ディテーリング業の実態と商機 第2回:セラミックは革新的? 儲かる? コーティング業の実情

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MSRweb編集部
ディテーリング業の実態と商機 第2回:セラミックは革新的? 儲かる? コーティング業の実情

 ボディに液剤を塗り込み、水弾きや汚れ防止、光沢アップを図る、ディテーリングの定番メニューであるコーティング。特にここ数年、専業ショップのみならず、周辺事業者やカーオーナーの間でも大きな賑わいを見せたのが「セラミックコーティング」です。SNSでの発信や売り込み営業などで耳にした整備事業者も多いのではないでしょうか。

 日本では、2010年代に海外のコーティングメーカー製品が輸入されて以降、ここ10年程で徐々に存在感を強め、カーオーナーにも一定の認知が広まっています。

 そこでよく目につくのは、「革新的」、「従来のガラスコーティングの進化系」といった液剤サプライヤーの営業トークや施工ショップの宣伝、そしてセラミックコーティングを大々的に掲げる華やかなショップの姿です。中には、1台20万円や30万円、あるいはそれ以上の高額メニューを掲げる専門ショップも出てきました。

 では、セラミックコーティングを導入すれば、誰でもピカピカで高耐久なコーティングを施工でき、儲かるのでしょうか?

 実際の現場を見渡すと、「従来の資材ラインナップの幅が広がった」程度のインパクトに過ぎず、自動車コーティングのビジネス構造そのものは従来と大きく変わっていないという実情も見受けられます。

 弊社が運営する事業者専用ECサイトでも、セラミックコーティングの売れ行きは好調です。アメリカのFEYNLAB(ファインラボ)やポーランドのUltracoat(ウルトラコート)といったブランドは、出品されて以降、常に売れ筋となっています。

高評価を集める「耐久性」と「スリック性」

 成分的には、従来から日本で普及しているガラスコーティングと変わりないものの、特に好評なのが「施工後の仕上がりの品質」です。効果や性能は個別の商品によって異なりますが、以下のポイントについて、使用した施工者から多くの高評価が寄せられています。

■耐久性:単純な長持ち度合いに加え、コーティングを塗布した後に酸性クリーナーなどを使って手入れをしても、撥水性などが劣化しにくい

■スリック性(手触りのスベスベ感): 納車時にカーオーナーが触って実感しやすいポイント。近年は、光沢向上や撥水などに加えて、カーオーナーに喜ばれる重要な要素になってきている

施工しやすいエントリーモデルの増加

 日本にセラミックコーティングが流通し始めた当初は、高価でハイスペックな製品が多く、「塗った後の拭き取りが重くてムラになりやすい」など、「高性能だが施工しにくい」というイメージがありました。

 ただ最近は、海外ブランドでも施工しやすく、価格的にも手を出しやすいエントリー・ミドルクラスの商品が増加しています。個人客をターゲットにした高単価志向のショップから、出張施工やディーラー請負がメインの低〜中単価の施工者まで、幅広い事業者の間で利用者が増えています。

ビジュアル性も高い海外ブランド。左ファインラボ、右ウルトラコート

 このように良好な使い勝手の商品が多いセラミックコーティングですが、これを導入すればコーティングサービスは万全かというと、決してそうではありません。その大きな理由の1つが、「セラミックコーティング=すべてが高性能」というわけではないからです。

成分はガラスコーティングと同じ「二酸化ケイ素」

 そもそも自動車用のセラミックコーティングは、二酸化ケイ素(SiO2)などを主成分とした保護剤です。成分的には日本で以前から流通していたガラスコーティングと同じであり、単純に「英語か日本語か」という商品名称の違いに過ぎません。

 自動車用オイルのような明確な製品スペックで規格分類されているわけではなく、「セラミック=上位」、「ガラス=下位」という分類基準ではないのです。

 そのため、「高価で高性能な国産ガラスコーティング剤」と「安価で低耐久な海外製セラミックコーティング剤」という商品も存在しています。

 専業ショップの中には、「セラミック=高級・高性能」というイメージを活用し、「上位メニューをセラミック、中下位メニューをガラス」と設定しているケースもありますが、一方で現在でもガラスコーティングや、世代的に古いポリマーコーティングを上手く活用して繁盛している専業ショップも決して珍しくありません。

個別商品で見たセラミックコーティングのイメージ

 もう1つ、セラミックコーティングの導入だけでは高いサービス品質を成し得ない理由があります。それは、液剤を塗る前後の工程が依然として極めて重要だからです。

仕上がりを左右する前工程(洗浄・磨き)

