みんながわかる! OBD検査 第9回 特定DTC照会アプリによる適合確認はいつ何回すればよいの?

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MSRweb編集部
みんながわかる! OBD検査 第9回 特定DTC照会アプリによる適合確認はいつ何回すればよいの?

 当初の整備振興会などの研修会では、OBD検査の特定DTC照会(以下、適合確認)を「車両受け入れ時」と「完成検査終了時」の両方で行う運用が説明されていました。この運用に対して整備業界からの「適合確認の回数を減らしたい」という要望が上がりました。国土交通省からは「受け入れ時に適合確認を行えば、完成検査終了時は警告灯が点灯していない限り不要」との見解が示されました。

 ただし、整備中の不備や手違いなどで警告灯が点灯してしまった場合は、改めて適合確認を行う必要があります。たとえば、ECU・センサー・配線を外した状態で車両電源をONにした場合や、ADASセンサー交換後にエイミングを実施しなかった場合などです。

 当然ですが警告灯が点灯したままでは納車できませんので、必ず特定DTCを解消して警告灯を消灯させなければなりません。今回は、この新しい運用方針や制度開始後の不適合の状況を踏まえ、効率的で適切なOBD検査の進め方を考えてみます。

 車検受け入れ時は、できるだけ早く見積りまで終えて顧客の待ち時間を短くすることが重要です。しかし、この時点で適合確認を行うと追加で時間がかかります。

 車検入庫車両の大多数は警告灯が点灯しておらず、特定DTCの発生は稀です。したがって警告灯消灯時は、受け付け時に適合確認をする必要はなく、整備前までに実施すれば問題ありません(表1)。この際は車検専用のVCI型スキャンツールを使用しても構いません。

表1 受け入れ時の適合確認

 では、なぜほとんどの車両が特定DTC未発生にもかかわらず、受け入れ時に適合確認の実施が必要なのでしょうか。それは、適合確認を行うことにより、その車両に対する「適合」の判定履歴を機構サーバーに残す必要があるからです。

 一方、警告灯の点灯車両には特定DTC発生の可能性があるため、その場で確認する必要があります。結果次第で見積りや納期の説明内容も変わるため、顧客に少し待っていただいたほうが適切です。警告灯が点灯している状況であれば、多少時間がかかってもご理解いただけるでしょう。

 また、この時は次の特定DTCの原因究明につなげるために整備・検査兼用型スキャンツールを使用します。

 受け入れ時の適合確認で「適合」判定であれば、その車両の「適合」の履歴がすでに機構サーバーに残っているので、完成検査時には保安基準に適合するOBD検査の合否に影響を及ぼす整備または改造等をしていないと自動車検査員が判断すれば再度の適合確認は不要です。ただし、整備後に警告灯が点灯した時は再度の適合確認が必要です(図1)。

図1 機構サーバー上の適合確認履歴の変遷

 ただし、受け入れ時に「不適合」と判定された場合は、その後の整備でDTCを解消したとしても、機構サーバーには「不適合」が最新履歴として残ったままになります。特定DTC解消後に、再度適合確認を行い「適合」判定を最新履歴としてサーバーに追加する必要があります。この場合も車検専用のVCI型ツールで対応できます。

 国交省の制度開始後の不適合事例の分析結果から「レディネスコード無」が全体の約25%、特に排ガスOBDでは約53%を占めており、予想以上に多いことが分かっています。これを避けるには、DTC消去の方法とタイミングがポイントです。

 スキャンツールによるDTC消去には2種類の方法があります(表2)。

DTC消去によるレディネスコードへの影響

●システム一覧画面(親画面)からのDTC消去
 E/G ECUを含む全ECUに対して消去コマンドを送るため、実行するとレディネスコードも消えてしまいます。整備後に実行するのが習慣になっているケースが少なくないようです。

●個別システム画面(子画面)からのDTC消去
 表示しているシステムのECUだけに消去コマンドを送るため、E/G以外のシステムで実行してもレディネスコードは消えません。

 つまり、E/G以外のDTCだけを消したい場合は「個別システム画面のDTC消去」を利用すべきです。 E/GのDTC消去が必要な場合は、以下の手順で行うことで大型車の一部を除き不適合を回避できます。

  1. 排ガス関連のDTCは、排ガス測定の前に消去
  2. 排ガス測定で自己診断が実行され、レディネスコードが記録

 その後にアプリで適合判定を行えば、「レディネスコード無」による不適合は防げます。

 「OBD検査の適合確認は原則、受け入れ時の1回だけで良い。ただし、警告灯が点灯して不適合となった場合は、特定DTCを解消した後にもう一度、適合確認を行う必要がある」となります。

 今回はOBD検査の適合判定の効率的な運用方法を解説しました。今後、本誌と連動して企画中のOBD検査に関するオンラインセミナーでは、図を用いながら、この関係性をより分かりやすく解説する予定です。ぜひご期待ください。    (つづく)

※MSR2025年12月号掲載

(筆者プロフィール)
佐野和昭
 東北大学 工学部卒業後、トヨタ自動車へ入社。アフターサービス部門に配属され、品質管理からサービス企画・改善、部品のマーケティングまで幅広い分野を担当。その後、自研センターの取締役に就任。新しいアルミ修理技法などの修理技術開発を担当し、機械・工具メーカーなどと意見を交わした。現在は、車体整備をはじめとした整備関連業界において複数社の顧問を務めると同時に、セミナー講師やコンサルタントとしても活躍中。