【事案の概要】
愛車の改造(カスタム)をめぐるユーザー側からの相談です。事前にしっかりと打ち合わせをしたはずなのに、仕上がってきたのは別物。さらに事業者の態度が、火に油を注ぐ事態となっています。
■ 相談内容:約束と違う! 事業者は「性能は同じ」、「安い」と開き直り…
ユーザーは整備事業者と、ある改造(溶接を含む合法な内容)について、使用する部品や出来上がりの状態などを事前に話し合いました。最終的には金額にも了承し、正式に作業を依頼しています。
ところが、出来上がってきた車には、指定した部品とは違うものが取り付けられていました。
当然、ユーザーは事業者に苦情を言いましたが、事業者は「性能は同じだから」、「こちらの方が安い」などと説明するばかりで、まともに取り合おうとしません。ユーザーとしては、「元の状態に戻すか、最初の依頼通りにやり直さない限り車は受け取らない!」と主張していますが、仕事で車を使うため、大変困っている状況です。
■ トラブル解決ナビ
今回のケースで重要なのが「打ち合わせ内容が記載された契約書面の有無」です。
事業者側から話しは聞いていませんが、相談者の説明によると、契約書面には打ち合わせの内容が細かく記載されており、さらに複写になっているとのことです。それが事実であれば、事業者は「契約どおりに作業をし直す(契約の履行)」のが原則となります。
ただ、実際の現場ではこういった行き違いはしばしば発生します。現実的には、双方で話し合いを持ち、作業費用の減額などで妥協・合意してまとまるケースが多いのも事実です。もし妥協点が見つからず、損害賠償などの話に発展する場合は、弁護士への相談が必要になります。
■ 弁護士からのアドバイス:勝手な変更は「契約違反」
契約書面に打ち合わせた作業内容が具体的に記載されているならば、その内容(使用部品や仕様など)は、「契約内容」となるのが原則。
そうなると、仮に「変更した部品の性能が同等」であろうと、「違う方法のほうが安価」であろうと、事業者側がユーザーの許可なく勝手に作業内容を変更することは『契約違反』となり、当初の打ち合わせ内容通りにやり直したり、損害賠償などが問題となる可能性がある。
しかし、裁判等で争うとなれば、多大な時間も費用も掛かり、双方にとっても大きな負担で、合理的ではない場合が多いため、「主として事業者側の対応に問題(契約違反)があったこと」を大前提としたうえで、双方で話し合って、柔軟な解決を図ることが、最も有効な解決方法と考えられる。

■ 結論と今後の防衛策
今回のケースは、事業者の「良かれと思って(あるいは都合で)」の独断が招いた重大な契約違反トラブルです。
【ユーザー側】
「言った・言わない」のトラブルを防ぐため、今回のように「部品名や仕様を詳細に記した契約書(複写)」を残しておくことが最大の防衛策になります。これがなければ、泣き寝入りになっていた可能性もあります。
【事業者側】
プロ目線で「こっちの部品の方が安い、性能が同じ」と思ったとしても、契約後に仕様を変更する場合は、必ず作業前にユーザーの了承を得ること。勝手な変更は法的にもアウト(契約違反)になるという認識を強く持つ必要があります。

「こんなはずじゃなかった…!」
本連載では、整備工場とユーザーの自動車にまつわるリアルなトラブル事例を紹介しています。事業者・ユーザー双方の視点に加え、プロの見解や弁護士の法的アドバイスをもとに、原因と対策をわかりやすく解説します。
事業者にとっては「明日は我が身」の防衛マニュアルとして、ユーザーにとっては「安心・安全なカーライフ」のための知恵袋として、ぜひ今後の参考にしてください。