 確かに高性能で扱いやすいセラミックコーティング商品もありますが、塗る前の「洗浄」や「磨き」といった下地処理が適切でなければ、キレイに仕上がりませんし、長持ちもしません。

美観を維持する後工程(洗車・メンテナンス)

 また、セラミックコーティングをしっかり施工した場合でも、施工後に時間が経ったり、走行して雨に濡れたりすれば必ず汚れます。撥水性能やスベスベ感も徐々に失われていきます。

 つまり、「進化系」、「革新的」と謳われるセラミックコーティングであっても、塗装面の小キズを除去する研磨技術をはじめとした“前工程”や、定期的な洗車・入庫メンテナンスを顧客に促す“後工程”が不可欠であるという点において、長らく日本で主流だったガラスコーティングと大きく変わらないのです。

 これは、近年ワード的に盛り上がりを見せているグラフェンコーティングやプレウォッシュ(泡洗車)、ドライアイス洗浄といった資機材についても同様の見方ができます。

 「1つ導入すれば事業性を根底から覆すキラー製品」というよりは、「あると少し効率的になる便利アイテム」程度に捉えておいた方が、無駄な支出や過剰な投資を抑えられるかもしれません。

ビジネス工程全般で見たセラミックコートのインパクト

 実際に弊社の元には、セラミックコーティングを導入した施工者から、以下のような施工技術・ノウハウ不足に起因するトラブルの相談が届くこともあります。

 「いくら磨いてもソリッドブラック塗装のシミが除去できない」
 「セラミックコートを施工した後にシミ汚れが付着し、クレーム入庫になった」

煌びやかなイメージの裏にある「成功ショップの条件」

 その一方で、SNSなどでよく目にする「セラミックコーティングの煌びやかなイメージ」を前面に打ち出し、高単価で高収益を実現しているショップも確かに存在します。ただ、そうした成功しているショップをよく観察してみると、以下の要素をしっかりと満たしていることが分かります。

  •  基本的な施工ノウハウ(洗浄・研磨の技術やコート剤に関する深い知識)を持っている
  •  専用ブースや照明、空調など、施工に最適な設備機材を整えている
  •  SNSやウェブサイトを活用した集客に積極的である
  •  店舗の内外観など「見せ方」にこだわっている
  •  施工後の顧客フォローをていねいに行っている

 逆に、セラミックコーティングの導入やSNSでの動画発信といった局所的な取り組みだけで一時的に賑わいを見せても、一過性で終わってしまい、事業が長続きしないケースも見聞きします。

 残念ながら現時点では、セラミックコーティングは単体で儲けられる「打ち出の小槌」とは言えません。

 コーティング事業で持続的な収益を築くためには、結局のところ「コート剤だけでなく、確かな施工技術や充実した設備、各種ノウハウが必要」であり、「そのノウハウのために相応の時間と費用を地道に投資し続ける必要がある」というのが、コーティングビジネスのリアルな現状のようです。

参入障壁の低下と激化する価格競争

 ましてや自動車用コーティング自体、ワックスに代わって台頭してから30年近くが経過し、機材の進化やインターネットによる情報流通も相まって参入障壁は大きく低下しています。

 独学で始める施工者も含めてプレイヤーが増加しており、地域や請負元によっては「1台数千円」という厳しい低単価を迫られるほど、競争環境が激化している現場もあります。

 これらを総合的に勘案すると、地域性や保有リソースの差はあるものの、特に単体事業として見た場合は「外から見える煌びやかなイメージほど、実際の収益性は高くない」というのが昨今のコーティング業界の実態ではないでしょうか。

次の商機となる「PPF」とのセット展開

 加えて現在は、ボディ保護という機能面においてコーティングを有意に上回るペイントプロテクションフィルム(PPF)も広まり始めており、コーティングの在り方は専門事業者にとっても新たな局面を迎えています。

 逆に言えば、PPFをうまく取り入れることができれば、コーティング単体では実現できない収益を上げるカーケア事業となる可能性も秘めています。特にディテーリング事業への新規参入を模索する事業者ほど、セットでの事業化をぜひ検討していただきたいところです。

 次回は、そのPPFについて、顧客ニーズや施工者の動向といった観点からビジネスの実情をご紹介します。

(筆者プロフィール)
長南 明 株式会社CARDE(カーデ)
1994年の創業以来、コーティングやカーフィルムを中心としたディテーリング施工ショップを経営。2019年に事業者専用の資材販売サイト「CARDE」を立ち上げ、事業者向けのノウハウやカーオーナー向けの業界情報などを積極的に発信している。
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