年間30万件の事故案件を取りに行く—有償運送許可が整備工場の次の一手になる理由

  • #有償運送許可
ライター写真
八木 正純
年間30万件の事故案件を取りに行く—有償運送許可が整備工場の次の一手になる理由

突然だが、1つの数字をお伝えしたい。

日本国内で年間に発生する交通事故の件数は、ここ数年30万件前後で推移している(厳密に言えば、直近では30万件を若干下回り続けている)。月換算にすると約2.5万件。決して小さくない規模だ。

では、この数字を整備工場の目線で見るとどうなるだろうか。全国には約9.2万軒の認証整備工場があり、単純計算では、3.6工場で1件の事故案件を取り合うことになる。

あなたはこれを、ライバルが多いと感じるか? それとも少ないと感じるか?

私はこれを見た時、少なくとも「確実なチャンスがある」と思った(もちろん被害車両への配慮をお忘れなく)。競合が多いように見えて、実は掘り起こす余地がまだまだある市場だと感じた。足下を見るわけではないが、困りごとを解決したことで始まる付き合い、深まる絆もあるからだ。

とはいえ、手放しで楽観はできない。

AEB(自動緊急ブレーキ)搭載車の普及により、事故件数は今後増えることはなく、むしろ減る傾向に加速すると見るのが自然だ。さらに、保険を使うと翌年の保険料が跳ね上がることを恐れて、軽微な損傷であればあえて修理しないユーザーも増えている。事故整備を取り巻く環境は、一見すると厳しさを増しているように思える。

ところが——ここが興味深いところなのだが——最新の自動車整備白書によると、事故整備の売上高は4年連続で増加しているのだ。

なぜか。事故件数が横ばい(あるいは若干の減少)ながらも売上高が伸びているということは、1件当たりの修理単価が上がっていることを意味する。車両の高度化・電子化が進んだことで、部品代も工賃も、以前とは比べものにならないほど高くなっていると見ることができる。

件数が増えなくても、単価が上がれば市場は広がる。この構造を理解すると、認証工場とて事故整備という分野を避ける理由がないことが見えてくる(自社で鈑金修理できないのであれば外注に出すも良しだ)。ましてや自社顧客が事故に巻き込まれたとなれば、なおさらだ。

ただし、いざ事故整備に乗り出そうと考えた時、最初に立ちはだかる壁がある。

事故現場から事故車両(被害車両も含む)を有償で引き上げるには、原則、緑ナンバーの車載積載車と事業許可が必要だ。ところが、緑ナンバーの取得は、コスト面でも手続き面でも、零細事業者にとってはかなりハードルが高いのが現実である。

「やりたいけれど、現実的じゃない……」と感じる人も多いのではないだろうか。

しかし、実は抜け道——いや、正確には正規の制度——がある。

白ナンバー(自家用ナンバー)の車積載車及び事業者(法人でなくとも可)であっても、路上にある事故車両に限って、有償でロードサービスを行える制度が存在する。それが「事故車等の排除業務に係る有償運送許可」、いわゆる有償運送許可だ。

緑ナンバーの取得という高い壁を越えずとも、この許可さえあれば事故現場からの有償引き上げが可能になる。運べる対象が路上の事故車運べる区間が基本的には都道府県内の制限付きながらも、事故整備という大きな市場へのアクセスが、ぐっと現実的になるのだ。

許可取得のためには、まず国認定の研修実施団体が実施する研修を受ける必要がある。プロトリオスでは、この有償運送許可講習を毎月開催している。詳しい日程については、こちら

市場はまだまだ縮まない。単価は上がっている。そして、参入するための現実的な手段もある。

これだけの条件が揃っているにもかかわらず、事故整備への一歩を踏み出せていない工場が、まだ多く存在しているように感じる。

あなたの工場は今、どんな理由でその一歩を後回しにしているのだろうか?