日本自動車整備振興会連合会及び日本自動車整備商工組合連合会(喜谷辰夫会長)は8月3日、KKRホテル東京(東京都千代田区)で、自動車整備記者会懇談会を開催した。
喜谷辰夫会長の挨拶
会の冒頭で喜谷会長は、「まずは、先月28日に発生いたしました熊本地震により、お亡くなりになられました方々へのご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。一日も早く平穏な日常を取り戻すことができることをお祈り申し上げます。
さて、自動車業界は現在、高度な電子化が進展し、先進安全自動車や電動車が急速に普及するなど、大変革期の時代を迎えており、整備業界を取り巻く環境にも大きな波が押し寄せている。
整備業界がこの大変革期と言われている時代の変化に対応し、継続・発展できるよう、日青連、青少連としては、情報提供に努めていくが、プレス各位においても、タイムリーで有用な情報発信を継続していただけるようお願いしたい」と挨拶した。
2025年度事業報告・2026年度事業計画
喜谷会長の挨拶に続いて、島雅之専務理事が2025年度の実績と2026年度の計画を「新技術への対応」、「安定した整備事業への対応」、「人材不足への対応」という3つの柱に沿って説明した。
新技術対応では、2027年1月施行の資格制度改正に伴う教科書作成やオンライン講習「manable」のプレ運用、スキャンツール研修などが報告された。
安定した整備事業への対応は、OBD検査開始を受けての「指定整備事業適正運営マニュアル」の改訂、「令和8年度版自動車整備標準作業点数表」の作製、整備工場インターネット検索支援(自動車ユーザー向け)を計画していることが分かった。
人材不足対策としては、未就学児向け体験ツールの配布、工業高校への出張講習(17校・418名参加)、外国人技能実習・特定技能評価試験の拡充など、多角的な取り組みが進められていることを明かした。
質疑応答
中東情勢対応関連
懇談会最後は事前に寄せられら共通質問を中心に、質疑応答の場が設けられた。
Q.昨今の報道等にあるナフサ不足問題についての中央団体としての現状認識と対応策について、国や関連業界への働きかけなどを行っているか
A.中東情勢の悪化を受けて、石油製品の供給が不安定な状態が続いている。製品や原料の輸入の大幅な遅延やコストの急増が発生している状況で、私どもが扱っている商品についても、4月初旬以降、価格改定や受注調整等を余儀なくされている。
また、例年に比べて不安があるということで受注量が増加していることもあり、エンジンオイル等一部の銘柄、グレードについてはバックオーダーを抱え、入荷の見通しが立たない商品については受注停止となっている状況。
順次、製造はされているが、やはり前年出荷量を基本とした出荷制限が求められているという状況。私どもとしては、仕入れ先との連絡を密にしまして、最新の情報を各商工組合にご案内するとともに、製品の入荷があり次第速やかに発送を行える体制を取っているところだ。
こういった状況については、逐次、国に報告をし、改善を要望してきた。これを受けて、各省庁に相談窓口が設置され、その状況を踏まえて円滑な供給を指導する等の対応を行ってもらっている。
自動車整備の分野は、各ブロックにある地方運輸局の整備課が窓口となっており、そちらに具体的な事例を報告し、目詰まり、つまり途中で商品が多く買われてしまって届かないという状況を解消してもらえるよう、1案件ごとに対応いただいている。
実際に、経済産業省と国土交通省が連携をして、供給の偏りと目詰まりの解消に向けた対応を実施してもらっているという状況。まだまだ先が見通せないという状況は続いているものと認識をしている。
OBD検査、自工会との連携
Q.本格化しつつあるOBD車検についての現状認識、それからスキャンツールや工賃などについて、事業者からどのような声が寄せられているか
A.OBD検査はすでに導入されており、国土交通省主催の「OBD検査モニタリング会合」に私どもも参画し、議論を進めている。その中で、技術的な問題が大きくクローズアップされているという状況ではないと現状では聞いている。
OBD検査において、故障診断機を使用しての作業は時間と技術の対価だと考えておりますので、ユーザー様に料金と一緒に分かりやすく伝えることが大事だと思っている。国や私どもでも、OBD点検や故障診断の周知ポスターで、こういった新しい技術に対しては新しい検査が必要だということをユーザーに理解いただくための周知をしている状況。
今後もこういったモニタリングは重要だと思っているので、事業者さんから新たな問題に対する声が上がった場合については、しっかりと検討して対応してまいりたい。
Q.先般の日整連総会の懇親会において、自工会の佐藤会長が初めて出席された。今後どのような分野・課題について連携強化を進めていくのか。製造とサービスの業界が連携するメリットは
A.今回、自工会の佐藤会長がおいでになったということで、私どもは非常に大変ありがたく思っている。できれば引き続きご出席賜ればと思っている。
佐藤会長は自動車教育振興財団の理事長もされており、自動車を作るだけでなく、自動車業界全体について見ることが非常に重要だと思っていらっしゃる、ご本人も関心があるのではないかと推測している。
これから整備士不足への対応というのは、整備業界のみならず、自動車工業会、販売店業界、自動車部品工業会など、あらゆる自動車関連団体に影響のある分野だと思っているので、やはり業界全体で取り組んでいただくということが極めて重要。そういった意味で、整備士の確保というのは自動車業界横断的に取り組んでいく課題の1つだと私どもは思っている。
この製造とサービスの連携というよりは、もっと言えば自動車業界全体の取り組みとして、整備のみならず自動車業界全体の発展に寄与していくということが重要だと思っている。そういった観点で、関係団体と連携をしながら、この人材確保の課題について取り組んでまいりたい。
外国人関連
