大型車でエンジンオイル不足が終わらない本当の理由 発注が連鎖し、再受注が止まり続けたDH-2規格の構造問題

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八木 正純
大型車でエンジンオイル不足が終わらない本当の理由 発注が連鎖し、再受注が止まり続けたDH-2規格の構造問題

深刻化するDH-2不足の背景

現在、大型トラックをはじめとする大型車に使用されるディーゼルエンジンオイル(DH-2規格)の供給不足が、整備業界や運送業界に大きな影響を与えている。不足の主な要因として挙げられているのは、以下の点。

  • 原材料の高騰:原材料価格の上昇により、オイルに含まれる添加剤などの調達・生産が困難に
  • 買い占めと出荷制限:一部の業者による買い占めが発生し、メーカーによる出荷制限も相まって流通が滞っている状況
  • DH-2規格の特殊性:主に大型トラックなどで使用される「DH-2」規格は日本独自の規格であり、海外からの代替品調達が極めて難しく、国産オイルでの代替も難しい状況にある

全日本自動車部品卸商協同組合(全部協)の森川等理事長も、先日当編集部が行ったインタビュー(6月24日実施)で「DH-1、DH-2といったディーゼルエンジン用のオイルはまったくものがなく、厳しい状況だ」と語っており、部品流通の最前線からも深刻さが伝わってくる。

整備現場からの声

では、実際に大型車の整備を担う現場はどのような状況に置かれているのだろうか。複数の整備工場から、現場の生の声が集まっている。

北海道の整備工場A社
大型車は小型車に比べてエンジンオイルの1台当たりの使用量が平均30リットルと多いため、不安が募るスピードも小型車がメインの工場の比ではない。当社の場合、どう対処しているかと言えば、加盟しているロータス同友会を介して何とかかき集めている状況だ。

関東の整備工場B社
1,000リットルあっても、2〜3週間で使いきってしまい、1ヵ月もたない。当面のつなぎは取り引きのあるガソリンスタンドから、また現在でこそ販売スキームができたがそれ以前から石油元売りにも声をかけて、自社が大口客であったことから優先的に回してもらった。
それでも足りないものは、加盟している自動車ディーラーグループ内で相談して工面してもらっている。現状何とか賄えているのも、グループ内からいち早く「エンジンオイルが入荷しづらくなるかもしれない」情報を得たことで、ほかに先んじて確保に動けたことが大きい。グループシナジーさまさまだ。

DH-2不足はいつ解消されるのか

一時期行わていた、元売りによる受注停止は大量の在庫が市場に出回ることを防ぐための措置であり、現在は昨年以上の生産を行って不足を解消しようと努力が続けられているのは、大型車用であっても変わりはない。まだ受注停止が続いているとすれば、いざ受注を再開すると大量発注が殺到すると予想されるからだ。

ただ一方で、DH-2規格は日本独自の最高規格であり、海外での生産はほぼなく、現行オイルでの代替もできない。一部高級品などがDH-2規格に近いものを備えているようだが、どの程度、対応できているかは不明である。

森川理事長は同インタビューで、「7月になって改善するというのは残念ながら希望的観測で、そんなにうまくいかないのではないかと感じている」と述べており(6月24日時点)、短期的な解消は難しいとの見方を示している。

とはいえ、第10回 中東情勢に関する関係閣僚会議でも発表のあったように、元売りからの直販スキームが設けられた今、需給状況は程度の差、スピードの差こそあれ改善に向かうことは間違いないだろう。

業界・関係省庁の動きと今後の懸念

大型車は一度のオイル交換で平均約30リットルのオイルを消費するため、オーナーや事業者のコストや車両の運行に直接影響する。整備工場によっては、在庫切れや受注停止によりオイル交換への対応が遅延しているケースも出ており、事業継続計画(BCP)の観点からも懸念が広がっている。

DH-2規格オイルの不足は、整備工場や運送事業者にとって単なる部品調達の問題にとどまらず、事業継続そのものを揺るがすリスクになりつつある。

まさに現場からのコメントにもあるように、業界全体が連携し、流通の正常化に向けた取り組みを一層強化していくことが求められる。今すぐどうこうできるものでもないが、いざという時のために、普段からの横の連携が重要であることを改めて感じさせられた。

経済産業省や関連団体が供給回復を求めており、先ほど触れた直販スキームこそ設けられたもの、即時的な改善を一気に……とは難しく、しばらく厳しい状況が続く見込み。

物流事業者などユーザーの確実な運行のために、整備工場としてできることは、いつもよりも早めの点検案内で入庫量を確定・把握した上で、各地域の部品商やディーラーとの密な連携で過剰発注を避けることが、一見遠そうで結果的に近い解決策だろう。