ADAS車整備なんて怖くない! 第8回 なぜ最初に診断をかけるのか ―診断結果は故障原因ではなく情報整理の材料 ―

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MSRweb編集部
ADAS車整備なんて怖くない! 第8回 なぜ最初に診断をかけるのか ―診断結果は故障原因ではなく情報整理の材料 ―

診断をかけた瞬間、画面いっぱいにDTCが並ぶ。そんな経験はないでしょうか。

①カメラ関連  ②レーダー関連 ③EPS関連 ④通信異常

若手整備士が「どこから見ればいいんですか?」と戸惑う。一方で熟練者は、それほど慌てません。なぜなら、DTCの数を見ているのではなく、DTC同士の関係を見ているからです。

第6回では、顧客へ修理の見通しを伝えるための「見立て(技術トリアージ)」について説明しました。また第7回では、その見立てに必要な情報を集めるために、問診や現車確認が重要であることを説明しました。

しかし、情報を集めただけでは見立てはできません。集めた情報を整理し、車両の状態を理解する必要があります。では、なぜその後に診断をかけるのでしょうか。診断をかける目的は、故障原因を特定することではありません。

①問診で得た情報
②現車確認で得た情報
③診断結果

これらの情報を整理し、車両の状態を理解するためです(図1)。

図1 診断をかける目的は「答え探し」ではなく「情報整理」

診断結果は、問診や現車確認で得た情報に置き換わるものではありません。新たな情報を追加し、車両の状態をより正確に理解するための材料なのです。

刑事ドラマでは、目撃証言や防犯カメラ映像、通話記録などの情報が集まると、捜査本部のホワイトボードに整理されます(図2)。情報が集まった瞬間に犯人が分かるわけではありません。

図2 熟練者は「犯人探し」ではなく「情報整理」をしている

まず行うのは情報整理です。「どの情報が重要なのか ?」、「どの情報同士が関係しているのか ?」、「次に何を調べるべきなのか ?」。刑事は集まった証拠をすべて同じ重みで扱うわけではありません。事件に直接つながる情報なのか、それとも結果として現れた情報なのかを整理しながら捜査方針を決めていきます。

整備士も同じです。診断結果は答えではありません。点検方針を決めるための材料なのです。

ADAS車では、多数のECUが通信しながら協調制御を行っています。そのため、1つの異常が複数のDTCとして現れることがあります。たとえば、前方カメラ、レーダー、EPSに関するDTCが同時に記録されることも珍しくありません。この時、若手整備士は、「3ヵ所故障しているのではないか」と考えがちです。

しかし熟練者は、「なぜ同時に出ているのだろう」と考えます(図3)。

図3 熟練者は情報の流れを遡って原因を探している
複数のDTCが出ていても、本当の原因は上流側にあることが多い

電子制御システムでは、原因となる異常の影響が複数のECUへ波及することがあります。そのため、診断結果として表示されるDTCの多くは、その影響として記録された結果である場合があります。

本当の原因は、情報の上流側にある別の場所に存在していることも少なくありません。熟練者は、情報の流れを上流へ遡りながら、どこで最初の異常が発生したのかを考えています。

たとえば、カメラ系統の異常が原因でレーダーやEPSに関連するDTCが記録されているのであれば、まず確認すべきはカメラ系統です。原因となる異常が解消されれば、結果として現れていたDTCは自動的に消えることも少なくありません。

熟練者はDTCを追いかけているのではありません。DTCが生まれた理由を追いかけているのです。だから熟練者は、診断結果だけを見るのではなく、問診や現車確認で得られた情報も合わせて整理しているのです。

診断をかける目的は、故障原因を特定することではありません。受け付けや現車確認、診断結果などの情報を整理
し、その情報がどのようにつながっているのかを理解することです。

そして熟練者は、その流れを上流へ遡るこで、本当の原因を探しています。情報整理の質が高いほど、無駄な点検や手戻りは減り、顧客へより早く正確な見通しを伝えることができます。

次回は、その整理された情報を基に、修理の難易度をどのように見極めるのかについて考えてみたいと思います。

(筆者プロフィール)
佐野和昭
東北大学 工学部卒業後、トヨタ自動車へ入社。アフターサービス部門に配属され、品質管理からサービス企画・改善、部品のマーケティングまで幅広い分野を担当。その後、自研センターの取締役に就任。新しいアルミ修理技法などの修理技術開発を担当し、機械・工具メーカーなどと意見を交わした。現在は、車体整備をはじめとした整備関連業界において複数社の顧問を務めると同時に、セミナー講師やコンサルタントとしても活躍中。

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