みんながわかる! OBD検査 第12回 自社に合う検査用スキャンツールはどのように選べばいいの?

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MSRweb編集部
みんながわかる! OBD検査 第12回 自社に合う検査用スキャンツールはどのように選べばいいの?

 整備用スキャンツール(以下S/T)については、ほとんどの整備工場ではすでに使用していると思いますが、OBD検査が始まり、検査用S/Tの導入が必要になりました。タブレット型の検査用S/Tは、外観や車両への接続方法、基本的な操作性は従来の整備用S/Tとほとんど同じなので、両者の違いが分かりにくいと感じている人も少なくないでしょう。

 タブレット型検査用S/Tは、従来の整備用S/Tが持つ機能をすべて備えた上で、OBD検査を実施するための専用機能を追加したものです。故障コードの読み取りや消去、各種データの表示といった整備用途の基本機能は、検査用S/Tでもこれまで通り使用できます。

 その「検査専用機能」を象徴する存在が、本連載でも繰り返し解説してきた「特定DTC照会アプリ」です。OBD検査では、特定DTC照会アプリを用いて、検査対象装置に関する特定DTCの有無や該当性を確認し、その照会結果が検査適合の判定に反映されます。

 この一連の作業を正確に実行できることが、検査用S/Tに求められます。検査用S/Tとは、単に診断ができるツールではなく、OBD検査のための機能を備えた装置である点が最大の違いと言えます。

 従来、特定DTC照会アプリはWindows版のみの提供だったのでAndroid版の検査用S/Tは別途Windows PCが必要でした(図1-A)。最近Android版の同アプリが追加リリースされたことで、PCを用意しなくてもAndroid版の検査用S/Tで機構サーバーとの直接通信が可能になり、OBD検査を実施できる環境が整いました(図1-B)。

図1 S/Tと車両OBDとの通信ルート(イメージ図

 ただし、従来から使用しているAndroid版の検査用S/Tに同アプリをインストールすれば、そのまま正式にOBD検査用として使用できるわけではありません。Android版の同アプリを用いてOBD検査を行うためには、所定の動作確認などを経て新たに認定された、同アプリ対応の検査用S/Tが必要になります。

 認定された検査用S/Tであれば、S/T単体で特定DTCの照会から検査結果の確認までを完結できることが、制度上担保されています。

 S/Tを単独で検査対象車両の近くに持ち込んで作業できるため、検査動線がシンプルになり、PC設置や配線に伴う手間も軽減されます。また、将来的には特定DTC照会アプリとS/T本来の故障診断機能との連携も期待できます。

 立ち上がりが早いAndroid版S/Tの単独運用は、検査現場での使い勝手を大きく向上させるでしょう。

 検査用S/Tには、タブレットなどの表示部を備えた一般的なタイプのほかに、VCI(車両通信インターフェース)と一体化したOBD検査専用S/Tも存在します(図1-C)。

 VCI型S/Tは、OBD検査専用なので特定DTCを検出して検査結果を判定することはできますが、その後の故障原因の切り分けや修理確認といった診断業務はできません。特定DTCが検出された場合でも、別途、整備用S/Tを用いた故障診断が必要になります。

 このため、整備工程から独立している車検専用ラインを持つような大手の指定工場では運用しやすい一方、検査から整備までを同一ラインで行う一般的な整備工場では、機器の使い分けが必要となり、かえって非効率になる可能性があります。

 検査用S/Tは、導入後も長期間にわたって使用する機器です。そのため、制度改正や運用ルールの変更に対応するソフトウェアアップデートの有無、トラブル発生時の問い合わせ対応など、導入後のサポート体制も重要な選定ポイントになります。メーカーによって、国内でのサポート窓口の充実度や対応スピード、情報提供の分かりやすさには差があるため、導入前に確認しておくことが重要です。

 問い合わせ先が明確かどうか、技術情報が整理されて提供されているかといった点も、日常業務では大きな違いとして現れます。

 保証についても、従来は1年保証が一般的でしたが、近年では標準で長期の保証期間を設定する製品も出始めています。検査業務で安定して使用する機器として、こうした点も判断材料の1つになります。

 「検査用S/Tの選定では、OBD検査認定ツールであることはもちろん、Android単独運用の可否や、導入後のサポート体制、保証制度まで含めて検討する」となります。

 今回は検査用S/Tの選定方法ついて考えてみました。本連載で解説してきたOBD検査の考え方を踏まえ、確実な法令遵守と安定した検査業務の実現につなげていただければ幸いです。

 今回でOBD検査の連載は終了です。ご愛読ありがとうございました。来期の連載は特定DTCを含むADAS車の整備の判断と説明のための基礎知識の予定です。ご期待ください。 (おわり)

※MSR2026年3月号掲載

(筆者プロフィール)
佐野和昭
 東北大学 工学部卒業後、トヨタ自動車へ入社。アフターサービス部門に配属され、品質管理からサービス企画・改善、部品のマーケティングまで幅広い分野を担当。その後、自研センターの取締役に就任。新しいアルミ修理技法などの修理技術開発を担当し、機械・工具メーカーなどと意見を交わした。現在は、車体整備をはじめとした整備関連業界において複数社の顧問を務めると同時に、セミナー講師やコンサルタントとしても活躍中。