今回は、A社が先進運転支援システム(ADAS)搭載車のエイミング作業を効率化するため、省力化投資補助金(一般型)を活用して設備投資を行い、生産性向上と高付加価値整備への転換を図った事例をご紹介します。
A社は関西エリアで、一般車両の点検整備・車検に加え、特装車の特定自主検査や鈑金塗装まで幅広く手がける地域密着型の整備事業者です。長年にわたり培ってきた技術力と法人顧客との取引実績を強みに、特に特装車分野ではメーカー指定工場として安定した受注基盤を築いてきました。
一方で、近年急速に普及が進むADAS搭載車への対応では、エイミング作業を人手に頼っていたため、作業時間の長期化や担当者による品質ばらつきといった課題が顕在化していました。
SWOT分析では、特装車整備やADAS対応の実績、経験豊富な整備士が揃う点が強みとして確認されました。特に高度な整備を任せられる人材が社内に蓄積されている点は、今後の事業展開における大きな優位性です。一方で、エイミング工程がアナログで属人化していることや、DXの遅れが弱みとして浮かび上がりました。
外部環境では、衝突被害軽減ブレーキの搭載義務化を背景にエイミング需要の拡大が見込まれることが機会となる一方、対応可能な整備工場の増加や法規制への継続的な対応が脅威として認識されました。これらを踏まえ、A社は「精密調整は機械化し、人は高付加価値業務に集中させる」ことを次の一手として明確に打ち出しました。
この方針を実行に移すため、A社は省力化投資補助金(一般型)を活用し、エイミング作業を自動化するアライメント・キャリブレーションシステムと専用リフトを導入しました。
車両位置決めやターゲット調整を自動で行える環境を整えることで、従来は2~3人で長時間を要していた作業を、1人で安定的に完結できる体制を構築。作業時間の短縮に加え、測定データの自動記録による品質の平準化も実現しています。
今回の投資額は約1,600万円です。設備導入後はエイミング作業の処理能力が向上し、空いた人員を売り上げ比率の高い特装車点検や一般整備へ再配置することで、工場全体の回転率改善が見込まれています。地域内ではエイミングに本格対応できる整備工場は限られており、A社の省力化投資は他社との差別化を明確にする取り組みとなっています。
A社は今後、省力化によって生まれた経営資源を人材育成や高付加価値整備へ重点的に投下し、地域の高度整備拠点としての役割を一層強化していく考えです。人手不足や技術高度化という業界共通の課題に対し、設備投資と業務再設計で応えるA社の取り組みは、自動車アフターマーケット事業者が検討すべき次の一手として、多くの示唆を与える事例といえるでしょう。
次回も、自動車アフターマーケット業界の事業者が実践する次の一手をご紹介します。
第12回に続く
※MSR2026年2月号掲載
(筆者プロフィール)
山田健一 株式会社フォーバル
国内大手EC会社にてマーケティングを担当。その後、大手M&Aアドバイザリー会社にて上場企業の経営戦略立案やM&Aアドバイザーとして数多くのM&Aを実行支援。2016年に(株)フォーバルの事業承継支援事業立ち上げに参画。自動車アフターマーケットでの後継者問題の解決、補助金支援に力を入れている。