熱中症対策の意識付け、定着のために、準備期間も考慮して毎年2~3月にかけて告知され
るクールワークキャンペーン。労働安全衛生規則改正も相まって、重要性は年を重ねるごとに
増している。その取り組みや、労働安全衛生規則改正の意義、熱中症対策のあり方について、
厚生労働省 労働基準局の高松達朗専門官に話を聞いた。※取材日:2026年2月16日
自動車整備も、熱中症を生ずるおそれのある作業に該当するのか
該当するケースはある。たとえば空調のない工場で作業している場合などでは、WBGT値が28℃以上、または気温が31℃以上になる可能性はある。その環境下で、連続して1時間以上、または1日に4時間を超えて働く場合は、「熱中症を生ずるおそれのある作業」に当てはまる。またそのため、昨年6月に施行となった訪問特定整備で、屋外の駐車場で作業する場合も熱中症にかかる危険性はある。
昨年までのクールワークキャンペーンなどの取り組みの効果について、熱中症による死亡者数に変化は見られたか
クールワークキャンペーン自体は2017年から開始しており、毎年、熱中症対策に関する呼びかけを行っている。ここ数年は暑くなり始める時期が早く、猛暑日も長引く傾向にあり、職場において熱中症にかかる人が増えているのは事実である。
このような状況を踏まえ、昨年は熱中症の重篤化防止を目的として労働安全衛生規則の省令改正を行った。これにより、事業者は熱中症の疑いのある作業者を発見した際の緊急連絡体制の整備や、熱中症発生時の措置手順の作成とこれら体制と手順の周知などが罰則付きで義務付けられた(昨年6月施行)。違反した場合は、50万円以下の罰金または6ヵ月以下の懲役が科される。
この取り組みの結果、昨年10月末の速報値では、職場での熱中症による死亡者数は12人だった。速報のため即断はできないが、ここ3 年は連続で30人前後、2024年の同月時点では29人だったことからも、死亡災害の防止については一定の効果があったと認識している。大きな減少傾向にあるのは確かだ。
クールワークキャンペーンの実施要項は、事業者が夏に向けて充分な準備ができるよう、毎年2月から3月にかけて発表している。一方で、改正省令が交付されたのは4月だった。そのため、キャンペーンの発表時点では、その内容を盛り込むことができなかった。
死亡者数が減少したということは、キャンペーンの認知度も充分と考えているか
キャンペーン自体の認知度を明示的に調査したわけではない。しかし、夏場やその前の時期になると、各都道府県労働局や労働基準監督署が様々な形で熱中症対策の周知を行っており、そうした活動を通じて、それなりの認知度は得られていると考えている。
業種によって認知度に差があるかどうかのデータはない。ただ、一般的に熱中症のリスクが高いと言われている、屋外での作業が多い建設業や運送業などの方が認知されている可能性はある。自動車整備業でも訪問特定整備を行うならリスクは高い可能性があるが、屋外で作業する機会が比較的少ないのであれば、リスクの度合いに応じて認知度も上下する可能性はあるだろう。
特定の業界団体への働きかけなどは行っているのか。また、熱中症対策について、事業者へアドバイスがあれば
クールワークキャンペーンの実施要綱や熱中症予防対策基本要綱はすでに作成しており、改正省令の内容と合わせて、これらは業種を問わずすべての事業者に周知している。特定の業界の認知度が低いという理由を以て、個別の働きかけは現時点では行っていない。各事業者が高い意識を持つことが、引き続き重要になる。
事業者の方々へのアドバイスとしては、まず、省令に基づく対応を徹底していただきたい。実際に熱中症災害が発生した事業場は、そうでない事業場に比べて、改正省令で定められた義務に違反していたり、指導を受けたりした割合が高いというデータもある。
法令に基づく措置をきちんと行い、熱中症対策の基本を知っていただくことが大切だ。その上で、それぞれの事業場の状況に応じた、より効果的な対策を講じていただくことが、従業員の命と健康を守る上で最も重要だと考えている。