中谷宗平氏
安全自動車 代表取締役社長
1918年に自動車及び自動車部品の輸入会社として創業。戦後、自動車整備機器事業にも進出し、わが国初のブレーキ・スピード複合試験機を開発するなど、技術力も着実に進化。新しい時代のニーズをつかみ、質の高いサービスを提供し続け、2年後には創業110周年を迎える。
先日開催された安全自動車のサービス技能コンクール(→関連記事)で、同社の中谷宗平社長に話を聞く機会を得た。同日開催のコンクールから、2025年度の実績から2026年度の展望まで、話を聞いた。
技能コンクールは全員参加のための重要イベント
――コンクールについて、選手の準備期間はどれくらい取っているのか
出場選手は3月末ぐらいに決めている。なかなか日々集まって練習はできないので、日時を決めて集合して練習するなどの企画をしているところもあった。それは監督の手腕だ。
名古屋支店や福岡支店では勉強会や壮行会までして選手を送り出していて、そういった様子が社内SNSでアップされている。もちろん、アップしない支店もあるので、すべてを把握しているわけではないが。
このイベントは、出場するスタッフだけでなく、送り出している支店もみんな一生懸命。選手を送り出すと、そのエリアのサービス対応が競技当日や練習の時、手薄になるので、残っている人たちが頑張って顧客対応をしてくれている。支店全体で取り組んでいただいていると感じている。
――コンクールにおいて、安全管理や確実な作業手順はどのように評価しているのか
今回、団体リフトは3名で競技するので、お互いが常に何か言う時の声出しなどが評点のポイントになっている。周囲に観戦者や応援者もいるので、物が飛んでいったりすることがないよう、「今から何々をします」と声に出すようことも評果点にしている。
また、6月に事前の勉強会も実施した。そこである程度の商品を使って、今回の競技内容を説明し、通常の日々の活動以上に安全面に配慮していただきたいということも伝えている。
――コンクールの企画や運営には費用や工数がかかると思うが、それを補って余りある経営上のリターン、投資対効果は
そもそも当社はあまり数字的なことを求めていない。売り上げ目標や利益目標にも、私はそんなにこだわっていない。
このイベントには2つの大きな目的がある。1つは、社員であるサービススタッフと、我々の仲間であるSS会(=同社指定のサービスステーション・サービスショップの加盟する組織)を含めて、支店が1つになること、そして安全グループが1つになること。
もう1つは、人間として大切なことだが、目標に向かって一生懸命取り組む、そしてそれをみんなで一緒に取り組むという姿勢、うちの会社の考え方を体現しているイベントだということ。「みんなで一緒に目標に向かって頑張る」、この数字ではないところに我々は価値観を持っている。
数字はあくまで顧客の評価である。我々は、目標に向かって一生懸命頑張ること、そしてみんなで一緒にやることを大事にしている会社だ。
時代に合わせた柔軟な対応を接客・人材確保に活かす
――技術が変わり、顧客対応も難しくなる中、カスタマーハラスメントなどへの対応の勉強はしているか
特にしてはいないし、そもそもカスタマーハラスメントという報告はあまり聞かない。ただ、顧客に対する報告や説明は、しっかりしないと理解してもらえないことがかなりあると把握している。たとえばディーラーの場合、決済権が店舗ではなくて本社にある場合、紙の見積もりだけを送っても費用感がなかなか伝わらない。
今回のコンクールも現場さながらに行っているが、リフト点検などはタブレットを使って点検票に入力し、そこで不具合の写真を撮って添付し、顧客(本社)に見積書を送って決済いただくケースもある。そういった提案力も求められていると感じており、そのようなことができる環境を今、全国に構築している。
昔は紙の点検票を書いて出せばよかったが、そこは時代に応じて変わってきている。自動車の車検もOBD検査など変わってきているように、我々も顧客であるディーラーと同じデジタル環境を作っているということだ。
――昨今、整備士不足と言われているが、メンテナンスを担当するサービススタッフの確保はどのように行っているか
他の業界と同じように厳しい状況だが、何とか現状維持はできているというところ。サービススタッフがいない営業所も少しずつ減ってきており、埋めることができていると思う。
サービススタッフは、必ずしも整備士資格を持っているわけではない。人によっては持っているかもしれないが、必須ではない。極論を言えば、理系でなく文系のスタッフもいる。入社してから適性を見て判断するので、必ずしも理系に限っていない。
――以前、この場で話のあった「サービスから始まる循環プロセス」の構築について、この2年間での進捗は?
