国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課 課長 平澤崇裕氏
車検の基準から整備士の資格、工場の認可まで、業界のルールを定めて安全を支えるなど、自動車整備業界を所管する国土交通省。
本年7月31日付けで国交省 物流・自動車局 自動車整備課長に平澤崇裕(たかひろ)氏が就任。2年ぶりの国交省復帰、入省時の整備課復帰に際して、今後にかける想いを聞いた。
就任の背景と、全国的な整備ネットワーク維持に向けた施策
――1995年の運輸省(当時)入省時も自動車整備課だったと聞くが
その通り、整備課だった。前職は環境省に2年間出向しており、モビリティ環境対策として電動車の導入支援など、自動車関係の仕事を担当していた。
――改めて自動車整備課に戻られ、認証工場数の推移に対する認識や整備工場の空白地帯、いわゆる「整備難民」発生危惧についてどうお考えか
整備工場数は、近年微増傾向だったが、4年ぶりに減少に転じた。おおよそ9万工場程度という状況だと認識している。整備工場は、安全安心な車社会を支えるのに必要不可欠な存在であり、地方も含めて全国的なネットワークを維持することが、非常に重要な課題だと考えている。
――その全国的なネットワークを維持するための具体的な取り組みや方針は?
自動車整備業が直面している高度化、人材確保、生産性向上といった課題の解決に向けた施策の中で、しっかり取り組んでいくことが必須だと認識している。
具体的には、事業者間の連携支援や、出張で整備ができる「訪問特定整備」のような制度づくり、あるいは省力化設備機器の導入など一定の要件を満たす大型指定工場における規制の見直し、自動車整備士の資格を取得するための実務経験期間の見直しといったことが挙げられる。
自動車ユーザーや整備を取り巻く関係者と、こうした課題について共通認識をしっかりと構築し、取り組みを進めてまいりたい。
深刻な人材不足への対応と、高度化技術に向けた教育支援
――人材不足についての認識と、解消に向けた施策について
人材不足は有効求人倍率は5倍を超えており、本当に深刻だととらえている。
これまでも整備士が働きやすく、働きがいのある職場づくりのためのガイドラインを策定し、経営者向けのセミナーの開催や仕事の魅力を伝えるポスター・パンフレットの作成、自動車整備士体験ブースの出展、インターンシップや社会科見学の実施といった取り組みを行ってきた。引き続き、魅力的な職場づくりを進めていく必要があると考えている。
また、外国人の活用も一つの方法だ。来年4月から「育成就労制度」が始まるので、本年5月には外国人を受け入れる整備工場や監理支援機関の要件を定めた告示を策定し、協議会も立ち上げた。関係各位の意見を採り入れながら、こうした取り組みもしっかり進めてまいりたい。
――自動車が進化していく中で、整備士に求められる技能や知識も高度化・多様化していくと考えられる。整備士の教育体制の現状についての認識と、高度化に対応するための支援策は?
自動ブレーキが新車の99%以上に搭載されるなど、技術の進化は非常に進んでいる。それに伴い、整備士の方々にも新しい知識と技能を習得していただくことが大変重要だ。2022年5月には整備士の資格制度を改正し、各資格において電子制御装置に関する知識・技能を求めることを強化した。
また、現役の自動車整備士に対しては、毎年の研修で新技術に関する教育を行っている。さらに、地域の整備事業者が連携して実施する新技術に関する勉強会を支援するといった取り組みも行っている。こうした取り組みを通じて、整備士の新技術への対応をしっかりと支援してまいりたい。
――事業者間で自主的に行われるような、高度化対応の勉強会も推進していきたいという考えか
まさにおっしゃる通り。来年度についても概算要求をしているが、地域の整備事業者が連携して実施するような取り組みについて、しっかりと予算を確保して支援に努めたい。
新技術(OBD検査・スキャンツール)への対応と、現場課題への取り組み
――OBD検査が始まったが、現在の運用状況や今後の課題についての認識を聞かせてほしい
自動ブレーキなどの先進技術が的確に作動するために、2024年10月からOBD検査が始まっている。足元では約130万台の検査を実施しており、整備事業者をはじめ、関係各位の入念な準備のおかげで、大きなトラブルもなく運用されていると承知している。
対象車両は現在約690万台で、今後ますます増えていく。認証工場の皆様が検査場に持ち込む前に実施する「OBD確認」の実施率は、足元で1割弱と推計している。OBD確認を実施済みの車両は、検査場でのOBD検査を原則省略できるメリットもあるので、協力を賜りたいと考えている。
――汎用スキャンツールの高度化に向けて検討されている新スキームの進捗状況や今後の計画について教えてほしい
汎用スキャンツールは純正ツールと比べると機能が限定されており、作業内容によっては充分に対応できない場合がある。そのため、汎用スキャンツールの機能向上に向け、スキャンツールの開発情報を自動車メーカーからツールメーカーへ提供できる新しいスキームの立ち上げを進めており、7月24日に関係告示を公布した。
また、自社で保有する汎用スキャンツールでは対応できない作業について、純正スキャンツール等を保有する事業者へ外注する仕組みのトライアルを、一部地域で2026年9月中に開始できればと考え、進めている。こうした高度化への対応を、しっかりと進めてまいりたい。
――中東情勢の影響について、整備業界への影響をどのように認識しているか
情報提供窓口を設置しており、随時受け付けをしている。件数自体は設置当初の4月上旬と比較すると減少してきているが、だからといって安心するわけではない。
引き続き現場の状況を適切に把握しながら、供給の偏りや流通の目詰まり解消に向けた取り組みを全力で進めてまいりたい。部品の調達に苦労されている事業者の声に、丁寧に対応していく。
過去にはエンジンオイルやシンナーの供給不足があったと聞いているが、タスクフォースへの報告によると、直近一週間で供給要請があったのはエンジンオイルだった。
――整備工場に向けてメッセージを
整備工場は、日ごろから自動車を適切に点検・整備することで、安全安心な車社会を支えていると考えており、大変感謝している。自動車整備業界は、技術の高度化や生産性向上といった課題に直面していると承知している。
行政としても、課題解決にしっかりと取り組んでいきたいと思っているので、引き続き協力をお願いしたい。

平澤 崇裕 自動車整備課長
東京大学工学部卒。1995年、運輸省(当時)に入省。自動車整備課を皮切りに、2014年関東運輸局自動車技術安全部長を経て2020年4月まで国土交通省、その後、環境省、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、再び国土交通省、2024年7月から環境省水・大気環境局モビリティ環境対策課長と各省庁を歴任し、2026年7月、国土交通省物流・自動車局自動車整備課長に就任した。