新時代整備工場のプラスワン・ビジネス コーティング事例・メカニック銚洋 MSR2026年7月号特集④

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武井 宏樹
新時代整備工場のプラスワン・ビジネス コーティング事例・メカニック銚洋 MSR2026年7月号特集④
同店外観

千葉県東金市の九十九里浜もほど近い場所に山武市本店のサテライト店として設立したメカニック銚洋 東金店(千葉県東金市)。地域に競合が多い中、同店はコーティングによる「ボトルキープ戦略」で価格競争を脱却。

高頻度な来店で顧客との信頼を築き、整備から車両代替まで請負うモデルを確立した。義務だった来店を楽しみへと変える、同店の攻めの接客を追う。

統括部長 東金店 店長 高山 俊一 氏 (右)
メカニック銚洋 東金店 技術者 久 成文 氏

車の長寿命化が進む中、カーオーナーにとってボデーコーティングは今や定番のケアだ。大規模な設備投資も少なく、整備工場でも導入しやすいサービスだが、新車販売時に顧客を囲い込めるディーラーや、専門施工店との競合は避けられない。

顧客との接点機会が車検やシーズンごとのタイヤ交換などに限られがちな整備工場にとって、定期的な来店機会を生み、客単価を引き上げるコーティングはぜひ成功させたいサービスメニューの1つだ。

そこで独自の“ボトルキープサービス”でコーティングを軸にした継続的な顧客獲得に成功。大きな事業基盤を築き上げたメカニック銚洋 東金店の事例にそのヒントを探る。

同店は千葉県山武市にある本店のサテライト店舗として2002年にオープン。当時は軽補修を中心にした鈑金塗装部門の粗利が全体の7割ほどを占めていたというが、「月によって売り上げに大きな波があるのが当時からの悩みだった。繁忙期は手一杯になる一方、閑散期は大きく落ち込んでしまう」(高山俊一店長)。

同店のある東金市は、人口5万人超。近くには国道126号線が通り交通量が多い車社会で鈑金塗装の需要自体は大きいものの、その分他店舗との競争が熾烈だ。散発的な入庫機会はあれど、その後に自社の固定客にはなりにくい。

そうして収益はあるが、売上高が安定しない状況が10年ほど続いた時、高山店長は経営判断を迫られた。エイミング機器やアライメントテスターなどに設備投資し、高度な整備に特化する道もあったが「自分を含め、スタッフは大規模工場に比べて当時から小人数、今でも5人だ。設備投資に伴うコストや業務負担の増加を鑑みて、現実的ではない。価格以外の差別化が急務だった」。

同店が選択したのは顧客管理、そして接点構築という、地道な方法だった。

コーティング剤専用リザーブスペース。50本以上の名前入りボトルが立ち並ぶ

ディーラーが展開するメンテナンスパックには含まれていないサービスはないか。同社はそこを狙い目としてコーティング剤のボトルキープサービスを独自に開始した。「まずは、やらないことを決めていった」という高山店長。高度な修理、コストの高い広告宣伝をしない。

今ある技術、設備、人数で、顧客のためにできることを見定めていった結果、同店はコーティングと洗車にたどり着いたという。「これらのサービスの利点は多い。施工しやすい製品を選べばスタッフの作業負担を抑えてメニューに加えられる。顧客に手ごろな価格で訴求できる上、車検よりも短いスパンで接点機会が得られる」。

店舗入り口の専用リザーブスペースには50本以上の顧客の名前が書かれたボトルが並ぶ。1回当たりの施工工賃にもボトルキープあり/なしで差を付け、キープありでダイハツ・ムーブなど小サイズなら3,000円とガソリンスタンドなどにも対抗できる価格帯に設定した。

「車種にもよるが1本当たり、およそ5~6回施工できる。ボトルキープすることで、顧客は手ぶらで気軽に来店できる。そしてその分、ヒアリングの機会が生。「車種にもよるが1本当たり、およそ5~6回施工できる。ボトルキープすることで、顧客は手ぶらで気軽に来店できる。そしてその分、ヒアリングの機会が生まれる」。

さらに同社は顧客管理ソフトを導入し、来店時のやり取りを詳細に蓄積。エンジンオイルのキープサービスもセットで取り組み、接点機会を逃さない。細かい聞き取りができることで、従来の鈑金塗装
と整備に加え、車販にカーリース、保険、車検と自社の各種サービスにつなげていった。

「我々のコーティングは、将来の信頼関係を育むための入り口であり、重要な投資だ」。

実際に、2018年まで車販に次いで大きな売り上げを占めていた鈑金塗装の売上高・粗利構成比がそれぞれ19%・35%だったが、2025年には10%・23%に縮小。だが接点機会の上昇によりセールスにつながった車販の収益増を中心に、2018年から総売上高は約58.0%、総粗利は約21.5%も上昇した。

コーティング前の下処理は久氏が担当
理念を共有した元顧客のアルバイトスタッフが丁寧に施工する

コーティングを入り口とした好循環はさらに奥行きを見せる。同店が提供するリースプランで新車を購入すれば店頭決済の必要がなくなり、コーティングや洗車はもちろん、車検からリモコン電池の交換
に至るまでシームレスな接客が可能。顧客満足度の向上と、現場の業務効率化を同時に実現した。

そして現在、同店は固定客からの紹介で新たな顧客を呼ぶ、紹介の連鎖を構築している。紹介特典クーポンをフックに、既存客の推奨を経て来店する新規客は、当初から店への信頼が厚い。。ミスマッチが防げるため商談は円滑に進み、結果として職務満足度向上にも寄与している。

同店のフロントは高山店長と久成文氏の2 人が担当。取材中も両氏は接客に当たり、気軽な放談から車検相談、新車の乗り換え提案へつなげ、顧客らとの深い信頼関係が垣間見えた。「実はアルバイトスタッフも、元顧客から採用している。メンテナンスへの理解度も高く、安心して業務を任せられる」。

新規顧客の受け付け時、修理難易度の高い輸入車や、鈑金塗装ではボデー修正装置が必要なレベルの損傷は山武市の本店に集約するという。「忙しいという理由からではなく、我々が提供する価値に責任を持つためだ」と高山店長。人的負担を下げ提供するサービスの質を高め、顧客満足につなげている。

そして軽補修チェーン店でのマイスター資格を持つ同店の鈑金塗装技術者・久氏も高山店長と志を同じくする。「この工場に、そしてあなたに任せたいと顧客に思ってもらえるかが肝心だ。技術力だけでは顧客満足には決してたどり着けない」と久氏は話す。

顧客に他店と比べられることがない、替えが利かない存在になることが生き残る鍵だと高山店長は戦略の意図を語る。「急速な成長ではなく、木の年輪のように徐々に幹を太くする経営が理想だ」。同店は顧客との関係性を密にし、信頼という資産を積み上げている。

→特集⑤に続く