第7期ASV推進計画の成果報告会を開催、自動運転の高度化に向けた先進安全技術の検討成果を発表

  • #ASV
  • #交通事故
  • #国土交通省
ライター写真
古瀬 敏之
第7期ASV推進計画の成果報告会を開催、自動運転の高度化に向けた先進安全技術の検討成果を発表

 2021年度から5カ年計画で進められてきた「第7期先進安全自動車(ASV)推進計画」の成果報告会が、東京都千代田区の日比谷コンベンションホールで開催された。本計画は、先進技術を用いてドライバーの安全運転を支援するASVの開発・実用化・普及を促進する官民一体のプロジェクトである。報告会では、国土交通省や各検討会の代表者が登壇し、自動運転の高度化に向けた5年間の取り組みとその成果を報告した。

ドライバーの操作にシステムの操作を優先させる

 まず主催者を代表し、国土交通省物流・自動車局次長の猪股博之氏が挨拶に立った。猪股氏は、自動車の安全性能向上などにより交通事故は着実に減少してきた一方で、近年はその減少傾向が緩やかになっていると指摘。交通事故のさらなる削減に向け、自動運転技術や先進安全技術が果たす役割は大きいと述べた。

 第7期ASV推進計画は「自動運転の高度化に向けたASVのさらなる推進」を基本テーマに掲げ、官民一体で検討を進めてきた。猪股氏は、その成果が今後の車両安全対策の推進に資するものであり、交通事故のさらなる削減に大きく貢献するものと期待を寄せた。また、今年度からスタートする第8期ASV推進計画においても、ASV技術のさらなる発展と社会実装に向けた取り組みを一層推進していく考えを示した。

国土交通省物流・自動車局次長の猪股博之氏

 続いて、第7期先進安全自動車推進検討会の座長を務める須田義大氏(東京工科大学)が、計画の全体像を報告した。ASVプロジェクトが始まった1991年以降、衝突被害軽減ブレーキをはじめとするASV技術の普及により、交通事故死者数は激減した。

 一方で、従来のASVはドライバー支援が基本であり、ドライバーが意識を失うなど意図しない操作をした場合、システムが介入せずに事故に至るケースが課題として指摘されていた。このため第7期では、ドライバーが意図しない操作をした際にはシステムが介入して車両を制御する「ドライバーの操作に対してシステムの操作を優先させる安全技術のあり方」を大きな検討項目の一つに据えた。

東京工科大学の須田義大教授

誰もが使用する技術となったASVの正しい理解を

 先進安全技術普及分科会の分科会長である河合英直氏からは、普及啓発活動に関する報告が行われた。衝突被害軽減ブレーキの新車搭載率がほぼ100%に達するなど、ASV技術は一部の先進的なユーザーだけでなく、初心者から高齢者まで誰もが使用する技術へと変化した。

 この変化を踏まえ、分科会では一般ユーザーの過信防止などを目的に、正しい理解を促すための効果的な普及戦略を検討。全国の免許保有者1万人を対象とした大規模アンケートを実施し、関心度や志向性に応じたターゲット層を設定した。その上で、特設ウェブサイト「DRIVE SAFE」の開設や、ジャパンモビリティショーへの体験型コンテンツの出展など、多様なチャネルを通じて情報発信と理解促進に努めてきた。河合氏は今後の課題として、ASV技術の認知が十分でない層へのアプローチや、今後登場するであろうより高度な運転支援技術の過信防止に向けた啓発活動の重要性を挙げた。

先進安全技術普及分科会の河合英直分科会長

システムが最終決定権を行使する安全技術へ

 将来技術実用化分科会の活動については、分科会長の稲垣敏之氏(筑波大学)がオンラインで報告した。この分科会では、システムが主導する具体的な安全技術について、3つのワーキンググループで検討が進められた。

 第6期までのASVでは最終的な意思決定権はドライバーにあったが、第7期では事故を防ぐため、システムが最終決定権を行使する「介入」という考え方を導入した。具体的には、ドライバーモニタリングと連動した前方不注意への対応、はみ出し事故防止システム、有車速時のペダル踏み間違い対応システムなどについて、システムが弱い介入(車速抑制など)や強い介入(自動での減速制御など)を行うための技術的要件が検討された。

 また、ドライバー異常時対応システム(EDSS)については、車外への報知性を高めるための実証実験を実施。前照灯や制動灯、ハザードランプを従来にない早い周期で点滅させる新たな方式を開発し、後続車や歩行者が異常を早期に認知できるという高い効果を確認した。さらに、自動運転車が備えるべき安全水準を探るため、人間ドライバーの運転行動や過去の事故判例、数理モデルを用いた解析を行い、自動運転の設計における課題を多角的に考察した。

筑波大学の稲垣敏之教授

 

交通事故のない社会の実現を目指して

 

 第7期の成果は、ドライバー支援からシステム主導へと、車両安全のあり方を一歩先へ進めるものとなった。報告された各技術や検討結果は、今年度から始まる第8期ASV推進計画へと引き継がれ、さらなる深化が図られる。政府が掲げる「令和12年度までに交通事故死者数を1,900人以下」という目標、そしてその先にある「世界一安全な道路交通、ひいては交通事故のない社会の実現」に向け、ASVの進化はこれからも続く。