6月24日、国土交通省は事故車修理の標準作業時間に関する調査結果を公表した。世界各国のカーメーカーから標準作業時間の策定業務を請け負うドイツのCAB Deutschland GmbH(以下、CAB社)に標準作業時間の策定(CAB工数)を依頼し、国内で広く使われる自研指数と比較。なおCAB社との調整は、テュフ ラインランド ジャパンに委託された。その結果、鈑金作業ではCAB工数のほうが作業時間が長くなる傾向が確認された。
車体整備事業者の声を受け、国交省が第三者的立場で調査
事故車の修理工賃は、「標準作業時間 × 工賃単価」で算出されるのが一般的である。この標準作業時間には、自研センターが策定する「自研指数」が広く用いられているが、車体整備事業者からは「自研指数の時間では終えられない作業がある」との声が挙がっていた。今回の調査はこの実態などを受け、国交省が第三者的立場から調査を実施したものである。
調査対象は3車種
対象車種は、コンパクトカー、セダン、SUVから以下の3車種が選ばれた。
- TOYOTA ヤリス(MXPA1#:コンパクトハッチバック)
- LEXUS IS300h(AVE30:ミッドサイズセダン)
- LEXUS NX450h+(AAZH26:ミッドサイズSUV)
なお、選定には最新技術が用いられた代表的な車種かつ、英語マニュアルが入手できる車両が優先された。
鈑金作業はCAB工数が大きくなる傾向、塗装は差異が小さい傾向に
3車種・特定の作業を検証した結果、鈑金作業(脱着・取替)ではCAB工数が自研指数を上回る傾向が確認された。たとえば、ラジエーターサポートやフロントサイドメンバーなど複合的な取替作業では、ヤリスでCAB工数25.9時間に対し自研指数15.0時間、IS300hでCAB工数40.1時間に対し自研指数27.5時間、NX450h+でCAB工数33.6時間に対し自研指数27.2時間という結果であった。
一方、塗装作業では鈑金作業ほどの大きな差は見られなかった。ボンネットの塗装ではヤリスがCAB工数7.2時間・自研指数6.2時間、IS300hがCAB工数8.7時間・自研指数8.1時間といった水準である。
差異の背景、付帯作業の計上方法の違い
自研センターによれば、自研指数では一般的に同時実施される作業について重複計上を避けるため、リフトアップなどの付帯作業を関連する他の作業項目に含めて時間を設定している場合があるという。一方、CAB工数では作業内容ごとに付帯作業を設定し、重複する場合に削除する考え方を取る。
ヤリスの「エキゾーストテールパイプAssy取替」では、CAB工数の内訳を開示し自研センターが検証した結果、一般的な事故車修理で同時実施されるリアバンパーや溶接パネル取替の作業を加味すると、両方式とも0.4時間で差異がなくなることが確認された。
調査結果の位置付けに関する留意点
本調査については、国交省は以下の3点を明確にしている。
- CAB工数と自研指数の優劣を決定するものではない
- 自研指数の妥当性を否定する目的ではない
- 限られた車種・特定作業の比較であり、個別事案の作業時間を裏付ける資料として用いることは適当ではない
今後の対応について
今後、自研センター、損害保険会社、車体整備業者などの関係者による対話を実施し、より実態に即した標準作業時間の策定に向けた建設的な議論を進める方針が国交省より述べられた。
車体整備事業者に対しては、自研指数の時間内に作業が終了しない場合は損害保険会社と個別交渉すること、その際は透明性をもって作業時間の妥当性を説明することを改めて周知するとともに、損害保険会社の不合理な説明で交渉が進まない場合には、国土交通省の情報提供窓口への連絡も促した。なお、標準作業時間の調査は令和8年度以降も継続的に実施される予定である。