5月14~16日の3日間、パシフィコ横浜で開催されるジャパントラックショー2026。ここでは、トラックメーカーに関する出展内容を紹介する。
いすゞ自動車
EVトラック「エルフEV」は、EVだからといって特別なデザインを採用するのではなく、ディーゼル車と全く変わらない作りをコンセプトとしている。これは、働く車としてドライバーが普段から使い慣れている操作性や車格を維持することで、移行に伴う不便さをなくすための設計思想である。内装や車幅、荷室の高さに至るまで、従来の車両との差異をなくし、「変わらない使い勝手」を実現している。

EV特有の急な加速による荷崩れを防ぐため、スイッチ一つで緩やかな加速と回生ブレーキを効かせる「エコモード」を搭載。また、1分1秒を争う運送業務において、キーオンから瞬時に発進できる立ち上がりの速さも大きな利点だ。さらに、ドライバーがシートベルトを外すと自動的にサイドブレーキが作動する安全機能も搭載し、意図せぬ事故を未然に防ぐ。
バッテリーの配置にも工夫が見られる。多くのEVトラックがタイヤの間にバッテリーを配置し車幅が広がるのに対し、LFDVは車体中央に集約することで車幅を維持。これにより、従来走行できていた狭い道への対応力や、車検ランクの上昇に伴うコスト増を回避している。数センチの荷台高の変化がドライバーの身体的負担に繋がることも考慮し、細部にわたって「変わらないこと」にこだわった設計となっている。
UDトラックス
大型トラック「クオン」の最新モデルでは、アジア初公開となる自動連結カプラーが披露された。従来、トレーラーの連結・切り離し作業には、ホースの着脱やランディングギアの操作、カプラーのロック確認など、ドライバーが車両から降りて行う多くの手順が必要だった。
この自動連結システムは、これらの作業の多くを運転席からの操作で完結させる。モニターで後方を確認しながらトラクターを後退させ、連結が完了するとランディングギアも自動で格納される。切り離しも同様に運転席から操作可能だ。これにより、連結・切り離しにかかる作業時間は従来の約半分に短縮され、プラットフォームへの昇降といった身体的負担の大きい作業も不要になる。

この技術は、単なる時間短縮だけでなく、確実な連結を担保することによる安全性向上にも寄与する。カプラーには3つのセンサーが搭載され、連結状態を正確に検知。ドライバーの経験や感覚に頼らず、誰が操作しても安全な連結を実現する。ヨーロッパでは既に実用化が進んでおり、日本市場でも早期導入を望む声が多いという。
スズキ
今年1月に仕様変更された「スーパーキャリイ」と、5月8日に発表されたばかりの新型「エブリイワゴン」を前面に押し出し、刷新されたデザインと強化された安全性能をアピールした。

今回の展示の目玉の一つが、1月に仕様変更されたスーパーキャリイである。最大の変更点はエクステリアデザイン、特にフロントマスクだ。担当者によると、「ガラッと変更した」というその表情は、従来の商用車のイメージを覆す力強いものとなった。このデザイン変更が、顧客から非常に良い反応を得ているという。
もともとスーパーキャリイは、シート後ろのスペースの広さやキャビンの快適性といった実用面で高い評価を得ていた。今回の仕様変更では、その強みはそのままに、デザイン性を大幅に向上させた。さらに、安全装備も、乗用車と変わらないレベルまで引き上げられており、働くクルマとしての基本性能と安全性が高次元で両立されている。
これまで利便性や快適性ではライバルに対して優位性があったものの、デザイン面で選択肢から外れるケースもあったと見られる。しかし、今回の刷新によって見た目も「かっこよくなった」ことで、新たな顧客層への訴求力も増した。元来の強みである快適性に加え、デザインと安全性が加わったことで、その商品力は飛躍的に高まったと言えるだろう。
ZO MOTORS

“積載も輸送コストも妥協しないスマートEV”をコンセプトに掲げた「ZM5」全長5,535㎜×全幅1,945㎜。街中の細い道幅にも対応し、静粛性と低振動により周辺環境にも配慮。軽量シャシとe-アスクルのコンパクト構造で積載量を最適化。フレームに高張力鋼鈑を採用し強度と軽量化を両立した
日野自動車
特定のエネルギー源に偏ることなく、ディーゼル、バッテリーEV(BEV)、そして燃料電池車(FCEV)といった多様な選択肢を提示。様々なエネルギー源を活用した最適なバランスで社会に貢献するという、同社の環境対応への姿勢を明確に示した。

