エイニーズガレージ 代表取締役 藤本明治 氏
2019年にエイミングツールの開発・販売を起点として始動し、2022年に正式な組織として立ち上がったエイチフェイス。
現在、北海道から沖縄まで約400社の会員を擁するこのグループが、整備業界に対してどのような問題意識を持ち、何を変えようとしているのか。エイチフェイスの主宰者であるエイニーズガレージ・藤本明治社長に、組織の理念から「ADAS SEARCH」プログラムの開発、業界の未来像まで、率直に語った。
エイチフェイスは技術や情報を共有し、ともに学ぶ技術者集団
――エイチフェイスとはどのような組織か
エイチフェイスは、自動車整備・車体整備に携わる事業者がこれからの電子制御化された自動車に対応していくために、技術や情報を共有し、ともに学ぶことを目的として活動している組織。私たちが根本に置いているのは、「正しい知識と技術を持った整備事業者が、正当に評価され、適正な利益を得られる業界にしたい」という信念である。
最初はエイミングツールのユーザー向けサポートがきっかけだった。会員数が増えてくるにつれ、自然と組織としての形が生まれた。月額会費も入会金も一切取らない形にこだわったのは、名称や組織が先に立つのではなく、実質的な活動が先にあるべきだと思っていたからだ。
強みは、自社でも実際に現場作業をしながら研究・解析しているところにある。その知見を会員に情報共有できるし、収益を確実に上げる方法まで伝えることができる。実際、エイミング事業を新たに立ち上げて新工場を建てた会員は、すでに4〜5社に上る。
――近年の活動状況を教えてほしい
座学だけで終わらせないことが、私たちの勉強会の特徴だ。ADAS、電子制御整備、エイミング、高度故障診断を題材に、実車を使ったスクーリングも継続して行っている。その上で今、力を入れているのが「ADAS SEARCH」プログラムの開発だ。車種・年式・作業内容を選ぶだけで、必要となるセンサーのエイミングや点検・初期化作業が一目瞭然になる仕組みで、9月1日のスタートを予定している。
カーメーカーの整備解説書を読める人だけが対応できる仕組みではなく、事務担当者でも「何を確認すれば良いか」がすぐ分かる環境を作ろうとしている。自社のオリジナルマニュアルとも連携し、会員外でもサブスクで利用できる形にする予定だ。現場目線での注意事項が盛り込まれている点が、他の大手サービスとは密度が違うと自負している。
プロフェッショナルだけが手を取り合い、生き残っていく世界
――これから整備事業者に求められる技術・知識とは何か?
一番大きいのは、「部品を見る整備」から「システムを見る整備」への転換だろう。バンパーを交換してきれいに塗装して終わり、という時代は終わった。その裏にはミリ波レーダー、前側方レーダー、ソナーセンサー、カメラが装着されており、外装修理からセンサー確認、故障コード確認、エイミング・点検・初期化、正常制御の確認まで、一連の流れが一つの修理となる。
さらには、配線図を読む力、データを読む力、通信を理解する力、センサーの原理を理解する力、メーカー整備情報を調べる力、これらすべてが必要となる。特に重要なのは、「なぜこの作業が必要なのか」を説明できる能力。それができなければ、故障診断は成立しない。
車体整備と電子制御装置整備は、これからますます切り離せなくなる。私自身が鈑金技術者だったからこそ、正しいボデーアライメントがすべての前提であるという確信がある。
――今後の業界はどう変わっていくと考えているか
整備業界は、従来の整備だけを続ける事業者と、電子制御装置やADASまで含めて車両全体を診断できる事業者に二分されていくだろう。ただし、すべての設備を自社で抱える必要はない。地方の中小整備工場にそれを求めるのは非現実的だ。
重要なのは「自社でできる仕事」と「専門業者と連携する仕事」を判断できること、そして真剣に仕事に向き合うプロフェッショナル同士がBtoBでつながる仕組みを作ることだ。適当な業者と真面目な業者が連携することはできない。連携できるのは、互いに真剣にやっている者同士だけだ。
もう一つ重要なのが整備料金の問題。高度な診断やエイミングを行っているにもかかわらず、その技術料を充分に請求できていないケースが多い。技術を身に付けることと、その技術を正しく料金化すること、この2つを同時に進めなければ、業界は弱くなる一方だろう。
自動車整備が高度化するほど技術を持つ整備事業者が正しく評価される
――エイチフェイスは今後、何に注力していくのか?
大きく3つ考えている。1つ目は教育の標準化だ。誰が教わっても同じ結果になる仕組みを作りたい。2つ目が「ADAS SEARCH」プログラムに代表される、技術情報へのアクセスの簡易化だ。現場の整備士が短時間で判断できる環境を整えていく。最後の3つ目が、技術を仕事につなげる仕組みづくりである。学んで終わりでは意味がない。BtoBの案件として実際の収益につながるところまで支援することが重要だと考えている。
将来的には、一定の技術基準をクリアした事業者を認定する仕組みまで発展させたい。整備業界だけでなく、ユーザーや保険会社からも「この会社なら任せられる」と信頼される基準を作ることを目標に掲げている。まずブランディングがあって、その先に認定制度がある。
――整備事業者に向けてメッセージを
今の変化を「大変な時代になった」とだけ捉える必要はない。むしろ中小の整備事業者にとって大きなチャンスだと思っている。自動車整備が難しくなればなるほど、きちんと診断できる人、きちんと説明できる人、きちんと直せる人の価値はそのぶん上がる。ただし、診断機を持っていることと診断ができることは違う。小さくてもいいので実際に触り、調べ、失敗し、自分たちの技術として積み重ねることが大切だ。そして1社ですべてを抱え込む必要はない。分からないことを聞ける仲間、仕事をお願いできる仲間、自分の得意な仕事を頼んでもらえる仲間とのつながりを作ることも、設備投資と同じくらい重要となっていくだろう。
エイチフェイスは単に情報を提供する団体ではなく、学べる場所、相談できる場所、仕事につながる場所にしていきたい。技術を持つ整備事業者が正当に評価され、利益を残し、次の世代が「自動車整備士になりたい」と思える業界にする。そのために、現場から一つずつ仕組みを作っていく。
エイチフェイス
エイニーズガレージが2019年にエイミングツールの開発・販売を起点として立ち上げたグループ。2022年に正式な組織化。
エイチフェイスは、優れた知恵などを意味する【叡智】と、信頼・信用などを意味する【FAITH(フェイス)】から作られた造語。
