指定工場が9割近くを担うOBD検査、127万台のデータが示す普及と課題の今

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八木 正純
指定工場が9割近くを担うOBD検査、127万台のデータが示す普及と課題の今

2024年10月の制度開始から約1年9ヵ月が経過したOBD検査について、OBD検査ポータルにて初めて第2四半期の運用データが7月16日付けで公表された。本記事では、第7回OBD検査モニタリング会合(6月24日開催)にて発表された資料と横断的に比較・分析し、OBD検査の現状と課題を整理する。

調査概要

本レポートが参照するデータは以下の通り。

  • 集計期間①:2024年10月1日〜2026年5月31日(第7回モニタリング会合資料)
  • 集計期間②:2024年10月1日〜2026年6月30日(検査ポータル発表2026年第2四半期資料)
  • 対象機関:自動車技術総合機構、軽自動車検査協会、指定自動車整備工場(指定工場)
  • 検査方式:特定DTC照会アプリの「OBD検査モード」による判定(「OBD確認モード」は含まない)

なお、「検査台数」は同一車両への複数回実施であっても1台としてカウントされており、「不適合あり」は1回でも不適合判定を受けたものを指す。

累計検査台数が127万台を突破——制度開始から着実に拡大

制度開始から2026年5月末時点での累計検査台数は114万7,513台だった。その約1ヵ月後の6月末時点では127万360台へと増加し、月間ベースで約12万3,000台が追加されたことになる。

モニタリング会合においても「OBD検査実施台数は引き続き増加傾向にあり、ついに100万台を突破」と評価されており、制度の普及が着実に進んでいることが確認できる。

また、5月末時点のOBD検査対象台数は約690万台(登録自動車:473万2,842台、軽自動車:216万2,796台)であり、対象型式数も5月末時点で1,523型式(4月末時点では1,517型式)と増加傾向にある。

機関別の実績比較——指定工場が検査の大半を占める

6月末時点における機関別の検査実績は下表の通り。

検査実施主体検査台数不適合あり不適合あり率
指定自動車整備工場1,099,773台28,508台2.6%
自動車技術総合機構91,704台4,145台4.5%
軽自動車検査協会78,883台2,150台2.7%
合計1,270,360台34,803台2.7%

5月末時点(第7回会合資料)と比較すると、全体の不適合あり率は 2.8%から2.7% へわずかながら改善されている。指定工場も 2.7%から2.6% へ低下しており、自動車技術総合機構も 4.7%から4.5% へと改善が見られる。

中でも注目されるのは、自動車技術総合機構の不適合あり率が他検査主体と比較して依然として高い点。これは検査コースに持ち込まれた車両の状態やユーザー層の違いを反映している可能性がある。一方、指定工場と軽自動車検査協会はいずれも2.7%前後で推移しており、比較的安定した水準を維持している。

不適合要因の内訳——準備不足由来が引き続き多数

指定自動車整備工場における不適合要因の四半期別推移は、制度運用の質的な変化を把握する上で重要なデータだ。

不適合要因2025Q32025Q42026Q12026Q2
電圧不足157(0.1%)380(0.2%)537(0.2%)367(0.1%)
警告灯信号13(0.0%)42(0.0%)66(0.0%)56(0.0%)
レディネスコードなし1,297(0.9%)1,730(0.9%)2,166(0.8%)2,019(0.7%)
通信不成立1,142(0.8%)1,518(0.8%)1,940(0.7%)1,893(0.7%)
特定DTC(排出ガス系)16(0.0%)44(0.0%)68(0.0%)59(0.0%)
特定DTC(安全系)2,164(1.6%)2,772(1.4%)2,550(0.9%)2,640(0.9%)

※括弧内はOBD実施検査台数に対する割合(小数点第2位を四捨五入)

排出ガス系不適合:「準備ミス」が主因、比率は低下傾向

排出ガス系不適合のうち、「警告灯信号」と「特定DTC」以外の要因、すなわち「電圧不足」、「レディネスコードなし」、「通信不成立」については、OBD検査の準備が適切に整っていなかった可能性が指摘されている。

  • 電圧不足:バッテリー機能が低下した状態でエンジンを始動せずに実施した可能性
  • レディネスコードなし:DTC消去後、レディネスコードが記録される前に検査を実施した可能性
  • 通信不成立:VCIの差し込み不足またはECUの電源異常の可能性

2026Q2において、電圧不足は前四半期(537台)から367台へと大幅に減少している。レディネスコードなしも2,166台から2,019台へ、通信不成立も1,940台から1,893台へと減少傾向にある。いずれも検査台数に占める割合が0.7〜0.8%の水準に収まっており、一定の改善が認められる。

これらの準備起因の不適合については、整備事業者等から報告された課題を基にシステム的なミス防止策が順次講じられており、その効果が数字に反映されつつあると考えられる。

安全系不適合:件数はやや増加も、比率は横ばい

安全系の特定DTCによる不適合は、2026Q1の2,550台から2026Q2には2,640台へとわずかに増加した。ただし、検査台数に対する割合は0.9%で同水準を維持している。

この不適合の主な原因として、整備の過程で記録された特定DTCが整備後に消去されないまま検出された可能性が挙げられている。

制動装置関係や各センサ・システムとの通信異常・途絶が引き続き検出されているが、長期的な傾向として見ると、2025Q3の1.6%から0.9%へと大幅に比率が低下しており、運用改善の効果が表れていると言える。

検査コースでの省略制度も機能——制度全体に大きな問題なし

OBD検査においては、認証工場が受検前に「OBD確認モード」で適合を確認した車両について、検査コースでのOBD検査を原則省略できる仕組みが設けられている。省略の可否はOBD検査用サーバーが自動判定するため、書類の持参は不要。一方で、替え玉受検の防止等を目的とした一定の抜き取り検査も継続されており、制度の信頼性維持が図られている。

モニタリング会合の総括においても、「引き続き重大な問題は発生しておらず、順調に運用されている」との評価が示されている。2025年10月から検査対象となった輸入車についても、国産車と比較して特筆すべき傾向は見られていない(累計実施台数:約4,300台)とのこと。

まとめ——普及と品質改善が両立、引き続き注視が必要

本レポートの要点を改めて整理する。

  • OBD検査の累計実施台数は2026年6月末時点で127万360台に達し、制度開始以来着実に増加している
  • 全体の不適合あり率は 2.7%(5月末時点の2.8%から改善)で、機関別・要因別ともに改善傾向にあ
  • 不適合の主因は依然として「検査準備の不備」によるものであり、手順の徹底とシステム改善によって解消が進んでいる
  • 安全系不適合の件数はやや増加しているものの、比率は0.9%で安定しており、長期トレンドでは大幅に改善されている

今後もデータの蓄積とともに不適合要因の傾向把握が進むことで、整備現場の品質向上及びOBD検査制度の信頼性確保に向けた取り組みがより精緻化されることが期待される。