今回の展示で最も注目を集めたのは、大型のプロフィアZ FCVであった。このモデルは、日本で初めて量産される大型FCVとして、その生産体制に大きな特徴を持つ。茨城県にある同社の古賀工場では、従来のディーゼル大型トラックが流れる生産ライン上で、このFCVも一緒に製造する「混流生産」がすでに行われている。
この生産方式は、FCVの需要が将来的に増加した際にも、柔軟かつ迅速に生産台数を増やせる体制が整っていることを意味する。作る側の構えを着実に進めることで、来るべき水素社会の物流を支える準備は万端である。さらに、これまでウイングボディとバンタイプに限られていた車体架装に、今回初めて冷凍車仕様を追加。FCVの活用領域をさらに広げる一手となる。
性能面でも実用性は高い。1回の水素充填による航続距離は約600kmと、ディーゼルトラックと比較しても遜色ないレベルを達成。ノズル2本タイプの水素ステーションであれば、充填時間は約15分で完了するため、使い勝手は軽油と大差ないと言えるだろう。
フィアットプロフェッショナル
新型バン「スクード」の導入を本格的に検討している。2022年2月のブランド導入以来、キャンピングカーのベース車両として人気を博す「デュカト」に続く第二のモデルとして、その動向に注目が集まっている。ジャパントラックショー2026で、初めて国内で実車が披露された。

今回初披露された「スクード」は、スタイリッシュなフロントフェイスが印象的な商用バンである。そのデザインにはピアノブラックのパーツが効果的に用いられるなど、実用性一辺倒ではないイタリア車ならではのテイストが色濃く反映されている。サイズは国産のハイエース(標準ボディ)より一回り大きい程度で、全高は約190cmに抑えられており、駐車場の制約がデュカトに比べて少ないのも特徴だ。

今回展示された車両は、英国から借用した右ハンドルのマニュアルトランスミッション車だが、日本市場への導入時にはオートマチックトランスミッション仕様が予定されている。エンジンは2.0Lのディーゼルエンジンを搭載し、最大トルクは340Nmを発生。商用ユースや多人数乗車時にも不足のないパワフルな走りが期待される。足回りやドアの作りも欧州車らしく堅牢で、バンタイプでありながら横揺れの少ない安定した乗り心地を実現しているという。
ボルボ・トラック
大型トラックFHの2026年モデルは、輸送業界における安全性と効率性の基準を塗り替える革新的な一台である。ボルボFH 2026年モデルの側面に立つと、誰もがその異変に気づくだろう。従来そこにあるべきサイドミラーが存在しない。代わりに、左右のドア上部に設置されたアーム内に高輝度カメラが搭載されている。このカメラが捉えた左右後方および左前方の映像は、車内に設置されたモニターにリアルタイムで映し出される。

この変更による第一のメリットは、燃費の向上である。ミラーをなくすことで空気抵抗と風切り音が抑制され、約1%の燃費向上が見込めるという。大型トラックの生涯における燃料消費量を考えれば、この1%という数値がもたらす経済的効果は決して小さくない。
このカメラモニターシステムは、単にミラーを電子化しただけのものではない。最大の利点は、これまでミラー本体によって生じていた死角をなくし、運転席からの直接視界を大幅に向上させたことにある。運転席と助手席のAピラー付近には、それぞれ縦およそ45センチの大型モニターが配置される。このモニターは縦に2分割されており、上段が側方から後方までを、下段がよりワイドな側方エリアをカバーする構成となっている。これにより、ドライバーは死角の少ないクリアな視界を確保できる。
カメラモニターシステムは、あらゆる環境下で最適な視界を提供するように設計されている。従来のミラーに比べて汚れにくく、雨天時や寒い季節には自動で曇り止めが作動。さらに、直射日光による眩しさを抑える補正機能や、トンネルの出入り口など急な明るさの変化に瞬時に対応する機能も備える。視界が悪化する夜間においては、赤外線カメラが暗闇でも鮮明な映像を映し出し、走行中はもちろん、停車中のセキュリティ向上にも寄与する。
三菱ふそうトラック・バス
「港」を意識したコンテナデザインのブースを展開した。今回の出展では、2月に発売された新型「キャンター」の初披露と、数年ぶりに復活した大型トラック「スーパーグレート」のトラクターヘッドという二つの目玉を据えた。同社は車両展示に留まらず、異業種コラボレーションや次世代育成を見据えた子ども用トラック整備の体験企画を通じて、トラックの新たな可能性を提示した。

今回の展示で特に目を引いたのは、2月に発表されたばかりの新型「キャンター」である。同社の顧客には一台や二台を所有する個人事業主も多いことから、小型トラックであるキャンターが、多様な顧客のビジネスに対応できるバリエーションを持つことを改めて認識してもらう狙いがある。そのコンセプトは「十人十色のビジネス」というキャッチフレーズに集約されている。
実際に、顧客層は花屋や清掃業者など多岐にわたる。バンタイプ、平ボディ、ごみ収集車といった様々な形状があり、顧客のビジネスに沿った架装に対応することで、文字通り「十人十色」の働き方を支えるパートナーとしての役割を強調した。また、2017年から国内で初めて量産型EVトラックとして販売している「eCanter」も展示され、電動化への取り組みも改めて紹介された。
