顧客に選ばれるために! 価値で再定義する整備工場 第8回 情緒価値の向上(2)苦情発生時の顧客対応

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MSRweb編集部
顧客に選ばれるために! 価値で再定義する整備工場 第8回 情緒価値の向上(2)苦情発生時の顧客対応

フロントスタッフとして働いていたころ、苦情対応で、とても印象深い出来事がありました。ある日、A様の娘さんが乗られているクルマが、高速道路でエンストを起こしてしまいました。

顧客に選ばれるために! 価値で再定義する整備工場 第8回 情緒価値の向上(2)苦情発生時の顧客対応

A様から営業スタッフに連絡が入り、その電話を私が引き継ぎました。新車納車後、間もないクルマのトラブルで、当然、A様から大変な叱責を受けました。長い時間お話をした後、私にできる2つのことをA様と約束しました。

原因を見つけ、安心して乗っていただける状態に戻すこと。修理が完了するまで、毎日状況をご報告すること。その日から、毎日夕方5時に電話をする日々が始まりました。

現象の再現ができず、故障診断が進みません。それでも、毎日、電話口で頭を下げ、その日に実施した点検内容と、原因が見つからなかったことをお話ししました。

やがて10日が経過したころ、A様との会話に変化が生じます。それまでは、私が話を始めるまで無言だったA様が、「で、今日はどうだったの?」と聞いてくださるようになったのです。口調も少しずつ柔らかくなりました。そして原因を見つけ、ご報告できた時には、電話の向こうで少し納得いただけたように感じました。

しかし、新車からまだ間もない時点での大きな故障です。A様は本社のお客様相談室に連絡され、新車の買い替えをご希望されました。その時、納車前に私が点検することを条件とされました。そして「田中さんが大丈夫と言ってくれたら、安心して乗れる」とまで言っていただきました。

もちろん、私が点検しても、故障が発生しない保証は何もありません。それでも、苦情発生から修理に至るまでの対応を少し認めていただけたのだと感じました。

苦情が発生した時、その場から逃げ出したくなります。でも、逃げるほど、顧客の不安や不満は大きくなります。逃げても、逃げても、自分の心の中から顧客の影は消えません。

私たちがすべきことは、顧客の話をしっかりと聞き(傾聴)、不安や不満を受け止め(共感)、コミュニケーションを積み重ねる(共有)ことです。顧客の不安や不満に寄り添い、小さな約束を守り続けることが、整備事業に欠かせない顧客対応力であり、情緒価値提供のひとつではないでしょうか。

(筆者プロフィール)
田中伸朗 株式会社ナルネットコミュニケーションズ
自動車ディーラーで整備士・フロント業務を経験。その後、整備士教育や現場改善研修を中心に活動。2021年にナルネットコミュニケーションズに参画し、Webメディア「モビノワ」を立ち上げ。整備工場への情報提供や補助金支援を通じて整備業界の活性化に取り組んでいる。

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