前回は、整備工場が提供する機能価値と情緒価値について触れました。今回は、どちらの価値に重点を置くかによって、工場にどのような特徴が表れるのかを見ていきます。なお、図中の「重点を置かない」とは「戦略として中心に据えない」という意味であり、決して「軽視する」「やらない」という意味ではありません。
図は、重点を置く価値の違いによる工場の特徴を整理したものです。実際の現場ではきれいに線引きできるものではなく、グラデーションのようにつながっています。しかし、自社の現在地や今後の方向性を考える上で、整理の手がかりになると思います。

「生産性追求タイプ」は、リースメンテナンスや協業組合のように、稼働率や業務効率を徹底的に高めて収益を生み出すタイプです。「高次元両立タイプ」は、設備機器や人材教育への積極的な投資により、機能価値と情緒価値の双方を高いレベルで実現するタイプです。コストや教育の負荷が大きく、時間も必要なため、企業としての体力と覚悟が求められます。
「関係性重視タイプ」は、整備機能を最小限にとどめて高度な整備は外注する一方、「気軽に相談できる」、「信頼できる」といった関係性そのものに価値を見いだすタイプです。「事業縮小タイプ」は、後継者の不在や高齢化により廃業を視野に入れているケースです。注意すべきは、設備投資や新技術への対応が滞ることで、意図せずこのタイプへ移行してしまう場合です。
まずは図を参考に、自社の現在地と今後の方向性を大まかに整理してみてください。そして、自社はどの価値に重点を置くのか。そのために必要な設備や機器、人材は何か。改めて考えてみてはいかがでしょうか。
(筆者プロフィール)
田中伸朗 株式会社ナルネットコミュニケーションズ
自動車ディーラーで整備士・フロント業務を経験。その後、整備士教育や現場改善研修を中心に活動。2021年にナルネットコミュニケーションズに参画し、Webメディア「モビノワ」を立ち上げ。整備工場への情報提供や補助金支援を通じて整備業界の活性化に取り組んでいる。