みんながわかる! OBD検査 第11回 知らない間に法令違反をしないためにはどうすればいいの?

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MSRweb編集部
みんながわかる! OBD検査 第11回 知らない間に法令違反をしないためにはどうすればいいの?

 OBD検査の適合判定結果は機構サーバーに記録されており、整備事業者は「OBD検査結果参照システム」を利用して該当車両の判定履歴を確認することができます(図1-Ⓐ)。また、各地の自動車機構の検査事務所でも照会可能です(図1-Ⓑ)。

図1 OBD検査の適合判定履歴の活用

 さらに、国交省が公開している資料によると「OBD検査の適合判定履歴を指定工場監査等で活用する」と記載されています。今回は、機構サーバーに蓄積された判定履歴が、継続検査申請や指定工場監査にどのような影響を及ぼすかを考えてみます。

 指定工場は本来、車両運行の安全を担保するために国が実施する車検業務の大部分を代行しています。そのため、たとえ起こしたミスが意図的ではなかったとしても責任は重大です。指定事業者に対する行政処分には、保安基準適合証等の交付の停止、指定の取り消し、自動車検査員の解任命令、是正命令と極めて厳しい処分が含まれています。

 行政処分は車検整備業務自体への甚大な影響だけではなく、事業者イメージの悪化などから車検以外の業務にも波及し、事業の存続にかかわる事態を引き起こしかねません。

 もしも指定工場が、OBD検査の判定結果が不適合であるにもかかわらず、その不適合を見逃してしまった場合、ついうっかりでは済まされません。その見逃しを防止し、リスクを最小化するためにはどういった運用をすれば良いのでしょうか?

 継続検査の申請時などにOBD検査の結果がチェックされるかというと、現時点では「いいえ」が答えです。残念ながら現在の保適証サービスシステムやOSSの継続検査申請システムには、機構サーバーと通信してOBD検査の車両の判定履歴を参照し、最新の履歴が適合であるかをチェックする機能はありません。

 つまり、たとえ該当車両のOBD検査の機構サーバー上の最新の判定履歴が不適合だったとしても、保適証発行や継続検査の申請時点では問題が表面化しません。

 この状況を受け、整備振興会などの業界団体からは、継続検査時にOBD検査の適合判定履歴をチェックする機能の追加が要望されました。そのためには継続検査の前工程である保適証サービスに確認機能を追加すれば早い段階でのチェックが実現できます。

 しかし、図1のように自動車機構のOBD検査システムと日整連の保適証サービスシステムは別システムなので、同チェック機能の追加はシステム開発という面からは簡単ではありません。したがって当初、要望に対する当局の回答はあまり前向きではありませんでした。

 ただし、業界各方面からの強い働きかけに「保適証サービスとシステム連携し、可能な限り早く実現を目指す」との回答に変わり、近い将来に実現する見込みです(図1-Ⓒ)。

 運輸支局の指定工場監査によって検査不適合のまま継続検査申請した車両が見つかれば、指定事業停止などの重大な処分が下される可能性があります。現状でも通常指定監査の中で偶然、不適合のまま継続検査申請してしまった車両を見つけることはあり得ます。

 ただし、今後、不適合車両が保適証サービスで排除される仕組みが整備されることを考えると、それまでの間に厳しい処分が下されるリスクは低いと考えられます。

 指定工場監査時のリスクの大小はともかく、不適合の見逃し防止のためには管理者による適合判定結果の再確認が必須です。“特定DTC照会アプリ”には適合判定の結果を出力する機能が2種類あります。

  1. 自社整備システムに取り込むためのCSVファイル(詳細判定結果を含む)
  2. お客様説明用に出力できるPDF帳票

 したがって、法令遵守の観点から不適合を見逃さないように判定結果確認を検査員任せにせず、管理者がこれらの機能を活用して判定結果を確実にチェックするという運用を確立する必要があります。管理者の確認後に赤ペンでチェック済みの印を付けるなど、確実に記録を残すことをお勧めします。

 「知らない間に法令違反をしないためには、OBD検査の適合確認を検査員任せにせず、管理者が確実に検査結果を再確認する体制を確立する必要がある」となります。

 今回はOBD検査の不適合を見逃した時のリスクと、管理者による適合再確認の必要性について考えてみました。日常業務だからといって作業者任せにせず、管理者が1台1台、しっかり確認しなければ大変な事態を引き起こすリスクがあることを肝に銘じてください。

 今後、本誌と連動して企画中のOBD検査に関するオンラインセミナーでは、具体例を挙げてより分かりやすく解説する予定です。ぜひご期待ください。 (つづく

※MSR2026年2月号掲載

(筆者プロフィール)
佐野和昭
 東北大学 工学部卒業後、トヨタ自動車へ入社。アフターサービス部門に配属され、品質管理からサービス企画・改善、部品のマーケティングまで幅広い分野を担当。その後、自研センターの取締役に就任。新しいアルミ修理技法などの修理技術開発を担当し、機械・工具メーカーなどと意見を交わした。現在は、車体整備をはじめとした整備関連業界において複数社の顧問を務めると同時に、セミナー講師やコンサルタントとしても活躍中。