国土交通省は6月30日、「交通事故のない社会を目指した今後の車両安全のあり方について」の報告書を公表。これは自動運転やAIなど先進技術の活用を中心に据え、2030年までに車両安全対策による交通事故死者数と重傷者数の大幅削減を目指すもの。本報告書は交通政策審議会自動車部会の技術安全ワーキンググループでの審議を経て作成されたものであり、同省はこの報告書に基づき、車両安全対策の深化を図るとしている。
近年、事故の減少率が低下
高齢運転者と交通弱者への対策が急務
交通事故死者数はピーク時の1/6以下まで減少してきたが、近年の減少率は低下傾向。2025年の交通事故死者数は2,547人であり、「第11次交通安全基本計画」が掲げた2025年までに2,000人以下という目標達成には至らなかった。事故の特徴として、死亡事故の96%は運転者の違反に起因している。また、死亡事故の34%は高齢運転者(65歳以上)によるもので、高齢運転者の事故は増加傾向にあるという。さらに、死者数の49%が歩行者や自転車利用者など‟交通弱者”であり、子どもの事故も依然として発生し続けている。
削減目標は2020年比で死者数1,200人、重傷者数は11,000人
今回の報告書が維持する目標値は以下の通り。
- 目標年:2030年(令和12年)
- 車両安全対策により、2020年(令和2年)比で、30日以内交通事故死者数を1,200人削減
- 同じく重傷者数を11,000人削減
また長期的な方針として、2035年頃までに新型車による死亡事故(自動車技術により対策が可能なものに限る)のゼロを目指すとしている。
4つの重点施策、L2++車両の性能評価制度を新設
報告書が示す主要施策は以下の4点に整理されるだろう。
・AIを活用した高度な運転支援機能を有する車両の性能評価制度の創設
いわゆる「L2++車両」(AIを活用し一般道を含め自律走行が可能な高度な運転自動化システム等を搭載した車両で、運転者が周辺監視を行いつつ縦・横方向の運転支援機能を有するもの)を対象とした性能評価制度を新設。自動車ユーザーが安全性の高いシステムを搭載した車両を選択しやすい環境を整備し、社会受容性の向上と普及を支援することが狙い。
・安全運転サポート車(Ver 2.0)の推進
現行の安全運転サポート車に搭載される装置の高度化を進めるとともに、高齢運転者の事故削減に貢献しうる装置を新たに追加する。ドライバーモニタリングシステムがその一例として挙げられていた。
・先読み運転・V2X連携による運転支援技術の開発促進
先読み運転機能のほか、自車と道路インフラや他の交通参加者などとの通信技術(V2X)を活用した運転支援機能について技術開発の促進策等を検討。歩行者、自転車等の交通弱者保護や、子どもの飛び出しへの対応にも寄与する技術として位置付けられている。
・大型車・二輪車・小型モビリティーの安全対策
致死率の高い大型車や二輪車については、交差点右左折時の事故対策やトラック車輪脱落防止、二輪車用先進運転支援技術(ARAS)の普及を促進。今後増加が見込まれる小型モビリティーについては、事故実態や最新技術を踏まえた基準の策定及び見直しと、監督官庁や機関が製品を法令や安全基準に沿ったものかを継続的に監視・調査する活動への強化・拡充が盛り込まれた。
整備業界にも関わる使用過程車対策を明記
報告書には、自動車整備業界に直接関わる「使用過程車対策」も重点項目として明記されている。また、外国人運転者を含むあらゆるユーザーへの正しい情報の伝達・交通安全思想の普及徹底、救命体制の整備や飲酒運転対策など他の道路交通安全施策との連携についても方針として示された。国交省は今後、ASV推進計画・自動車アセスメント・基準の3施策を連携させ、事故実態データ(EDRデータ等のミクロデータを含む)に基づく車両安全対策の推進と、国際基準調和活動を進めていく方針である。
「2030年までに死者数1,200人削減」という目標は優れた新車を開発するだけでは達成しにくい。ハンズオフ走行などの高度な運転支援システムを搭載したL2++や車と車・道路と車の通信であるV2Xといった最新技術が、使用過程において新車時と同等の性能を発揮し続けるためのインフラとして、自動車整備事業者の役割は現在の体制では必須だろう。
1990年代後半のABSやSRSエアバッグ、そして初期のOBD普及期に起きた整備対応への遅れが再度起こらないよう対策を進めてもらいたい。