、業界が何十年もかけて自ら作り上げ、採用の間口を自ら狭めてきた遺産なのだと。学生はそれを敏感に感じ取り、入る前から身構えている。そしてその警戒心は、工場見学の30分で確信に変わるか、覆るかが決まると結論付けている。

明日からできる3つの施策

 では、どうするか。大がかりな制度改革ではなく、明日からでも手をつけられる3つのアクションを提案している。

①求人票の「雰囲気」欄を、抽象表現から具体エピソードに書き換える

 「アットホームな職場」といった抽象的な言葉は学生に響かない。代わりに、「毎週金曜の朝礼後、先輩が若手に今週困ったことを聞く15分がある」など、固有名詞と具体的な行動を伴うエピソードを記述することで、信頼性が増す。

②工場見学の案内役を、入社3年目前後の若手に任せる

 経営者や工場長ではなく、年齢の近い先輩が自身の失敗談や成長を語ることで、学生は「3年後の自分」をリアルに想像できるようになる。人間関係への関心が高まる3年生に対して、これは特に有効な施策となる。

③SNSで、車や工具ではなく「人の関わり」を見せる

 整備中の車や工具の写真だけでなく、休憩室での雑談風景や新人の誕生日を祝う様子など、「人の関わり」を意図的に見せる。学生が警戒している人間関係の不安に直接アプローチするこの戦略は、他社との明確な差別化につながる。

 これらの施策は、単なる精神論ではない。3,099名のデータに基づいた、学生の心理に寄り添う合理的かつ即効性のある戦略なのである。給与での競争が難しい今、企業が向き合うべきは、自社の「人」という資産をいかに可視化し、学生の不安を安心に変えていくかという課題だ。

 いけぺろ社長自身が「元整備士」として挫折や苦労を経験しているため、文章の端々に現場へのリスペクトと、業界を良くしたいという「当事者意識」に溢れた考察を披露してくれていると感じた。