これまでの連載では、理想の人材を採用するために必要な募集活動や面接の進め方について説明した。
「会社の理念に合った人材を採用できたのですぐに会社になじむだろう……」
「うちは主体性を重視しているので、勝手に定着してくれるだろう……」
良い人が採用できた時はそんなふうに考えたいものだが、そう簡単にはいかない。入社してくれた社員が辞めずに定着してくれる、成長して会社の未来の担い手となってくれるには、入社後も適切にアプローチを続けなくてはならない。
実は、私たちチームエルにも、社員が定着せずに苦しんだ時代がある。20代の若手社員を中心とした採用に力を入れ始めたころ、採用した人の半数が1年も経たずに退職していったのだ。これには、経営陣のみならず、多くの社員がショックを隠せなかった。
「辞めてしまったのは相手に問題があったのだろう……」
「相性が悪かったのだ。他にもっと良い人がいるだろう……」
始めのうちはそのように自分たちに言い聞かせていた。しかし、退職者が増えるにつれ、「こんなに早期退職が続くのは、組織に問題があるのではないか?」、「相手に合わなかったのは我々のほうではないか?」と考えるようになった。
そんな中で、採用担当者は、退職した人にわざわざ連絡し、「辞めた理由」を改めてヒアリングしてくれた。今思えば、大変なことだったと思うが、そのような痛みの中から「人が定着する仕組み」を見いだすことができたのだ。
そもそも、人が辞めないためには、どんな要素が必要なのか?それは、「成長感」、「貢献感」、「連帯感」の3つの実感だ。
成長感とは、「自分は成長している! できることが増えている!」と実感できること。貢献感とは、「自分は組織や顧客の役に立っている!」、「組織や顧客に貢献し、必要とされている!」と実感できること。連帯感とは、「自分はこのチームで仕事がしたい! この仲間と一緒に頑張るのが楽しい!」と実感できることだ。
日々の仕事の中で、この3つの要素を感じることができていれば、社員の定着率は格段に上がる。逆に、この3つの内どれか一つでも抜ければ、社員は退職を考え始める。多くのクライアント企業の例を見ても、社員の退職の理由は、この3つのうちどれかが感じられなかったことに集約される。
もちろんその背景には、「ブラック企業ではないまっとうな会社」であることが前提だ。そのための労働環境(残業時間や休暇取得、社会保険、人事評価や給与制度)が整っており、そして「安心して働ける、困った時も相談できる」という心理的安全性が担保されていなければならないのは言うまでもない。
3つの実感のうち、最も確立しやすいのが「連帯感」を高めるための仕組みだ。次回は、私たちが行っている「連帯感を高める仕組み」を紹介したい。
※MSR2026年3月号掲載
(筆者プロフィール)
關 友信 株式会社チームエル
取締役CMO。2006年に愛車広場カーリンクのチェーン展開開始と同時に、カーリンク基礎研修の開発に着手、その後も直営店の出張査定センターのマネジメントやディーラーコンサルティングなど、幅広く様々な仕事を経験、2014年からはCaSSの会員制度を立ち上げ、会員向けのサービスや企画を開発。