高度化する整備と生産性向上の両立には設備投資が不可欠
会社の窮地を脱し、100年企業を目指す、その答えがM&A
会社の再建を果たしても、なおまだ次世代へのバトンタッチを模索し、東証スタンダード、名証プレミアの上場企業とM&Aを果たす。会社とは何か、経営者とは何か、を模索し、実践する叩き上げの苦労人、谷貝勝人社長。M&Aとは何か。その答えがここにある。
【工場概要】代表取締役 :谷貝 勝人 住所 :東京都府中市白糸台2-13-1 設立 :1962年(昭和37年) スタッフ :67人(うち整備士数17人)
多角経営の先駆者の後継者 遺言による指名で受諾
創業1962年(昭和37年)。税理士資格を持ち、いすゞ自動車に勤務をしていた先代社長が、車体修理工場を買い取り、開業したのが府中自動車である。その10年後の1972年、一般整備工場を別店舗でスタート。
![工場ルポ 府中自動車[東京都府中市]](https://mobiria-prod-media.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/sites/2/2026/07/2026YH01M9-PH04-1024x682.jpg)
また、1975年には梱包運輸事業に進出するなど、多角経営で同社は急成長を遂げる。しばらくは順風満帆な経営を続けていたが、先代の体調が悪化するころには借金が6億円にも膨らんでいたという。先代が死去すると後継者選びは難航した。
社内にいた2人の子息は社長就任を固辞。ところが、先代が遺した遺言状には、後継者が不在の場合、同社社員の谷貝勝人氏に後継社長を打診する旨が記載されていたという。
「一社員にすぎない自分が社長に指名され、悩んだ。しかし、当時で40年以上続いていた会社をなくすわけにもいかず、『社長になったら、みんなついてきくれるか』と社員にたずねると、彼らは「ついていく」と即答してくれた」(谷貝社長)。
2006年、谷貝社長は正式に社長を受諾。42歳の青年社長が誕生した。
莫大な負債を返済 V字回復に成功
元々、プリンスホテルの調理人だった谷貝社長は、知り合いだった先代社長に請われ、入社後、梱包運輸事業部に配属。長距離トラックドライバーを経験した後、府中自動車の営業職に配属される。地元に顔が広いことで、自動車販売、自動車保険の募集、それらがもたらす自動車整備へのシナジーなど、今でいうバリューチェーンを実践し、多くの新規客をもたらしてきた。
社長就任後の経営は予想通り厳しい船出だったという。銀行からの融資を受けるため、10年間の経営計画書を作成し、谷貝社長は会社の再建を進める。
「その10年間は記憶に残っていないほど働いた」という谷貝社長。社長就任時に6億円だった年商は10億円を突破、計画通りに負債を解消していった。その結果、盤石の経営基盤を作り上げ、地域のトータルカーショップとしての地位をゆるぎないものとした。
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M&Aを視野に次世代の経営基盤を模索
V字回復に成功しても、谷貝社長は手を休めることなく、次世代の経営基盤を模索する。
「これまでと同じ手法で経営を行っていては衰退を招く。EVや自動運転、空飛ぶクルマの時代がきているとともに、我々の整備工場のキャパシティーがフルに近づきつつある中、DXや設備投資が必要だ。すごく優秀な会社に手伝ってもらい、府中自動車をさらに高みに上げていきたい」と谷貝社長はM&Aを視野に入れた取り組みを開始する。
![工場ルポ 府中自動車[東京都府中市]](https://mobiria-prod-media.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/sites/2/2026/07/2026YH01M9-PH03-1024x541.jpg)
DXで「100年企業を目指す」相思相愛のM&A成立
まず、谷貝社長は府中自動車の価値を他の企業がどのようにみているかを知りたくて、様々な企業と面談したという。
「まだM&Aという段階ではなかった」と語るが、そうする中、M&Aを仲介する企業からオファーが届く。その会社とは自動車メーカーのマニュアル作成、人材育成などを手掛ける東京証券取引所スタンダード市場などに上場するシイエム・シイであった。
業務効率化の新たな商材の開発や、それに基づくエンジニアの働き方改革の実現に向けた取り組みがその背景にあったという。
約1年にわたる交渉の結果、2023年にM&Aは成立し、府中自動車はシイエム・シイのグループ会社となった。谷貝社長はシイエム・シイについて「未来が見える会社」と感じたという。また、府中自動車とシイエム・シイが同じ年に創業したこともM&Aの流れを後押しした。
谷貝社長が社長就任時から考えていた100年企業の夢について「ともに100年企業を目指しましょう」との言葉がシイエム・シイからかけられたという。
![工場ルポ 府中自動車[東京都府中市]](https://mobiria-prod-media.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/sites/2/2026/07/2026YH01M9-PH07-1024x682.jpg)
DXし、生産効率を向上 加速する現場のベネフィット
M&Aが行われた後、府中自動車は残業時間の短縮、有給休暇が取得しやすい環境整備など劇的な働き方改革が進められた。
車検システムによる記録簿の印字、「楽々エーミング」を用いたエイミング作業の効率化など、整備のDXを推進。また、営業部門や経理部門はスプレッドシートを用いたペーパーレス化が進められた。一方、運輸部門では運行管理をDXし、遠隔点呼やアルコールチェックの自動記録などを導入した。
導入当初はデジタル化に対して、スタッフからのアレルギー反応もあったが、デジタルデバイスの操作に慣れるうち、効果が現れ、DXは促進され、生産効率は大きく向上したという。
自動車整備の高度化が急速に進む状況において、サービスの品質を高めるとともに、従業員が幸せであり続けるならば、共存共栄によるM&Aは有力な選択肢になることを同社はまさに体現している。
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