6月30日、横浜ゴムは東北大学・多元物質科学研究所との共同研究により、タイヤの補強材であるスチールコードとゴムの接着界面において、有機酸コバルトが果たす接着性・耐劣化性向上のメカニズムを解明したと発表。
※2026年6月5日付で学術誌「Rubber Chemistry and Technology」にて掲載
スチールコードとゴムの接着界面が抱える課題
乗用車やトラック・バス、農業機械・建設車両向けタイヤには、剛性と形状保持のため、黄銅(銅と亜鉛の合金)メッキが施された‟スチールコード”が補強材として用いられている。ゴムと金属の接着界面のはく離はバーストなどにつながるため、強固な初期接着性と長期的な耐環境劣化性の両立が求められる。
現在は、ステアリン酸コバルトに代表される有機酸コバルトをゴム中に配合する方法が広く使われている。しかし、長期的にはゴムの酸化や劣化を促進する‟金属害”を引き起こす懸念がある。加えて、コバルトは人体の健康への悪影響や供給リスクの高い希少資源であり、環境規制強化への対応も業界全体の課題となっていた。
走査透過電子顕微鏡による界面解析で‟硫化コバルトのバリア層”を直接観察
今回の研究では、ステアリン酸コバルトを添加した天然ゴムに黄銅メッキのスチールコードを埋め込み、加硫接着した試料を作製。ナノメートル以下の超高分解能で内部組織を観察・分析できる、走査透過電子顕微鏡を用いて詳細な界面解析を行った。
その結果、加硫後の接着界面にコバルトが高濃度で局在するだけでなく、「硫化コバルト」(コバルトと硫黄の化合物)として存在することを世界で初めて直接観察した。この硫化コバルトが、黄銅メッキからゴム内部への銅・亜鉛の溶出や、破壊の起点となる黄銅内部の空隙形成を抑える「バリア層」として機能することが明らかになった。
劣化試験でバリア層のまばらな領域から溶出が拡大
高温高湿の環境下で劣化させた試料では、主に硫化コバルトのバリア層が疎な領域において、銅と亜鉛の溶出や空隙の拡大が確認された。これはバリア層の緻密さが、接着界面の劣化進行速度に直接影響することを示す。
経験則から科学的な設計指針へ
従来、ゴムとスチールコードの接着界面設計は経験則に基づく部分が大きかった。今回の成果は、分子及び材料設計の科学的指針を与えるものとして位置付けられる。横浜ゴムは今後、本研究で得られた知見を活用し、安全性と耐久性に優れたタイヤの開発を進めると共に、環境負荷や供給リスクの低減に資する材料技術の研究開発を推進するとしている。なお、本研究は中期経営計画「Yokohama Transformation 2026 (YX2026)」の技術・生産戦略の一環として取り組まれたもの。
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【論文情報】
タイトル: Nanoscale distribution and role of cobalt at the interface between brass-coated steel wire and rubber
著者: Yohei K. Sato、Tomohiro Miyata、Katsunori Shimizu
掲載誌: Rubber Chemistry and Technology
DOI: 10.5254/rct.25.00050