新車販売時のオプションやサービスステーション(SS)での大手系列看板などにより、カーコーティングが一般に広く普及して久しい今日。
コーティングをはじめとした自動車美装ビジネス「カーディテーリング」は、販売・整備・修理といった隣接事業者にとっても近い存在であり、事業多角化の観点から関心を寄せる事業者も多いのではないでしょうか。
ただ現実には、隣の芝生が青く見えるように「高収益そう」、「華やか」と手を出しつつも、継続できずに撤退した、といった話もよく耳にします。最近でも、「新世代のセラミックコーティング!」や「高単価のペイントプロテクションフィルム(PPF)!」など、つい「儲かるのかな?」と思える情報が巷には溢れています。
もちろん、現業で収益を上げている事業者がいる以上、「儲かるやり方がある」のは確かです。しかし、資材サプライヤーが掲げる程に「簡単に儲かる」かは別の話です。実際に整備事業を営む・従事する方にとって、ディテーリング業は商機になりえるのか。一体どこに商機があるのか――。
本連載では、昨今の業界動向を踏まえ、施工技術などのテクニカルな情報ではなく、市場環境や収益性といったビジネスの観点からディテーリング業の可能性を示していきたいと思います。
ディテーリングの対象は”自動車美装に関わるサービス全般”
ディテーリング業は、総務省の日本標準分類で明確に区分されておらず、その定義は曖昧です。「ディテール=細部」という言葉の通り、狭義では「内外装を隅々までキレイにする」洗浄と、それに伴うコーティングを指す場合があります。
そこで本連載では、プロトリオスの定義とビジネスの実情に基づき、以下のフィルム施工なども含めた「原則無資格で営める美装に関わるサービス全般」をディテーリングとして定義し、お話しします。特に昨今は、1つのサービスだけで持続可能な収益性を築くことは難しくなっており、以前にも増して複合的なサービス体系のニーズが高まってきています。
主なディテーリングサービス
■コーティング:メインサービス
長年ディテーリング業の本丸であり続けるメインサービスです。近年は「セラミックコーティング」というワードが広まり、独自のブランディングやSNS集客と相まって高単価事業として確立させているショップもあります。一方で業界全体としては、依然として「ディーラーからの請負業務」が大半を占めています。地域によっては低単価での施工も珍しくなく、コーティングで高収益を実現するには相応の投資と戦略が求められるようになってきています。
■ペイントプロテクションフィルム(PPF)/ラッピング:成長著しい新分野
外装に貼り付けるフィルムの施工サービスです。主に透明で塗装保護を図るPPFと、カラーで装飾を図るラッピングに分けられます。中でも近年、PPFの市場成長は著しく、中国など一部の海外ではコーティングに代わるボディケアの主流になりつつあります。国内でも、高級車をメイン層とした高単価サービスとして広まりつつあり、2025年頃からは低価格を売りにした施工事業者も散見され始めました。
■カーフィルム:EV普及が需要を後押し
窓の内側に貼るウィンドウフィルムです。目隠し(プライバシー保護)や太陽熱・紫外線のカット、ガラスの飛散防止などを図ります。近年は遮熱機能を強く打ち出す傾向があり、空調効率が電費に直結し、かつ窓面積も大きいEV(電気自動車)の普及が需要を後押ししています。ただ、純正ガラス自体の高性能化も進んでおり、90年代のプライバシーガラス普及以降は低単価な施工相場が続いています。
そのため、単独事業としての展開は、成長性や収益性の面で厳しい側面もあります。なお、フロント3面(フロントガラス、運転席、助手席)には道路運送車両法による規定があり、現在、業界団体が規制緩和に向けて働きかけています。施工事業者に限らず、点検・車検に関わる事業者においては、規定や運用の最新情報を常にアップデートしておきたいところです。
■その他関連サービス
ルームクリーニング/ヘッドライトリペア/デントリペア/ウィンドウリペアなど。

統計がない小規模市場を経験則で読み解く
ディテーリング業は、整備業などのような公的な名称独占資格に基づいた職業ではありません。また、組合等を通じた白書のような統計データも極めて不充分なサービス領域です。そのため、市場規模を推し量る定量情報(事業者数や売上、その推移など)が不足しています。逆に言えば、それだけニッチで小規模な市場でもあります。
弊社は、ディテーリング施工業を営んで30年を迎える中、2019年に事業者専用の資材販売サイトを発足しました。現在は「施工現場(カーオーナー)」と「施工従事者」の双方と取引し、継続的にそのニーズや課題に触れています。本連載では、ECサイトでの販売動向・商品動向や、寄せられる問い合わせといった定性的な情報をベースに、ディテーリングビジネスの実態を紐解いていきます。
次回は、ディテーリング業の本丸である「コーティング」について、昨今の動向と商機を探ります。

(筆者プロフィール)
長南 明 株式会社CARDE(カーデ)
1994年の創業以来、コーティングやカーフィルムを中心としたディテーリング施工ショップを経営。2019年に事業者専用の資材販売サイト「CARDE」を立ち上げ、事業者向けのノウハウやカーオーナー向けの業界情報などを積極的に発信している。
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