イマドキの整備学生のリアル 若手整備士はどこへ MSR2026年10月号特集③

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渥美 紅里
イマドキの整備学生のリアル 若手整備士はどこへ MSR2026年10月号特集③

専業工場が取り組むべき「やりがい」と「働きやすさ」の改革

29.3%。これは、日本の人口全体に占める65歳以上の割合だ。1970年の時点では7%だったが、1994年に14%を超え、現在も年々少子高齢化が加速している(2024年 10月の内閣府のデータより)。

そんな現代の日本では、あらゆる業界で人材獲得競争も深刻化している。中でも、技術者の高齢化が問題となっている自動車整備業界が、技術を継承し、事業を存続させていくためには、次世代を担う若手整備士の確保は必須だ。

今回のアンケート結果からは、現代の整備専門学校の学生たちが抱く企業選びのシビアな基準が浮き彫りになった。彼らが大手ディーラーを圧倒的に支持する背景には、生活基盤を支える「給与」や「年間休日」といった明確な基準が存在する。

若者たちは本業界に対する「過酷な環境で安月給」というイメージに敏感であり、就職先選びにおいて非常に慎重になっているのだ。

働きやすさと働きがいを示したマトリックスの通り、資本力に劣る専業工場が今すぐ給与を跳ね上げ「働きやすさ」を整えるのは難しい。だからこそ、今すぐにでも取り組むことが可能な、「やりがい」の創出が必要なのだ。

たとえば「キャリアパスの明確化」。これは莫大なコストをかけずとも、経営者の意識と社内の仕組み作り次第で実現できる。

会社説明会で「入社3年目でこの技術が身につき、5年目には後輩指導を担当、将来的には工場長も任せたい」といった具体的なモデルケースを提示するだけでも、学生の安心感は格段に上がる。

また、評価制度を透明化し、定期的な面談を実施して「会社が求めていること」と「本 人 の 認識」のズレを防ぐこと。このような取り組みでも若者は「正当に評価され、見守られている」と実感でき、早期離職を防ぐ強力な「やりがい」へと直結する。

さらに「未来ある業界である」ということも自信を持って伝えるべきだ。電動化や自動運転化が進んでも、車をメンテナンスする仕事は当分なくならない。

「特定のメーカーに依存せず、あらゆる車を直せる一生ものの技術が身につく」という事実は、メーカー特化のディーラーにはない専業工場ならではの強力な武器である。

このような「やりがい」で若者を惹きつけた後は、彼らが長く定着できるよう「働きやすさ」を整えていくフェーズだ。アンケートで明らかになった通り、酷暑を気合で乗り切る時代は完全に終わった。

スポットクーラーの導入や休憩室の整備、清潔なトイレといった環境改善は、「従業員を大切にしている」というメッセージにもなる。

また、休日数の充実も必須だ。そのためには、ただ休みを増やすだけでなく、台当たり単価を上げ、少ない台数や仕事量でもしっかりと利益が出る仕組みを作るなど、経営の工夫や改革が必要となる。

その取り組みによって生み出された時間的・金銭的な余裕を、休日の増加やエアコンの設置といった「働きやすさ」への投資に還元していく。これこそが目指すべき理想のサイクルではないだろうか。

「せっかく育てても持っていかれる」と嘆く前に、まずは自社の強みを一つずつ整理し、それを「やりがい」として言語化、発信してみてほしい。専業工場には、大企業では味わえない「成長を実感できる環境」や「密接なコミュニケーションによって生まれる温かみ」が存在するはずだ。

若者たちのシビアな要求に真摯に向き合い、同時に専業工場ならではのワクワクする未来を提示すること。それこそが人材流出を食い止め、次世代を担う若者を迎え入れるための、力強い業界改善のヒントとなる。

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