ボッシュの日本法人は2026年6月17日、横浜市都筑区にある同社本社で、ボッシュグループの年次記者会見後、SDVおよび自動車整備に関するセミナーを開催した。
「ソフトウェアドリブンモビリティの実現に向けたボッシュの取組み」
最初のセミナーは、ボッシュ日本法人技術戦略・エンジニアリング統括の森田泰弘氏による、「ソフトウェアドリブンモビリティの実現に向けたボッシュの取組み」。

従来の車両は走る・曲がる・止まるを担うハードウェアを価値として提供していたが、これからのSDV(ソフトウェアディファインドビークル)ではカーオーナー一人ひとりのニーズに合わせて車両の側が変化。カメラなどのセンサーが検知したデータから車載AIがそれを判断し、提案することに価値が生まれる。

それを実現すべく、ハードウェアとソフトウェアを別々に開発するとともに、「それ自体が価値を生まない」車載OSはオープンソース化して共同開発し、価値を生むソフトウェアを柔軟に開発できる体制を構築していることを紹介した。

「自動車整備の未来を拓くボッシュの次世代診断ソリューション ~サイバーセキュリティ時代への対応と整備事業者のビジネス支援~」
続いて、ボッシュ日本法人モビリティアフターマーケット事業部の里廉太郎氏が、「自動車整備の未来を拓くボッシュの次世代診断ソリューション ~サイバーセキュリティ時代への対応と整備事業者のビジネス支援~」と題し、自動車技術の高度化に伴い必要とされる故障診断技術の変化について講演した。

近年の車両がコンピューター化していく中で、日本においてはADASの装着義務化が進んでおり、その故障診断にも高度な技術と設備が必要になっている。
今後さらに、車載コンピューターがエンジン・車輪など機能別に役割を担うドメイン型から、左フロント・右リヤなど部位別のゾーン型へ移行すると、「これまでの故障診断の経験では全く解決できなくなる」。
だからこそ、「最新情報のキャッチアップが今後の整備事業の継続を左右する鍵になる。そのため、ディーラーと同等の診断環境を、その投資対効率を見極めながら、一般整備工場も構築する必要に迫られている」。

加えて、ハッキングによる車載コンピューターの乗っ取りから車両を守るため強固なサイバーセキュリティが車両へ求められるようになった。それに伴い、カーメーカー正規の認証を持たない汎用スキャンツールではセキュリティを解除できず、DTC(故障コード)消去やADASエイミングなどの整備作業が行えないケースが増え始めている。

こうした状況に対しボッシュは、1902年の「マグネトー式高圧点火装置」から始まる数多くの車載システムと、1988年から始まる汎用スキャンツール「KTS」シリーズおよび「ESI[tronic]」を開発し続けてきた強みを持つ。


その双方の強みを併せ持つことで、ボッシュの汎用スキャンツールは、国産カーメーカー全社を含む各社との契約に基づいた、150ブランド13万車種以上の診断ソフトウェアを実装。ADASエイミング、駆動用バッテリーのSOH診断、マイレージ(車載ECUが記録した走行距離)比較などの作業を可能にした。
また、FTA(故障の木解析)理論に基づいたガイデッドトラブルシューティング機能も実装し、経験の浅いメカニックでも効率的かつ的確な故障診断ができるようサポートしている。これについて里氏は、「業界ではいまだに経験と勘でクルマを治すことが多いが、それではもうクルマは治らない」と注意喚起した。

そして、主要カーメーカー22社と直接データライセンス契約を締結。ボッシュ製汎用スキャンツールの購入ユーザーが各カーメーカーとの個別契約・課金をすることなく、単一のボッシュIDでのセキュリティ解除を可能としている。
こうして法令違反や整備ミスのリスクを完全に排除しつつ作業効率も高めることで、カーオーナーとの信頼を構築することの重要性を訴えた。

(文・写真=遠藤正賢 図=ボッシュ)