できつつあるところと、まだまだできていないところがある。分かりやすいのはリフト点検で、それをきちんと修理提案につなげたり、代替提案に動けたりするかどうかだ。
肌感覚になるが、2年前では点検してもタイムリーに見積もりを出すことができず、需要を創ることができなかったところが、少しずつできるようになってきていると感じる。リフトの納期が伸びていることもあるが、リフト本体+サービスの需要も増えてきている拠点が多い。
そうした成功体験を積み重ねることによって、以前よりも点検後の案件創出が各支店・拠点でできる好循環が生まれている。
業界のため独立支援制度も検討
――サービススタッフがキャリアを積んだ後の独立支援制度のようなものを検討されていると聞いたが
独立支援制度は、まだ制度化できておらず、時期も未定だが、実際に独立する者がいて、今年も2人決まっている。
サービススタッフが独立することは、悪いことではない。逆に、仲間としてちゃんと業界に残ってくれるのだから。社員の成長が我々の願いでもあるので、独立するという気持ちを持ち、実践することは良いことだと考えている。これはSS会の高齢化(防止)対策の1つの方法にもなる。
――独立したサービススタッフは、これまでも結構いるのか
独立の頻度はその時々で変わるが、SS会に登録している50~60社のうち、4分の1ぐらいは元社員だ。退職してもサービス面ではつながっていて、変わらず協力してもらっている。ほぼ社員扱いのような形で、支店の飲み会などにも参加している。そうしたコミュニケーション作りは支店によってしっかり行っている。
2025年度は減収増益、売上高5%減もサービス活動で減少に歯止め
――2025年度の実績について2024年度と比較してどうだったのか、また、どのカテゴリーの機器が実績に影響したか
今日はサービス技能コンクールなので、アフターマーケット事業、国内の自動車整備工場向けの事業では、2025年度は前年度比で減収増益。売上高は5%減だが、売上総利益は横ばいだった。商品構成や売り上げ構成比は、業界全体の流れとして見れば、全般的に同じだったのではないかと思う。
減収の要因は、機器の納品が間に合っていないためで、台数ベースでは少し落ちている。ただ、価格改定については、顧客にしっかりと説明する営業活動やサービス活動ができており、配送費や送料など、顧客に請求すべき経費をきちんと転嫁できた点では、利益の落ち込みにはつながらなかった。
そうした中でも、サービス費は前年度から約5%アップしている。物が入らない分、(物が入るまでの間)しっかり顧客にメンテナンスを提案できたという側面もある。
――社内の売上におけるアフターサービスの位置づけと、2026年度に向けてサービスの売上や利益をさらに上げるために必要だと考えていることは何か
サービス事業は、いきなり売り上げがぐっと上がるわけではなく、じわじわと上げていければいいと考えている。我々を選んでいただける顧客が少しずつ増えてきているので、普段の対応と技術対応を考えると、結果的にサービス売り上げ、収益が本当に少しずつでも増えてほしい。具体的な目標は持っていないが、そのように考えている。
リフトの納期がなかなか思うようにいかない状況だ。すなわちリフトが壊れても、すぐに入れ替えるための製品を提供できない。となると、顧客はリフトを簡単に代替するわけにはいかないため、その代わりにきちんと点検・メンテナンスしていかなければならない。
サービスの売り上げ構成比ではリフトが一番高い(売り上げの約3割を占める)ので、そこは売上高・利益として伸ばしていきたいと考えている。そのため、予防整備を含めて、「日々、安心安全に使っていただかないと、いざ壊れても対応できない」とのアナウンスを込めて営業活動をしている。今年度も継続してまいりたい。