5月に岐阜県の職業能力開発校で若手整備士向けの業務標準化研修を行いました。法定12 ヵ月点検を題材としましたが、こうしたルーティン業務は慣れが生じやすく、つい「作業をこなす」だけになり、「考えて動く」ことが疎かになりがちです。
しかし、車検や定期点検は頻度の高い作業であり、収益の源です。だからこそ、効率が上がれば収益にダイレクトに効果が出ます。
また業務標準化は効率だけでなく、整備士の肉体的・精神的負担を減らすためでもあります。判断や手順に迷わず、誰もが効率よく、品質良く、安全に作業できるようにするのが「業務標準」です。全員が同じ手順、同じ基準で作業できなければなりません。
「力があるから」、「背が高いから」できる手順は、標準にはなりません。では、具体的にどうすればよいのでしょうか? 作成のポイントを整理してみます。
①現在の手順を「見える化」する
まずは、現在の業務の手順や動きを紙に書き出したり、動画で記録したりして業務を「見える化」し、「安全・品質・効率」のバランスを意識して改善点を探します。
②危険な動きを防止する
ケガや事故につながりそうな行動・作業がないかを確認します。「中腰で作業する」や「重量物を高い位置で脱着する」なども、体の負担が大きく、誰もができる作業ではないため、改善の余地があります。
③動線を短くする
作業の開始位置、回る順番、作業の終了位置、工具の置き場所、外した部品・タイヤの置き場所など、動線を短くする要素は現場にたくさん潜んでいます。
④使用する工具を整理する
めったに使わない工具、同じサイズのレンチ、予備のクリップやボルトがツールボックスの中で眠っていませんか? 使用頻度に合わせて工具を整理することで作業効率は格段に上がります。
⑤作業の流れを統一する
「下回りの点検は前から後ろへ」、「エンジンルームの点検は運転席前から円を描くように中心へ」、「足回りは右フロントから始めて右回り」など作業の流れを統一します。これは、効率アップだけでなく作業忘れの防止にもつながります。
⑥リフトの操作回数を最適化する
上げる、下げる、また上げて、また下げる……。リフト操作は意外とタイムロスにつながります。「今のリフト位置でやれることはないか?」を考えることも大切です。
⑦設備の配置を考える
「使用頻度が高いのに、置き場所が遠い」、「同時に使う頻度が高いのに、離れている」、「部品庫が狭くて必要な部品が探しにくい」など、「昔からこうだから」という習慣は意外と多くあります。「考える」ことを止めずに「もっと良い方法」を探すこと。
そして「良い方法」が見つかったら自分だけにせず、全員の「業務標準」として共有することで、工場全体がレベルアップします。
業務標準をつくることは、整備工場の機能価値を高めるだけでなく、従業員の「働きやすさ」につながります。定着するまで時間も労力も必要ですが、その先には、大きな成果が待っているはずです。
(筆者プロフィール)
田中伸朗 株式会社ナルネットコミュニケーションズ
自動車ディーラーで整備士・フロント業務を経験。その後、整備士教育や現場改善研修を中心に活動。2021年にナルネットコミュニケーションズに参画し、Webメディア「モビノワ」を立ち上げ。整備工場への情報提供や補助金支援を通じて整備業界の活性化に取り組んでいる。