小山自動車の神髄とは 車に長く乗っていただく予防整備、その心掛けと整備技術に迫る 小山自動車[広島県福山市]

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泉山 大(プロジェクトD)
小山自動車の神髄とは 車に長く乗っていただく予防整備、その心掛けと整備技術に迫る 小山自動車[広島県福山市]

 自動車整備「神の手」の異名を持つ、小山自動車の小山明社長と小山博久氏。兄弟二人三脚で磨きあい、築いた技術の域はどのように到達し得たのか。その結果、辿り着いた小山流の予防整備とは何か。

 8月26日に実施された、サンエレメントの商品説明会のトークセッションを紐解きながら、小山自動車が実践する心掛けと整備技術、その取り組みに迫る。

小山自動車外観
小山明社長
今も現役! 小山明社長

 広島県福山市に拠点を構える小山自動車の小山兄弟は、もう説明の余地もない自動車整備士のレジェンドである。同社は父の代から創業し、後を継いだ小山明社長も齢80歳を超えた(取材当時83歳)。今も現役の整備士であり、現場に立つ。その目は今もなお、凛とした志と威厳に溢れている。

 その小山社長が昨今の整備に対し、一言警鐘を鳴らす。

 「今の整備士の子たちは車に乗ってないんじゃないか」。

 小山社長が某ディーラーに入庫した持ち込み車検の車両に同乗させてもらった時の話。

 「車検から帰ってきた時、彼に『どっか悪いところはないか』と訊いたら、『どこも異常ない』という返事だった。でもね、エンジンマウントの振動が気になったんよね。うん、この子は車に乗っとらんなって思った。車のいい状態、悪い状態が分かってない。スキャンツールをつこうた診断ならできるんだろうけれど」(小山社長)。

 「こないだ車検に入庫した車に乗ってみたら、アブソーバーが抜けていたから、ユーザーに提案した。ユーザーも、緊急性がある状況じゃなかったから、その時は仕事につながらなかったけれど、(ユーザーの中では記憶に残っているから)後で整備に入庫するから、提案は重要」(小山社長)。

 提案ができるということは、整備士自らが車に乗って実際に体感したからこそである。

 10数年前、NHKの「プロフェッショナルの流儀」で同社が特集されて以降、新規ユーザーが増えたという。国産車の入庫が増え、小山社長は「サスペンションがへたっている車両が多い」という事実に気付いた。その理由を「整備士が入庫車に乗ってないことが影響している」と推測している。

 「車の整備はトータルで考える。単体の個所の整備だけで良くなるわけではない」(小山社長)。

エンジンオイルは約30種を在庫
エンジンオイルは約30種を在庫

 小山自動車は「入庫車の燃費を良くしてお客様に返す」ことを信条とする。

 「オイルが全て」と小山社長が語るとおり、同社ではエンジンオイルの油種は約30種類、ブレーキフルードは約5種類、そして複数のギアオイルを在庫。エンジンオイルの油種は10年前よりも増加したという。

 「うちのユーザーは、感度の鋭い人が多く、ドライブフィールでオイル交換のタイミングが分かる女性ユーザーもいる。また、給油サイクルが長くなったことを感じ取ってくれる方もいて、燃費改善のフィードバックがある。それがすごくうれしい」(小山博久氏)。

小山博久氏
真摯な姿勢で車と向き合う職人、小山博久氏

 エンジンオイルは、走行距離や車の乗り方で粘度を変えるが、異音やフリクションロス、オイル上がり・オイル下がりなど、車両の状況やユーザーの乗り方といった様々な情報を加味して、その車に適切なエンジンオイルを選択する。

 また、ブレーキフルードについて、小山社長は「今の車はADASが付いてるでしょ。ブレーキフルードは粘度があったら作動するタイミングが遅れる」とブレーキフルードの油種についても最新の知見を基にラインアップする。

ブレーキフルードも5種類を在庫し、ユーザーに提案
ブレーキフルードも5種類を在庫し、ユーザーに提案

 「適切にオイル交換をすれば、ほとんどトラブルはない。こないだうちのお客さんが49万kmで廃車にしたケースがあった。50万kmまであとちょっとだったんだけど、距離が浅いうちからまめにメンテナンスすれば、これだけクルマに長く乗れる」(小山博久氏)。

 ちなみに同社が保有する代車はすべて20万km以上走行した車両のみ。適切な整備が、車を長持ちさせることを自ら証明する。

 整備工場の強みは整備技術である。いかに車を長持ちさせるか。それが専業整備事業者の腕の見せどころだ。

 小山兄弟の技術力はダートトライアルなどモータースポーツへの参戦を通して培った経験が大きい。ところが、小山社長、小山博久氏ともに、こう口にする。

 「技術力は設備が90%」と。

 「昔の感覚だけではもう仕事はできない」(小山社長)。

 また小山博久氏は「高い整備機器を買ったら勉強するでしょ」とも。

HUNTER GSP9700 ロードフォースバランサー。ラテラルフォース測定を可能とするハイエンドのホイールバランサーを設備し、ベストな足回り整備を実践
HUNTER GSP9700 ロードフォースバランサー。ラテラルフォース測定を可能とするハイエンドのホイールバランサーを設備し、ベストな足回り整備を実践

 同社にはありとあらゆる整備機器が整えられている。たとえば、昭和40年代に先代が購入したアライメントテスターもいまだ現存するなど、貴重で希少な設備が保管されており、さながら整備機器の博物館の様相を呈している。

保有するスキャンツールの一部。所有する診断機は30台とも40台とも
保有するスキャンツールの一部。所有する診断機は30台とも40台とも

 その自慢の整備事業場は、常に清掃され、整理整頓を忘れない。

 「小山社長は整備情報誌の新工場レポートを見て、新しい工場なのにもうオイルをこぼしていると怒ることがある」(小山博久氏)。

 それほど整備事業場の清潔感への意識が高いのである。

 「作業場の床がきれいだと特に女性ユーザーの信頼度は高くなる」(小山社長)。

 当たり前のことを当たり前に行う。それが小山兄弟の流儀である。

 ハンドツールなども自らの手で改良するなど、研究心と探求心は今も衰えることがない。

自作のグリスガンを試す小山社長
自作のグリスガンを試す小山社長
インジェクターの診断ツール。手造りのSST
インジェクターの診断ツール。手造りのSST

 整備情報誌は今もあらゆるものに目を通しているという。 年齢を重ねても、名声を手にしても、常に探求心を忘れない。その姿勢こそが、小山自動車の整備の神髄だと気づかされる。