改造車ユーザーの「駆け込み寺」だったのか?闇車検で1億1000万円を売り上げた57歳と58歳の容疑者を逮捕

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古瀬 敏之
改造車ユーザーの「駆け込み寺」だったのか?闇車検で1億1000万円を売り上げた57歳と58歳の容疑者を逮捕

 車両の安全性を担保する根幹であるべき車検制度を悪用した大規模な不正が明らかになった。警視庁は、自動車の検査を行わずに虚偽の保安基準適合証を作成したなどとして、手塚雄皓容疑者(57)と渡邊祐司容疑者(58)を逮捕した。手塚容疑者らは2011年から15年間にわたり約2400台の不正車検に関与し、総額1億1000万円を売り上げていたとみられている。ひとつの交通取り締まりをきっかけに発覚したこの事件は、車検制度の信頼性を根底から揺るがす深刻な問題を浮き彫りにした。

テレ朝NEWS
検査せず改造車の車検通した疑い 男2人逮捕 1億円以上売り上げか

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000545439.html

車両を整備工場に持ち込まずに

 手塚容疑者と渡邊容疑者の容疑は、仲間と共謀し、今年6月から7月の間に依頼を受けた自動車4台について、正規の検査を行わずに虚偽の保安基準適合証を作成したというものである。警視庁の調べによれば、彼らは車検代行業者からの依頼を受け、対象となる車両を整備工場に一切持ち込むことなく、書類上だけで車検を通過させていた。

 この手口は、改造車など、正規の検査では保安基準に適合しない可能性が高い車両を対象に行われていたとみられる。本来、保安基準適合証は、国から認可を受けた指定自動車整備事業者が車両を点検・整備し、保安基準に適合していることを証明する重要な書類である。このプロセスを完全に省略し、虚偽の証明書を発行する行為は、車検制度の根幹を無視した極めて悪質なものだと言える。

若い子が不正改造しているのを潰したくなかった

 長期にわたる大規模な犯行の動機は何だったのか。取り調べに対し、両容疑者は容疑を認めた上で、「若い子が不正改造しているのを潰したくなかった」という趣旨の供述をしている。この言葉は、単なる金銭目的だけではない、彼らなりの歪んだ信念が存在した可能性を示唆している。

 不正改造は法律で禁じられているが、一部の自動車愛好家の間ではカスタム文化として根強く存在している。正規の車検を通すためには、多額の費用をかけて車両を基準適合の状態に戻す必要がある。容疑者らは、そうした改造車ユーザーの「駆け込み寺」としての役割を担うことで、巨大なビジネスを築き上げた。彼らの供述からは、法を犯してでもその文化を擁護しようとする、特異な心理がうかがえる。

15年間で約2400台、1億1000万円の売り上げ

 手塚容疑者による不正は、2011年から15年という長きにわたって続けられていた。その間に扱った車両は約2400台、売り上げは1億1000万円に上るとみられており、これが個人の単発的な犯行ではなく、組織化された「ビジネス」として確立していたことを物語っている。

 この長年の不正が発覚するきっかけとなったのは、意外にも一台のダンプカーだった。去年1月、警視庁第三交通機動隊が不正改造されたダンプカーを取り締まった際、その車両の車検記録から不審な点が浮かび上がった。地道な捜査線上に手塚容疑者らの存在が浮上し、今回の逮捕に至ったのである。日常的な交通取り締まりが、水面下で長年続いていた巨大な不正の糸口を掴んだ形だ。警視庁は、手塚容疑者が渡邊容疑者の関わる会社以外にも、複数の車検代行会社から依頼を受けていたとみて、事件の全容解明を進めている。

制度の信頼回復に向けた課題

 今回の事件は、車検制度が抱える脆弱性を露呈させた。安全確保の最後の砦であるべき制度が、一部の悪意ある業者によって骨抜きにされ、危険な車両が公道を走り続けることを許してしまった。容疑者の供述にあるような「文化の擁護」という動機は、いかなる理由があろうとも、公共の安全を脅かす行為を正当化するものではない。

 今後は、事件の全容解明はもとより、なぜこのような長期間にわたる大規模な不正が見過ごされてきたのか、制度上の欠陥やチェック体制の不備がなかったかを徹底的に検証する必要がある。不正の温床となりうる業者間の癒着構造を断ち切り、制度への信頼を回復するため、業界全体でのコンプライアンス意識の向上と、より実効性のある監督体制の構築が急務となるだろう。