Q.外国人材の定着に関して、受け入れ先を一本化し、犯罪に走るケースが増えているように感じられるが、整備業界は大丈夫か
A.すぐ「大丈夫」とは申し上げられないが、そういった事例があれば、それもしっかりと対応してまいりたい。今のところ、この整備に関して犯罪に走るといったケースの報告は受けていないというのが実情だ。
事業者によっては、受け入れている外国人の方の言語や文化の違いに対応するために、作業マニュアルの整備や教育体制の見直しを行っているところもある。こういった事業者においては、非常にうまくコミュニケーションが取れて、生産性の向上にもつながっているという事例があるように聞いている。
努力している事業者は、なかなか失敗するということはないのではないかと思っている。ただ、自動車整備の分野は(外国人材が)増えているので、今後の動向をしっかりと見守ってまいりたい。
Q.今年は11月に全国整備技能競技大会が開催される。外国人整備士による国別対抗エキシビションなどを併催してはいかがか
A.非常に大変興味深い提案だと私どもは思っている。これから外国人がどんどん増えていく中で、外国人の技能を見てもらって、職場の多様性をアピールするという観点から、非常に興味深い提案であると受け止めている。
ただ、これまでもいくつかの振興会から外国人が出場している。これは、各振興会で予選を勝ち抜いて、本戦に出てこられた優秀な成績を取って代表として出場されているということ。やはり全国技能競技大会の本題は技能レベルを競っていただくということなので、国籍を問わず、広く技能を競って実施することが基本線だと思っている。
こちらについては引き続き、外国人選手も予選を勝ち抜いて出場いただければと思っているが、今後、こういった外国人についてのPRをしていく観点は非常に重要だと思っているので、今後検討させていただければと思っている。
AI、DX関連
Q.業務効率化の観点から、自動車整備事業者が業務にAIをどのように活用していくべきか
A.整備業界はAI活用が非常に遅れているのではないかと思っている一方、整備士の業務がすべてAIに取って代わるのは無理だと思っている。
ただ、AIが得意な分野、いわゆる情報を整理する、資料を作る、分析をする、在庫管理をするといったものについては非常に信頼度も高いと認識しているので、こういったことから業務にどんどん取り入れていくということが重要だ。
なかなか人材確保はすぐできるものではないので、人がやらなくてもいい分野についてはAIをどんどん事業者に活用いただくことが重要だ。たとえば、先ほど申し上げたことに加えて、故障診断支援といったものについては、AIを使って支援範囲を拡大していくことが重要だと思っている。
Q.日整連として、生成AIの活用にどのように取り組んでいくのか
A.整備技術情報を搭載したシステム「FAINES」にある情報をAIでどう対応できるかと研究しているところ。たとえば、同じ部品でもメーカーによって名称が異なる、その名称の垣根を超えてFAINESに入っている情報の検索性を良くすることに加え、生成AIを使って、もっと迅速に整備事業者さんへの支援ができないか研究してまいりたい。
なかなか一朝一夕にできないテーマだと認識しているので、いろいろと皆様からアドバイスをもらいたい。整備業界だけでなく、飲食業界や建築業界など、ほかの分野で活用されている事例も聞いているので、こういった点をしっかりと勉強しながら進めてまいりたい。
Q.2028年1月のMOTAS(自動車登録検査業務電子情報処理システム)の全面改定で、登録検査手続きのDXが進むと見られる。整備事業者はどう対応していくべきか
A.DX、いわゆるデジタル化はどの業界においても時代の流れなので、しっかりと対応していく必要がある。事業において不可欠な時代にこれから移っていくだろうと思っている。
DXは移行期が一番大変だと思うが、慣れてしまえば波に乗って前に進めていけるもの。あらゆる分野で人手不足という状況の中で、この点からもDXは避けられないと思っている。
事業者にとっても効率化が図られるであろう仕組みにしていく必要があると思っており、自動車整備に集中できるよう、周辺の業務をDXが担っていくということができればと思っている。
2028年1月まであまり時間はないが、しっかりと取り組んでまいりたい。現場でDXがどう進んでいくのか、どんな違いがあるのかが大きな課題なので、最新の情報をどんどん発信していくよう関係資料を作ってまいりたい。
令和8年熊本地震関連
質疑応答の時間最終盤では、令和8年熊本地震による現地整備工場の被災状況にも言及。人的被害はないものの、数十の整備工場が被災。中には運営に支障をきたす工場も出ているとの回答が得られた。
※令和8年熊本地震及び直近の災害で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興と、皆様の平穏な日常が戻ることをお祈り申し上げます。
Q.熊本地震に関して、被災した整備工場の現状と支援状況を教えてほしい。また、関連して整備工場のBCPの必要性や、どのくらいの事業者が計画を策定しているのかも併せて
A.まだ全容が分かっている状況ではないが、数十の整備事業者が被災したとの情報が寄せられている。震源地を中心とした事業者が被災しており、人的被害はないものの、事業運営に支障をきたす事業者が含まれている。
現地も復旧作業で大変な状況なので、状況を見守りながらしっかりと支援をしていきたいと考えており、まだ情報収集のステージだと認識している。
BCPについては、整備事業のみならず、現地で自治体と連携しながら対応を組んでいる。避難場所や避難経路、被災した場合の自治体が用意する支援策などについては、熊本では(10年前の被災経験もあることから策定)できていると認識している。
私どもも国と連携し、整備全体として支援が必要な状況になれば、しっかりと要望・要請をして支援していきたいと思っている。
Q.整備工場に対する義援金などは検討しているか
A.検討している。全体の状況を把握しながら、そういった義援金も対応してまいりたいと思う。