特集⑤ 特定整備時代のコンプライアンスのカギは社内制度の設計とネットワーク・セキュリティー

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泉山 大(プロジェクトD)
特集⑤ 特定整備時代のコンプライアンスのカギは社内制度の設計とネットワーク・セキュリティー

 「電子制御装置整備の巧」として他の整備事業者の追随を許さない社内体制と設備、そして技術力を併せ持つオートバックス次世代自動車研究所(旧車検・鈑金デポ)は、そのコンプライアンス体制においても一目置かれる存在として知られる。

 「当たり前のことを当たり前に行う」その難しさを、どのように社内の仕組みに落とし込み、コンプライアンス体制を構築したか。同社の管理監督者、間山法夫取締役に聞いた。

 特定整備の経過措置が終わり、今後国土交通省は認証工場に対しても監査する旨を明言する中、自動車整備事業者は今一度、「道路運送車両法を中心とするコンプライアンスの運用について、襟を正す時が来ている」と間山取締役は訴える。その上で、「OBD検査は、従来の『作業』と『書類』要素だけでなく『ID運用』という新しいコンプライアンスリスクを顕在化させた」と指摘する。

 さらに「まず整備事業場の管理監督者は当該IDが、事業者に与えられたIDか、個人に与えられたIDかを理解し、運用設計することが必要。IDの性質を曖昧にしたまま現場へ落とすと、『共有しても問題ない』という誤解が生まれ、貸与・なりすましが起きやすくなる」と注意を促す。

 そこでオートバックス次世代自動車研究所では、OBD検査・確認を実施する可能性のあるスタッフ全員に個人IDを付与した。OBD検査システムでは必ずしも整備士(資格者)のみが利用するものという前提ではなく、間接要員にもIDの付与が可能だ。このため同社ではOBD検査・確認に携わるフロントも含めてIDを付与することで、IDの貸与・なりすましのリスクを排除している。

保有する純正スキャンツールは自動車メーカーの基準に沿って、アクセシビリティーを制限するため厳正な管理を実施

  電子制御装置整備やOBD検査といった自動車整備の改革が進み、その対象車や整備の領域について、複雑化しているとの声が挙がる中、同社では両者の理解を時系列に沿って教育し、自動車整備業界へフィードバックしている。

 その社内教育は、 ①対象車の判別の徹底、 ②OBD点検実務運用の理解、③OBD検査の運用(実地レベル)、 ④ID運用というプロセスで実施している。中でも興味深いのが、 ②のOBD点検についての教育体制である。

 同社の講習ではトヨタの86を事例に説明。ZNとAEを比較しながら学びを深めている。実際、AE86のOBD点検において、「点検整備記録簿にレ点を記入するか否か」を受講者へ問いかけると、多くの整備士は「記入しない」と回答するが、実際はEFIの警告灯などがあるため、レ点による記入が必要となる。

 従来の点検5項目のうち1つでもレ点の項目が存在すれば、記録簿に記載しなければならない。したがって「OBDⅡコネクターがないから、点検整備記録簿にレ点は不要」ととらえて、OBD点検を運用しているケースは違反事項となる。

 同社では、このように車両と制度を時系列で遡りながら、教育する手法で、各対象車の理解と判別を促し、コンプライアンス体制を構築している。

 今後整備事業者が生き残るために求められるコンプライアンス意識について間山取締役は、「特定整備認証施行前後で整備の本質は変わっていないが、手法や解釈は変わった。その変化の手始めは、整備工場内のインターネット環境整備だったと実感している。

 インターネットのコンプライアンスを考えると、UTMの設置など社内ネットワークのセキュリティーまで考える必要がある。ID管理やログ、外部接続などの端末運用は、便利さではなく責任領域であり、これを「業務品質の一部」として設計できた事業者が、その先の自動車の電子化に対応できる思考を持てるのではないか」と指摘する。

 自動車整備の高度化は経営領域においても強く求められている。

特集⑥に続く