特集 OBD検査と整備事業者のコンプライアンス 車両法と道交法にどう向き合うか?④

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木下 慶亮
特集 OBD検査と整備事業者のコンプライアンス 車両法と道交法にどう向き合うか?④

中古車販売及び車検時の注意点

 中古車販売や車検時においても、コンプライアンス意識を持った対応が不可欠である。車検時においては、指定工場ではOBD車検対象車に対するOBD検査の実施が法的要件となる。認証工場においても、点検整備した車両に対してOBD確認を行うことは実務上の義務として位置付けられる動きが活発化して
いる。

 また、中古車販売時に「12ヵ月点検整備付」として車両を販売する場合は、法令に基づく点検項目を正しく実施し、点検整備記録簿に記載しなくてはならない。一方で、点検・整備を行わないで査を完了させる車両法上の法的義務は発生しない。

 しかしながら対象車両の場合、車検証にOBD検査対象の記載がある車をOBDに異常がないことを確認
せずに販売する場合は、その確認未実施の旨を購入者に事前に知らせておかなくては販売側がリスクを負いかねない。

 取材時には、こういったケースの場合、あらかじめ購入予定者に車の状態をすべて知らせておくことで、整備のアフターメンテナンスパックのような形で自社のサービスの一環として提案し、これをチャンスとして活用している店舗もあった。

 中古車販売を兼業する事業者は、現状販売におけるリスクヘッジには対策を講じたほうが良いだろう。

 車検証にOBD対象と記載されている以上、納車後にセンサー異常が発生すれば、事前説明をしていたとしても顧客からの信用は下がってしまう。すべての販売車両に対して事前のDTCスキャンを自主基準として義務付けることが最良となる。

 現在、認証工場が持ち込み検査前にスキャンツールでOBD 確認を行い、あらかじめ適合を確認しておくことで、車検コースでのOBD 検査を省略できる制度が設けられている。

 検査ラインでの無用な待機時間を削減し、工場全体の生産性を向上させるためには、こういった制度を活用するか、自社内で事前にOBD 確認を完結させるプロセスを定着させ、制度の恩恵を積極的に取りに行く経営判断が求められる。

OBD点検/検査/確認の比較表 出典:国土交通省

コンプライアンスを担保する標準作業フローと情報管理の徹底を

 ここまで述べてきたような行政処分や法的リスクを回避するためには、整備事業者が国土交通省の制度に準拠した標準作業フローを現場に徹底させることが必要だ。作業者ごとに異なる感覚的な判断を極力減らし、システムに基づいたルールを定着させることが最大の防衛策となる。

 こういった対策を社内に定着させている工場を取材した際の作業フローを紹介する。

 当たり前の作業フローであるが、この作業を現場すべての作業者が自身のIDで行う。社内チェックとして抜き打ちのコンプライアンス、現場確認を外部に委託して実施。結果をフィードバックすることで社内全体のコンプライアンス意識を維持している。

 このフローについては、モニタリング会合でもOBD検査時にPDF出力される帳票について、検査実施者の氏名が帳簿に記載されるようシステムを改修する方針が示された。これにより「誰が最終的な適合判断を下したのか」という責任の所在がデジタルデータとして明確に記録されることになる。無資格者による検査やIDの使い回しに対する強力な抑止力として機能するだろう。

 また、データリンクコネクタ(DLC)にドライブレコーダー等の外部装置が接続されていると適正なOBD検査が実施できないため、検査前の取り外し措置と顧客への事前説明を徹底する必要がある。あらかじめカーオーナーに取り外してから車両を持ち込んでもらう手もあるだろう。

 OBD検査のシステム利用においては、車両のVIN(車台番号)や走行距離などの機密データを取り扱うため、顧客情報の漏洩防止策を講じることが義務付けられている。スキャンツールの利用目的を遵守し、認証及び指定工場はデータ保存だけでなくスキャンツールの保管に関しても関係者以外の無断持ち出しができないようにしなくてはいけない。

 検査帳票への「検査実施者氏名の記載」がシステム化されることは、各整備士個人の責任がより重要視されることを意味する。これまで工場では暗黙の了解で行われていた可能性のあるアカウントの共有や有資格者不在時の代行検査は、システム上の証拠として残り、即座に行政処分の対象となる危険性を孕んでいる。

 事業者は、標準作業フローを壁に掲示するだけでなく、DLCポートの確認から判定結果の保存に至るまでの全工程を、作業者が責任を持って完結できる教育体制と、それを監視・支援する仕組みを構築しなければならない。

 高度化する自動車整備において、事業者は公的指針に基づいた厳密な情報管理体制を構築し、透明性の高い整備を実践することこそが、生き残る唯一の道である。

 次ページには、コンプライアンスについての提言として識者からのコメントをまとめた。参考にしてほしい。

特集⑤に続く