定時退社と年間休日増、有休取得の簡素化、自由な社風 ベテランと20代整備士が融合し、過去最高益を達成
創業73年の老舗整備事業者、山本ヂーゼル工業はリーマンショックの経営危機を経営改革で乗り切り、驚異のV字回復を達成した。その同社が2026年2月期に過去最高益を更新した。それを支えてきたのが同社の整備士である。直近5年間で入社した20代の若手整備士5人とベテランとの融合。同社が行ってきた働き方改革に肉薄する。
【工場概要】代表取締役 :山本 裕 住所 :静岡県富士宮市弓沢町487 創業 :1953年(昭和28年) 従業員数 :24人(うち整備士数17人)
リーマンショックの逆風で経営改革を推進
静岡県富士宮市に本社を構える山本ヂーゼル工業は、創業者の山本寅雄氏が満豪開拓義勇軍で得たディーゼルの修理技術を生かして1953年(昭和 28年)11月に創業した老舗の整備事業者である。製紙業が盛んな富士宮市は、高度経済成長を迎え、紙材の出荷で貨物車両が増加。ディーゼル車の修理や整備の需要増で、同社は急成長を果たす。
その後、小型車整備の分野を拡大し、地域でも指折りの整備事業者として高い評価を受け続けている。
ところが、順風だった同社の経営はリーマンショックと東日本大震災を境に、売り上げが落ち込んだ。これを契機に、二代目の山本裕社長が経営改革を断行していく。山本社長曰く「ブランディングと選択・集中の実践」である。
地元優良企業との取引を増やすことで、企業としての格を上げるブランディング。利益率の高い仕事に選択と集中を行う経営改革。また、リース車メンテナンスの黎明期において、いち早くリース車の整備もスタートさせた。
これにより、優良企業との取引を拡大していった。この改革が成功し、同社はV字回復を果たしていく。
また、特装車両の営業を強化し、クレーンや冷凍車などの分野を開拓、現在は大型車、小型車に加えた3本目の柱が完成しつつある。中でも、林業の産業廃棄物で使用されるヒアブクレーン(ワイヤレス・クレーン)の架装や保守管理は同社でしか取り扱えない作業として収益の1つに成長した。
そうした積み重ねの結果、入庫台数は右肩上がりで増加を続け、2022年の車検台数が1,000台を超えた。それ以降も入庫増を続け、2026年 2月期決算では、過去最高益を達成した。
直近5年間で20代整備士が5人定着
特殊な技術を要する作業と、入庫増が実現するには盤石な人員体制が不可欠である。同社では、2021年以降の5年間で6人の整備士を採用し、定着に成功した。1人は検査員資格を有する40代のベテラン整備士だが、他の5人はまだ20代というフレッシュな布陣で、一気に社内が若返った。
なお、同社ではいまだ外国人材を採用していない。山本社長は「外国人に抵抗はないけれども、できるうちはオールジャパンでいきたい」と語る。
20代社員を含めた、同社の定着率の高さは、これまで実践してきた経営改革に並行して行われた働き方改革に拠るところが大きい。
まず、ほぼ残業なしの勤務体制が実現している点が挙げられる。記者は社員のタイムカードを見せてもらったが、大型車部門の整備士は毎日17時前半に打刻。また、小型車部門でも17時台後半には全員の整備士が業務を終了していた。
「昔は遅くまで働くのが美徳だったし、先輩が帰るまで若手は帰れないというのが常だった。そのために日中の仕事を調整したりするが、そうした風土を少しずつ変えていった」と山本社長。
採用の面接では、残業の有無についてたずねられるケースがあり、山本社長は「一度、夜に会社の前を通ってみたら分かるよ」と進言するという。
また、従来は日・祝日、第二土曜日を定休日とし、96日としていた年間休日も近年の改革で、有給休暇の法定取得と合わせて106日とした。
その有給休暇の取得も、規定の用紙に記入して上司に提出する形式ではなく、ホワイトボードのカレンダーにネームマグネットを置くだけという気軽さで取得できるようにしている。
「申請用紙に事由などを書いて提出させる会社がほとんどだと思うが、事由を書かせることに意味はない。経営者として把握しておきたいのは、作業場がその日、何人体制になるかだけ」(山本社長)。
以前は先輩が連休を取得するために土曜日や月曜日に有給を入れてしまい、若手が好きな日に休めないこともあったが、現在は休日がかぶってもOKで、同じ日に何人も休むことも認められている。
完全週休2日制に向け、経営改革続行中
社内行事についても見直しを行い、社内旅行やBBQなどのイベントを取りやめた。「若手のライフスタイルを尊重し、イベントをやめた。社員旅行の積み立てをやめ、会社負担分のコストをボーナスや賃上げの原資とした」(山本社長)。
その同社ではさらに働き方改革を前進しようと、土日の完全週休 2日制の実現にチャレンジしている。
「月末の土曜日は休日にはできないが、それを除いて週休 2日制への移行を検討している。そのためにはさらなる選択と集中、利益率向上が必要であるとともに、顧客の理解と入庫調整、そして仕事の組み方を磨いていきたい」と山本社長。
同社が目指すのは100年企業。山本社長の子息は現在同社で活躍中であり、数年後には世代交代が行われる計画である。






