イプラ 代表取締役 小田泰平 氏
黄色いタイツ姿の「タイツ社長」として知られる異色の経営者である小田泰平社長(イプラ、本社=愛媛県松山市)。小田社長が経営するイプラでは、自動車販売店や整備・鈑金塗装工場向けに売り場改善支援や集客支援システム「エアプラ」を提供している。
人口減少や若者の車離れ、DXの遅れなど、多くの課題を抱える自動車業界において、同社のユニークな取り組みと着実な成果が注目を集めている。業界の現状と未来を見据えた独自の戦略について、小田社長に話を聞いた。
心理学と「3つの視点」で挑む独自の売り場改善
――事業の根幹である「売り場改善支援」に至った経緯と、具体的な手法について教えてほしい
もともと私はIT業界におり、自動車業界に関してはまったくの素人だった。2004年に家業を継ぐ形で業界に入ったが、そこには4,000万円もの負債があった。営業に回っても、旧態依然とした業界の経営者たちにIT業界から来た若者の正論は聞き入れてもらえない。そこで、大学で学んだ心理学を応用し、「正論だけでは人は動かない」と考えた。相手の懐に入るため、あえて少し“おバカ”なキャラクターを演出しようと、2008年頃から「タイツ社長」として活動を始めたのが原点だ。
具体的な売り場改善については、「遠視・中視・近視」という理論に基づき提案を行っている。遠くからでも目立つ外観(遠視)、店舗の近くで視認できるポップやプライスボード(中視)、そしてショールーム内の清潔さ(近視)という3つの視点で、顧客にとって分かりやすく魅力的な売り場を構築する。
重要なのは、大手の戦略を安易に模倣しないことだ。たとえば、強者である大手企業がのぼりを立てていないからといって、地域の中小企業がそれを真似ても意味がない。CMや巨大な看板がなく認知度の低い中小企業は、のぼりやポップといった古典的な販促手法を徹底すべきだ。YouTubeで視聴回数を稼ぐよりも、自社の商圏エリアにチラシを撒く方が効果的な場合も多い。
縮小市場を生き抜くための「現代の大福帳」
――整備・鈑金塗装業界の現状と、下請け脱却に向けた戦略をどう捉えているか
多くの経営者が「売り場をきれいにしても経営には関係ない」と思い込んでいるが、自動車業界は間違いなく縮小市場だ。自分の代で事業を終えるなら今のままでも良いかもしれないが、5年後、10年後を見据えるなら、今売っている商品や売り場の改善は必須となる。
特にディーラーの下請けに依存する体質から脱却し、自社で顧客を獲得していく「直需客」を増やす努力が不可欠だ。そのためには、顧客との信頼関係と顧客リストの数が何よりも重要になる。
――顧客接点を増やす「エアプラタッチ」や、口コミを生成する新サービス「ほめタッチ」はどのような役割を果たすのか
整備士や鈑金塗装技術者は、セールストークが苦手な人が多い。そうしたスタッフでも、来店客との接点を増やせるのがエアプラのサービスの一つである「エアプラタッチ」だ。NFCタグが内蔵されており、スマホをかざすだけでLINEの友達登録ページや自社のWebサイトなどに誘導できるため、カメラ操作に不慣れな年配のお客様からも好評で、登録数が飛躍的に伸びた事例もある。
江戸時代の商人が火事から守ったという顧客台帳「大福帳」のように、顧客リストはいつの時代も商売の生命線だ。エアプラタッチは、いわば現代の大福帳を効率的に作成するためのツールと言える。
また、新サービスの「ほめタッチ」は、NFCタグによってアンケートへ誘導し、その回答内容を基にAIがGoogleマップ用の口コミ文章を自動生成する仕組みだ。客は文章を考える手間なく、コピー&ペーストするだけで口コミを投稿できる。
私たちはツールを販売するだけでなく、その使い方から効果測定まで伴走する。ツールを導入しても結果が出なければ意味がない。加盟店の経営にポジティブな結果をもたらすことこそが私たちのゴールである。
本気の経営者と共に業界の未来を創る
――最後に、業界の経営者へメッセージを
私たちは「お願い」ビジネスをしているわけではない。共に業界を良くしていこうという本気の人たちと、本気の世界を作りたい。前述の通り、自分の代で事業を閉めるのであれば、何も変える必要はないだろう。しかし、5年後、10年後の会社の成長を望むのであれば、今すぐ経営改革に着手すべきだ。
私たちは、そのためのノウハウとツールを提供し、業界全体の地位向上と待遇改善の一翼を担っていきたいと考えている。
イプラ(本社=愛媛県松山市)
自動車販売店や中古車展示場向けに、販促品や集客支援のクラウドサービスなどを提供。
小田社長は、大手企業への寄稿や、業界団体からの依頼講演を行うなど、ノウハウの提供という角度からも業界改善に注力している。
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