自動車整備業の廃業が過去最多 現実味を帯び始めた「整備難民」で溢れかえる未来

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長谷川 明憲
自動車整備業の廃業が過去最多 現実味を帯び始めた「整備難民」で溢れかえる未来

帝国データバンクは2026年7月8日、「自動車整備業」における倒産・休廃業解散の発生状況に関する調査結果を発表した。2026年上半期(1月〜6月)に市場から撤退した自動車整備事業者は合計295件となり、半期ベースで過去最多を記録した。

内訳をみると、休廃業・解散(廃業)が259件で、前年同期(186件)から約4割増加し、過去最多を更新した。倒産(負債1,000万円以上、法的整理)は36件だった。

2025年同期の倒産・休廃業解散合計件数は226件であり、今回の295件はこれを大きく上回る。

自動車整備」の倒産・休廃業件数
出典:帝国データバンク 「自動車整備」の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)より

2026年上半期に倒産・休廃業解散した事業者のうち、資本金が判明した279件を資本金規模別にみると、「1,000万円未満」が115件で全体の約4割を占め最も多かった。

個人事業主を含む「100万円未満」も107件(38.4%)に上り、両者を合わせると小規模事業者の撤退が全体の約8割を占め、「1,000万円以上」は57件にとどまった。

自動車整備業を取り巻く経営環境は厳しさを増しており、主な要因は次の通り。

  • パーツ類・オイル・油脂類・塗料など整備資材の価格上昇
  • 車検や一般整備の汎用化が進んだことによる競合の増加(ディーラー、カー用品店、車検専門店)
  • 物価高を背景とした消費者の節約志向による整備需要の抑制
  • ベテランスタッフの高齢化による退職と、整備士を目指す若者の減少
  • 電動化・先進運転支援システム(ADAS)など車の電子化・高度化への対応困難

一方、損保会社から支払われる自動車修理費用が全体的に上昇したことで、工賃の値上げや収益改善に成功した事業者も一部にみられる。ディーラーが受けきれない整備案件を獲得したり、エイミング作業などの電子制御装置整備に対応した高度作業を手掛けたりする中堅・大手事業者では、採算を確保できているケースもある。

家族経営などの零細規模では、新技術に対応した人材・設備が不足しているケースが多い。こうした事業者は保険会社や顧客への値上げ交渉・単価アップを満足に行えず、採算割れに陥りやすい構造を抱えている。

整備作業の難易度が上がる中、設備面・人材面で対応可能な中堅・大手への集約が進み、小規模整備工場の退出は今後も続くとみられる。

また深刻なのは、ランプ切れなど軽整備においても「人手が足りず手が回らない」との声が上がっている点だ。カー用品店やディーラーでは長期にわたる整備待ちを余儀なくされるケースも増えている。

自動車整備事業者の撤退が加速する中、車の安全性を担保する地域インフラをどう維持するかの議論は待ったなしの状況となっている。

ちょうど1ヵ月前、コラム記事として【車検・整備難民の危機】2.9万軒のゾンビ工場とディーラー2ヵ月待ちの実態。業界が直面するインフラ崩壊の真実を執筆した。まさに今回の帝国データバンクのレポートは、筆者が警鐘を鳴らした未来が近づいていることを予感させる調査結果となった。

国の基幹産業である自動車産業を足下で支えているのがまさに自動車整備業界であり、汗水を垂らし自身の知識と技能で車両を点検・整備する自動車整備士はエッセンシャルワーカーと呼ぶに相応しい職種だ。決してボランティアで車両を点検・整備しているわけではなく、正当な対価を受け取らなければ事業として成り立たないのは自明の理である。

今年1月に施行された「取適法」、そして公正取引委員会・中小企業庁が公表する「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」、この2つは自動車整備工場を含めた中小・零細企業を守るための日本政府から発せられた重要なメッセージである。これらを充分に理解し、適正な取引による正当な対価を享受できる体制を早急に築いてもらいたい。

社会インフラの一翼を担う自動車整備業の衰退は、筆者が危惧する「整備難民」の大量発生を生みかねず、休廃業件数の増加という残酷な事実がより現実味を帯びさせる。今こそ業界全体で課題を見つめ直し、安全・安心な車社会の実現のために議論を深めなければならないだろう。

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