三菱自動車が10月29日に国内仕様を発表した新型パジェロが、12月17日の販売開始を前にして、驚異的な事前予約を記録している。その台数は約5500台を超え、市場の期待を大きく上回るものとなった。価格は619万3000円から795万800円に設定された4つのグレード展開であるが、注目すべきはその内訳である。予約者の約7割が最上級グレード「スーパーエクシード」を選択し、さらに約8割が他社ブランドからの乗り換えだという。この事実は、単なる新型車の登場に留まらない、特別な意味を持つ現象と言えるだろう。
台数より内訳の方に目が止まった
事前予約約5500台という数字だけでも、7年間国内市場からその名が消えていた車種の復活劇としては十分なインパクトがある。しかし、専門家や熱心なファンが注目するのは、その数字の背後にある質的な構成である。予約の実に7割が、価格795万800円の最上級グレードに集中しているのだ。これは、「とりあえず新型を」といった消極的な選択ではなく、「どうせパジェロに乗るなら最高のものを」という、明確で熱量の高い意志を持った顧客が大多数を占めていることを示唆している。
新型パジェロは、伝統の悪路走破性を継承しつつ、大型ディスプレイや高級レザー、ヤマハ製プレミアムオーディオなどを備えたラグジュアリーSUVへと大きく舵を切った。この進化が、高価格帯であっても妥協を許さないユーザー層の心を掴んだことは間違いない。彼らはパジェロを単なる移動手段としてではなく、自らのライフスタイルを体現する存在として捉え、その価値に相応しい対価を支払うことを厭わないのである。

他社の車を降りてやって来る
もう一つの驚くべきデータは、予約者の約8割が他社からの乗り換えであるという点だ。国内市場から7年間も姿を消していたにもかかわらず、そのブランド名は色褪せることなく、むしろ競合他社の顧客を積極的に引き寄せるほどの強い磁力を放っている。空白期間があったからこそ、ファンの間では「パジェロ待望論」が醸成され、その復活が他社ユーザーにとって魅力的な選択肢として映った可能性が考えられる。
この現象は、自動車のブランド、特に歴史と実績に裏打ちされた「車名」が持つ無形の資産価値を改めて浮き彫りにした。パジェロという名は、たとえショールームから姿を消している間も、人々の記憶の中で生き続け、その走破性や信頼性といったブランドイメージを維持し続けていたのである。今回の結果は、そのブランド力が現実の購買行動へと結実した証明に他ならない。
車名って、売っていない間もずっと仕事をしてるんだな
この熱狂的な支持を、三菱自動車の販売網という側面から見ると、その異質さがさらに際立つ。三菱自動車の国内店舗数は約500拠点であるのに対し、例えば最大手のトヨタは約4700拠点以上を展開している。単純計算すれば、1店舗あたり10台以上の予約が入っていることになり、これは販売体制の規模を考えると驚異的な数字である。物理的なディーラー網の少なさというハンディキャップを、パジェロという強力なブランド力が凌駕した格好だ。
今回のパジェロの成功は、単に一台の新型車が市場に受け入れられたという話ではない。それは、長年にわたって築き上げられたブランドの信頼とファンの熱意が、7年という空白期間を経てなお、いかに強力な求心力を持ち得るかを示した稀有な事例である。三菱自動車にとって、この熱狂的な支持をいかにして持続させ、ブランド全体の価値向上へと繋げていくかが、今後の重要な課題となるだろう。パジェロの復活が、同社の国内市場における新たな躍進の起点となるか、その動向から目が離せない。
三菱10年10万kmストーリー パジェロ編
https://www.mitsubishi-motors.co.jp/special/10year100kkm/story94.html