OBD検査の厳格な運用とシステム連携による不正防止
OBD検査では不正行為への厳重な対応が事業者に求められている。また検査未実施での適合証交付を防ぐため、今年中に交付を物理的にブロックするシステム改修も導入予定だ。ごまかしのきかない監視体制へ移行する中、整備事業者に不可欠な検査フローの見直しやアカウント管理の徹底について解説する。
OBD検査時の禁止事項
OBD検査は、電子制御装置が保安基準に適合しているかを判定する制度。車両のコンピューター(ECU)に検査用スキャンツールを直接接続し、自動車技術総合機構のサーバーと通信を行うこと
で客観的に保安基準を満たしているか判断する。
警告灯の点滅が発生しないケースのあるレーンキープアシストや排ガス制御装置システムなどの異常を見つけやすくしているが、あくまでECUが異常を検知してDTCを記録しているかをチェックしているに過ぎない。
そのため、事故などでバンパー交換しセンサーの角度が少しズレていたとしても、断線などがなくECUが「異常なし」と誤認すればOBD検査自体は通過できてしまう。
こういった運用上の事案は先程のモニタリング会合で検討され、改善に向けた方針が示されているが、特に現場において厳しく処分される事案の1つが、特定DTC(故障コード)の隠蔽や改ざん行為である。
車両法第94条の5では、指定工場に対し保安基準適合証の虚偽記載を禁じている。特定DTCが検出さ
れているにもかかわらず、診断機を不当に操作してエラーを消去し、適合として書類を発行する行為が該当する。
また他にも、故障している車両の代わりに正常な車両のOBDデータを送信する、いわゆる「替え玉」行為は、国土交通省の2024年3月の通達により固く禁じられている。OBD検査の結果及び整備内容は、点検整備記録簿に正しく記録する義務があり、これを怠る行為は車両法第49条違反に該当する。
取り扱う情報の管理について
検査用スキャンツールやシステムの運用に関する情報セキュリティー管理の徹底も急務である。退職者のアカウントを放置することや、無資格者による最終判定を行うことは禁止されている。
IDや電子証明書の使い回し、自社IDの貸与や他人のIDを利用するなりすまし行為、ID等不正使用のほう助は、不正アクセス禁止法違反にも該当しうる。
モニタリング会合においても、コンプライアンスに関わるシステムについては今後の対策が報告されている。現在、指定工場において「OBD検査対象車が、OBD検査未実施の状態でも、電子保安基準適合証の交付や車検証の更新ができてしまう」というシステム上の課題が存在しており、意図的あるいは過失によりOBD検査をすり抜けて車検が通りえる状態にあった。
国土交通省はこれに対し、今年中にシステム連携を改修し、OBD検査未実施のままでは適合証を交付できないよう物理的にブロックする対策を予定していると発表した。さらに、同会合では新たに「緊急時車線維持装置(ELKS)」がOBD検査の対象装置として追加されることも発表されている。
検査対象が高度・複雑化する中で、正しい知識のアップデートは欠かせない。
OBD 検査未実施での適合証発行を防ぐシステム改修が予定されている事実は、整備事業者に対して「ごまかしが一切通用しない監視体制」が敷かれつつあることを示しているだろう。現場の検査員が多忙を極める中で、意図せず検査ステップを飛ばしてしまうミスも今後は重大な法令違反となってしまう。
自社内の検査フローを今一度見直し、OBD 検査の実施ステータスを確実に再確認する工程を組み込む必要がある。
また、アカウントの権限管理を行い、退職者の速やかなID 削除と検査員ごとのログイン管理を徹底し、デジタル上でのなりすましや替え玉が物理的に不可能な業務環境を整備することが、自社防衛の最前線となる。
→特集③に続く
