トラックはあっても整備ができないから動かせない
深刻化する整備士不足は、単なる労働力不足という次元を超え、運送事業の根幹である「車両稼働率」を直接的に脅かす事態を引き起こしている。全国の整備工場ではキャパシティーが限界に達し、車検や突発的な故障修理に要する期間は数年前に比べて大幅に長期化しているのが実情である。
この「整備待ち」の時間は、そのまま機会損失につながる。2024年問題以降、ドライバーの労働時間には厳格な制限が課せられており、1分1秒のダウンタイム(休止時間)が即座に売り上げ減少に直結する。整備の遅れが運送会社の経営を直接圧迫するという構造は、日に日に強まっている。
OBD検査がもたらした整備の「高度化」と「二極化」
2024年10月から段階的に導入されたOBD(車載故障診断装置)検査は、2026年には国産車・輸入車を問わず仕組みとして完全に定着した。しかし、この制度が整備現場に新たなハードルを設ける結果となっている。
自動ブレーキやレーンキープアシストといった先進安全装置(ASV)が標準装備となった現代のトラックは、電子制御が複雑化しており、もはや従来の「経験と勘」に頼った整備だけでは対応できない。
修理には高額なスキャンツール(診断機)と、それを使いこなすための専門知識が不可欠となった。この変化に対応すべく、高度化する電子制御に対応した特定整備体制を取得し、最新設備への投資を行った工場と、それができずに事業の継続を断念する工場の「二極化」が鮮明になっている。
結果として、特に地方の運送事業者を中心に「近隣に信頼してトラックを預けられる工場がない」という、いわゆる「整備難民」が発生する深刻な事態も報告されている。
CLO(物流統括責任者)が促す「予防整備」への転換
2026年4月、一定規模以上の荷主企業に対して「物流統括責任者(CLO)」の選任が義務化されたことは、整備のあり方にも大きな影響を与えている。CLOには物流効率化のための中長期的な計画策定が求められるため、輸送を止めないための「予防整備」が、経営計画上の重要項目として組み込まれるようになったのだ。
これにより、メンテナンスの考え方は「壊れてから直す」という事後対応から、「壊れる前に部品を交換し、計画的な入庫でダウンタイムを最小化する」という、より戦略的なアプローチへとシフトしてい
る。運送事業者と整備事業者の間では、こうした「攻めのメンテナンス」を前提とした契約が主流となりつつある。
一方で、脱炭素化の流れで導入が進むEV(電動)トラックやFCV(燃料電池)トラックは、高電圧回路を扱うための特殊な資格や設備が必要であり、整備体制の構築が車両の普及スピードに追いついていないという新たな課題も顕在化している。
来る5月に開催される「ジャパントラックショー2026」では、この潮流を反映した技術が大きな注目を集めるだろう。AIを活用した故障予測診断システムや、物理的な入庫を減らすためのリモートメンテナンス技術など、ダウンタイム削減に直結するソリューションが、業界の未来を切り拓く鍵となるに違いない。
→特集②に続く